
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の松波 優大です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「【2026年最新】インド法人税務調査の不服申立プロセスと対策 |日系企業が知るべき実務の争点」についてお話していこうと思います。
インドに関する基礎知識が知りたい方は、こちらから▼
・インドの基礎知識
インドに関するセミナーに参加したい方は、こちらから▼
・インド関連セミナー
【2026年最新】インド法人税務調査の不服申立プロセスと対策 |日系企業が知るべき実務の争点
東京コンサルティングファーム インド拠点の 松波 雄大 です。
## I. 不服申立の系統と各段階の法的構造
インド所得税の不服申立制度は、CIT(A) → ITAT → High Court → 最高裁という4段階の系統で構成
されています。査定命令の確定から申立まで30日という厳格な期限が設けられており、この期限
を徒過した場合の回復は当局の裁量に委ねられます。
1・確定後30日以内
CIT(A)への申立(Commissioner of Income Tax (Appeals))
確定命令受領後30日以内に申立。前払い要件(admitted tax)および執行停止(stay of
demand)については手続編を参照。Faceless Appeal Scheme(2020年9月25日施行
、Scheme 2021は2021年12月28日改訂)により審理は電子化・匿名化。JCIT(A)(Joint
Commissioner級)が₹25ラック以下の小額案件を担当し、CIT(A)は高額案件に集中して
います。
2・通知月末+2ヶ月以内
ITATへの申立(Income Tax Appellate Tribunal)
Finance (No.2) Act 2024(2024年10月1日施行)により、申立期限は「通知月末日から2
ヶ月以内」に改正されました(旧規定は60日)。§254に基づきITATは事実問題・法律問
題の双方を審理できる唯一の事実審です。課税当局からの申立(Department Appeal)は
§268Aに基づく訴額基準(₹60ラック超)がある点に注意が必要です。
3・ITAT後120日以内
High Courtへの申立
ITAT命令受領後120日以内に申立。法律上の実質的問題(substantial question of law)が
存在する場合に限り受理されます。事実認定はITATが最終審となります。移転価格・PE
認定・GAAR等、法解釈が争点となる事案でHigh Courtまで争われるケースが増加してい
ます。
4・High Court後
最高裁への上訴
High Courtの判決に対してさらに上訴する場合は最高裁(Supreme Court)へ。Special
Leave Petition(SLP)を経る必要があり、受理は裁量的です。High CourtがITAの解釈に
ついて全国的に重要な法律問題と認定した場合に最高裁で決着が図られます。
なお、Income Tax Act, 2025(ITA 2025)は2026年4月1日に施行され、ITA 1961は同日廃止され
ました。ただし、AY 2026-27以前に係るすべての不服申立手続はITA 1961の規定のまま継続され
ます。日系企業が現在対応している案件の大部分はこの移行規定の対象です。
II. CIT(A)への申立の実務
Faceless Appeal Schemeの導入と現行制度
Faceless Appeal Scheme 2020はCBDT通知No.76/2020により2020年9月25日に施行されました。
その後、Video Conferenceによる口頭審理の実体的権利を明確化した改訂版のFaceless Appeal
Scheme 2021が2021年12月28日に施行(CBDT通知No.139/2021)されており、現行制度は
Scheme 2021を基礎としています。申立書・証拠書類・主張書面はすべてITBAポータルを通じて
提出し、担当CIT(A)は納税者に開示されません。書面の自己完結性が審理の勝敗を左右します。
Scheme 2021ではCIT(A)はVCによる口頭審理の申請を拒否できず、これは納税者の実体的権利と
して確立しています。複雑な争点については積極的に活用することが推奨されます。
申立後の実務:執行停止と審理戦略
申立書の提出と同時に、確定追徴税の強制回収を止める執行停止(stay of demand)申請を行う
ことが推奨されます。§220(6)に基づきCIT(A)への申立中は回収手続の猶予を申請でき、CBDTの
Office Memorandumに基づく20%前払いについては手続編を参照してください。
申立書のGrounds of appeal(申立根拠)は具体的かつ網羅的に記載することが不可欠です。後の
段階で新たな根拠を追加することは原則として認められないため、初回申立時に考え得るすべて
の法的・事実的論点を記載しておく必要があります。また§250(6)に基づきCIT(A)は査定官の見解
と異なる独自の理由付けで命令を下すことができ、不利な方向への変更も理論上可能なため、申
立内容の精査が重要です。
III. ITAT(Income Tax Appellate Tribunal)
ITATは所得税法上の唯一の事実審であり、事実問題・法律問題の双方を審理します。High Court
は法律問題のみを審理するため、事実認定に関してはITATの判断が実質的に最終審となります。
このため、ITATでの立証が不服申立全体の勝敗を決すると理解すべきです。
申立の要件と課税当局の訴額基準
納税者からの申立期限はCIT(A)命令の通知月末日から2ヶ月以内です(Finance (No.2) Act 2024に
より2024年10月1日から改正)。課税当局からの申立(Department Appeal)は同じく通知月末日
から2ヶ月以内ですが、§268Aに基づき追徴税額が₹600万超でなければ原則として申立が認められ
ません。この訴額基準により、中小規模の案件ではCIT(A)命令が実質的に終局となるケースが増
えています。
ITATの権限と実務上の特徴
§254に基づきITATは、確認・変更・取消・差戻しの各命令を下す権限を有します。また
