【インド進出企業向け】新労働法における退職金 (Gratuity)制度の変更点と実務対応

法務

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の北岡 光里です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「【インド進出企業向け】新労働法における退職金
(Gratuity)制度の変更点と実務対応」についてお話していこうと思います。

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【【インド進出企業向け】新労働法における退職金
(Gratuity)制度の変更点と実務対応】

1. 要旨
インド政府は、29本の既存中央労働法を4つの労働法典に統合する新労働法典を、2025年11月
21日から有効化した。退職金(Gratuity)は、主に Code on Social Security, 2020 第53条 に規
定され、支払額の決定や支払時期については同法第56条も重要である。同制度は、従来の
Payment of Gratuity Act, 1972 の基本的枠組みを承継しつつ、特に固定期間雇用者、Fixed
Term Employees: FTE、への適用と、統一された wages 定義による算定基礎の見直しの点で実
務上重要な変更をもたらす。

2. 固定期間雇用者(FTE)に関する変更点

最も重要な変更点は、FTEに関する扱いである。第53条は、固定期間雇用契約の満了を退職金
支給事由に含め、FTEについては5年要件を不要とし、pro rata basis、すなわち比例按分で退職
金を支払う旨を定めている。さらに、労働雇用省の雇用主向けハンドブックおよび政府FAQは
、FTEについて、契約開始から1年勤務した場合、契約期間終了時に退職金の対象となると説明
している。したがって、実務上は、1年以上勤務したFTEが固定期間雇用契約の満了を迎える場
合、勤務期間に応じた退職金が発生し得ると整理できる。ただし、契約途中の自己都合退職や
中途解除の場合については、契約内容、終了理由、適用規則を個別に確認する必要がある。

3. インド新労働法での退職金(Gratuity)はどのように計算するのか?

退職金の基本的な算定方法は、従来の枠組みをおおむね維持している。Code on Social
Security, 2020 第53条第2項は、各完了勤務年または6か月超の端数について、最終賃金を基礎
として15日分の賃金を支払うと定めている。月給制従業員の場合、15日分の賃金は、最終月額
賃金を26で割り、15を掛けて算定する。したがって、一般従業員については、実務上、退職金
=最終賃金÷26×15×勤続年数 という式で整理される。ここでいう勤続年数は、各完了勤務年に
加え、6か月を超える端数期間がある場合には1年として扱う。
一方で、FTEおよび死亡した従業員については、同条が pro rata basis で退職金を支払うと定
めている。そのため、これらの場合には、通常の「完了勤務年+6か月超の端数繰り上げ」とい
う計算ではなく、実際の勤務期間に応じた比例按分計算が問題となる。特にFTEについては、
政府解説資料上、1年勤務後の固定期間雇用契約満了時に退職金対象となると説明されており

、5年未満であっても勤務期間に応じた退職金が発生し得る。
退職金額は中央政府が通知する上限額を超えないものとされ、労働雇用省FAQでは、現在の上
限額は20 lakhルピー、すなわち200万ルピーと説明されている。

Q. FTEの退職金はいつから発生しますか?
A. 契約開始から1年勤務した場合に発生し得ます

4. Wages定義の統一による影響

新労働法典では、法定計算に用いる wages の定義が統一された。Wagesには、基本給
、Dearness Allowance、Retaining Allowanceが含まれる。一方、これら以外の手当等が総報酬
の50%を超える場合、その超過部分はwagesに加算される。このため、従来、基本給を低くし
、各種手当を高く設定していた企業では、退職金算定基礎が増加し、退職金、PF、ボーナス等
の法定コストが上昇する可能性がある。
5. 支払時期と企業側の対応
支払手続については、第56条に基づき、退職金は支払義務が発生した日から30日以内に支払う
べきものとされる。退職金は、従業員からの申請の有無にかかわらず、雇用主が支払額を確認
・決定すべき性質の給付であるため、企業側には退職・契約満了・死亡・障害等の発生時に、
支払義務の有無と金額を確認する実務対応が求められる。

6. 結論

新労働法典は、一般従業員の5年要件や基本計算式を大きく変更するものではない。他方で
、FTEについて1年勤務後の契約満了時に比例按分で退職金が発生し得る点、および統一wages
定義と50%ルールにより算定基礎が増加し得る点は、企業実務に大きな影響を与える。インド
で有期雇用・契約雇用を活用する企業は、2025年11月21日以降の雇用終了、契約満了、退職金
引当、報酬構成、雇用契約書・就業規則の内容を再点検する必要がある。

本日は以上になります。
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