APA制度について③

税務

Tokyo Consulting Firm Private Limited

ムンバイ駐在員

谷川 千裕(たにがわ ちひろ)

TEL: +91 7678007312 / E-MAIL: tanigawa.chihiro@tokyoconsultinggroup.com

 

皆様 こんにちは

インドムンバイ駐在員の谷川です。

ムンバイは段々暑さを増してきました。。皆さん夏バテにはご注意ください。

さて、今週もお客様から寄せられたご質問にお答えしていきます。

 

Q: インドでのAPA制度について、簡単に手続きのステップを教えてください。

 

A: APA申請の手続きは以下です。

 

①事前相談(Pre-filing Consultation

 - APAの申請には事前相談が必要です。事前相談にはDGIT(Director General of Income Tax, International Taxation: 所得税国際課税局)へ申請書(Form 3CED)を提出し、主に申請するAPAの対象範囲、移転価格に対する論点、及び対象取引の適合性等が確認され、諸条件について議論されます。なお、匿名での事前相談も認められています。事前相談後、APAを開始するかどうかについては、納税者が自由に取り決める事が出来ます。

 

②APAの申請

 - 事前相談後、APA申請を行う場合はForm 3CEBを一定の期間に提出します。ユニラテラルの場合はDGIT、バイラテラル又は多国間APAの場合は、インドの権限ある当局(相互協議担当)に申請します。申請者は、基本的事項、対象取引の範囲、APAの種類、バイラテラル又は他国間にしない理由(ユニラテラルで申請する場合)、申請する移転価格算定方法、詳細な機能分析、単体・連結決算書(直前5期分)等の提出を行います。この時、一定の申請料が必要となります。

 

APA申請の取り下げ

 - 申請者はAPAの合意が取れる前であればいつでもAPA申請の取り下げが出来ます。ただし、申請料は還付されません。

 

申請の不備

 - 申請書類や情報に不備があった場合、申請者は申請から1か月以内にその旨の通知を受け取ります。申請者は15日以内に不備を修正するか、15日以内(30日まで延長が可能です。)に修正しない場合は、申請が却下され、申請料は納税者に還付されます。

 

⑤APA申請手続き

 - 申請の受付が完了すると、APAチームが調査を行います。申請者とミーティングを行い、質疑応答・追加資料の提出等が行われます。これが終わるとAPAチームは報告書案を作成し、DGITまたは権限のある当局(相互協議担当)に提出されます。各機関はこれに基づいて合意案を作成し、中央政府の承認を得て、

直接税中央委員会(Central Board of Direct Taxes=以下、“CBDT”)と申請者との間で対象国際取引、移転価格算定方法、独立企業間価格等について合意されます。

 

⑥APA後の順守事項

 - APAの対象期間中、納税者は毎年、年次報告書(Annual Compliance Report=以下、“ACR”)の提出が求められます。ACRは法人所得税申告書の提出期限後30日以内、またはAPA締結後90日以内のいずれか遅い日までが提出期限となります。その後、移転価格調査官(Transfer Pricing Officer)はAPAの合意内容は納税者によって適切に順守されているか監査を行います。監査結果報告書はACR提出日の属する月末から6か月以内にDGITまたは権限のある当局へ提出されます。

 

⑦APAの取り消し

 - 納税番号が年次報告の提出を怠った場合、年次報告の内容に重大な誤りがある場合、移転価格調査官が納税者のAPA合意諸条件の不履行を発見した場合、納税者による不正、事実関係の偽りがあった場合は、CBDTはAPAを取り消す事が可能です。

 

⑧APAの見直し、更新

 - もし、APAに関して重要な前提条件や関連する法律に変更があった場合、またバイラテラルや多国間APAにおいて条約相手国の権限のある当局からの要請が別途ある場合はAPAは見直される可能性があります。APAの対象期間が満了になった場合、納税者は当初と同様の手続きによりAPAの更新を申請する事が出来ます。

 

 

今週は以上となります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

東京コンサルティングファーム

谷川 千裕

 

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