Miscellaneous Application(MA)制度により、ITAT命令が下された月末から6ヶ月以内に明らかな
誤りの訂正を申立てることができます。移転価格案件については、§92CAに基づくTPOの機能分
析・ALP算定が争点となることが多く、比較対象企業の選定・除外基準・機能リスク分析の精緻
さがITATでの立証の核心となります。
実務上の注意点:ITATでは書面審理が原則ですが、口頭陳述(oral arguments)の機会があります
。事実関係の立証は事実審としてのITATで尽くす必要があり、High Courtでは新たな事実を主張す
ることは原則できません。ITATの判例データベース(itat.gov.in)で類似案件の先行判断を事前に
確認し、判例が有利な場合は積極的に引用することが有効です。
IV. 修正申立と職権による更正
§263 上位当局による更正(Revision by PCIT/CIT)
PCIT(Principal Commissioner of Income Tax)またはCIT(Commissioner of Income Tax)は、
下位の査定官による査定命令が「誤りかつ所得に不利(erroneous and prejudicial to the interests
of revenue)」であると判断した場合、命令が下された財務年度末日(FY末)から2年以内にその
命令を取消または修正することができます(§263(2))。例えば命令日が2024年12月31日(FY
2024-25)であれば期限は2027年3月31日となります。PCITによる§263更正は、査定官が特定の
争点を見落とした場合や不十分な調査のまま命令を下した場合に発動されます。不服申立中の案
件には適用されませんが、CIT(A)で納税者が勝訴した事項についてPCITが§263を発動するケース
があり、事実上の二重争訟リスクとして認識する必要があります。なお、ITA 2025(§377(7))で
は、裁判所の手続停止命令等による除外期間を差し引いた残余期間が60日未満となる場合は、自
動的に60日に延長される最低残余期間ルールが新設されています。
§264 納税者申請による更正(Revision by Commissioner)
納税者は、確定命令に対してCIT(A)への申立を行わない場合、命令確定から1年以内に
Commissioner of Income Taxへ§264に基づく更正申請を行うことができます。この制度はCIT(A)
への申立と選択関係にあり、同一事項について両者を並行して利用することはできません。少額
・明白な誤りについてCIT(A)審理のコストを避けたい場合に有効な手段ですが、Commissionerの
判断が拘束力を持つため慎重な利用が求められます。
まとめ
インドの税務調査で追徴税が確定した場合、泣き寝入りする必要はありません。CIT(A)から
ITAT、さらにHigh Courtまで、段階的な不服申立の仕組みが整備されており、正当な主張があれ
ば覆せるケースは実際に多くあります。もちろん訴訟のための専門家報酬等の経済的コストや時
間的コストも考慮する必要がありますが、コストとベネフィットを比較しながら顧問やインド人
会計士と正しい税務調査対応戦略をすり合わせ対応していくことが重要です。
ただし、最も大切なのは「時間との戦い」であるという認識です。確定命令を受け取った瞬間か
ら30日のカウントダウンが始まります。この期限を過ぎると選択肢は急激に狭まります。命令書
が届いたら、内容の精査よりも先に「いつまでに何をしなければならないか」を確認することが
最初の一歩です。
もう一点、Faceless Appeal制度の下では書類がすべてです。担当者に直接説明する機会はほぼあ
りません。日頃から「この取引は将来どう説明するか」を意識して契約書・証跡・議事録を整備
しておくことが、結果として最も効果的な税務リスク管理につながります。
この記事に対するご質問・その他インドに関する情報へのご質問等がございましたら
お気軽にお問い合わせください。
【PR】海外最新ビジネス情報サイト「Wiki Investment」
※画像クリックでWiki Investmentページへ移動します
進出予定の国、進出している国の情報収集に、時間かかりませんか?
進出してビジネスを成功させるためには、
その国の知識や実情を理解しておくことが必須となってきます。
しかし、情報が溢れかえっている社会ではどれが本当に信頼できる情報なのか?が重要です。
そんな「信頼できる情報」をまとめたサイトがあれば、どれだけ楽に情報収集ができるだろう…
その思いから作成したサイトが「Wiki Investment」です!!
弊社東京コンサルティンググループは海外20カ国超に展開しており、
その現地駐在員が最新情報を「Wiki Investment」にまとめています。
【Wiki Investmentで何ができる?】
・現地駐在員が毎週ホットな情報を更新するNews update
・現地に滞在する方からご質問頂く、
より実務に沿った内容が記載されているQ&A集
・当社が出版している海外実務本をデータベース化したTCG書籍
などの新機能も追加しました!
経営者・幹部層の方におススメしたい【全ての経営者へ贈るTCGブログ】
※画像クリックで「TCGブログ」ページへ移動します
会社経営や部下のマネジメントをしていると、様々なお悩みって出てきませんか?
・どうしたら、会社は良くなっていくんだろう・・・
・部下が育ってくれるにはどうしたらいいんだろう・・・
そういったお悩みをもつ経営層の皆様におススメしているブログがございます。
コンサルティングファームとして、これまで多くの企業様と関わり、
課題を解決してきたコンサルタント達による
経営課題や悩みについて解説したブログを無料公開しております。
もっと会社を良くしたい!、マネジメントについて学びたい!
そうお考えの皆様におススメのコンテンツとなりますので、ぜひご覧ください!
Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)
松波 優大(まつなみ ゆうだい)
※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。













