皆様、こんにちは、
Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)です。
本日は、インドにおける撤退スキームの比較と留意点についてみていきます。
今回は会社登記抹消(Striking off)、自主清算(Voluntary Winding up)、休眠会社(Dormant Company)の3つの手段を取り上げます。
これ以外にも清算には他の種類があり、株式譲渡等の手法が考えられますが、今回は最も用いられやすい手法である、会社登記抹消と自主清算に加え、休眠会社の留意点についてみていきます。
下記の図が3つの手法の比較になります。
会社登記抹消
(Striking off) |
自主清算
(Voluntary Winding up) |
休眠会社
(Dormant Company) |
|
申請機関 | 会社登記局(Register of Companies) | 会社法審判所(National Company Law Tribunal)
会社登記局(Register of Companies) |
会社登記局(Register of Companies) |
定義 | ・会社登記局から会社登記を抹消させるスキーム | ・株主の判断によって自主的に清算を行うスキーム | ・休眠会社として、将来的に事業を再開する形を維持するスキーム |
留意点・条件 | ・過去2会計年度にわたり、事業活動(Operational Transaction)を行っていない状態であること
・資産・負債を有さず、銀行口座が閉鎖されていること ・係争中の訴訟案件がないこと ・未納の税金や政府機関等に対する債務がないこと |
・債権債務関係を解消する必要があり、準備に時間を要する可能性がある
・債権債務関係を解消するためには、債権者の同意が必要になる ・公式清算人(Official Liquidator)を通して、清算の申し立てを行う必要あり ・係争中の訴訟案件がある場合は、債権者の同意を得られない可能性が高い |
・過去2会計年度にわたり、特段の会計取引(Significant Accounting Transaction)を行っていない会社であること
・休眠期間中も最低限のコンプライアンスが必要(例:法定監査、年次申告等) ・休眠申請前に、原則、債権債務関係を解消する必要あり ・休眠期間は原則5年間(再申請可) |
リードタイム
(申請前) |
2年(事業活動停止期間)+1~2ヵ月 | 約5~9ヶ月(債権債務の関係を解消)
債権債務者との関係に影響を受ける |
2年(事業活動停止期間)+1~2ヵ月 |
リードタイム
(申請後) |
約1年 | 約1年~1年半 | 約1ヶ月 |
メリット | ・条件を満たせば、最も早くかつ簡単に撤退が可能 | ・資本金が株主に返還される | ・将来的に事業を再開する事が可能 |
デメリット | ・資本金が株主に返還されない
・2年間の事業活動停止条件 |
・時間と費用が最も発生する
・債権債務関係の解消に時間を要するケースあり |
・休眠期間中のコンプライアンス面の手続きが必要
・2年間の特段の会計取引停止条件 |
これらが撤退スキームの比較と留意点になります。
数年前まではインドはカンボジアのように一旦進出したら出てくることができない蟻地獄のような市場と揶揄されることもありましたが、2016年に制定されたインド倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)により、撤退手続きが過去と比較すると迅速化されております。
(お客様のサポートを行う立場としては、やはり設立よりもまだまだ時間とお金がかかる印象を持ちますが。)
さらに、注目すべき点は「清算人」の存在です。
インドでは自主清算等の申請を行うには清算人を通さなければならないと言われております。
清算人はインドではかなり尊敬される資格らしく、受験資格として勅許会計士や会社秘書役又は弁護士としての経験が数年必要になる難関資格とされています。
最後に、休眠会社に関しては、会社法上は正しい手続きをとれば、休眠会社化する事が可能ですが、上記の記載の通り一定の各種コンプライアンス保守が必要となり、他国と比較すると、休眠会社化することのメリットが少ないと言えます。
長期的にビジネスを再開する可能性が非常に高いが、この先5~10年はインド事業を停止する場合は選択肢の一つとして考えられますが、実務上はこの手法を用いるケースは少ないのが実態です。
そのため、実際の休眠手続きを取らずにオフィス家賃を削減するために住所をコンサル会社等から借りる等の手段を取られるケースが散々されるという話も耳にします。
今週は以上となります。
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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔
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