ミャンマービジネスでの従業員解雇

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループミャンマー拠点の近藤 貴政です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

いまだ賃金帯が低く抑えられているミャンマーですが、それだけに従業員の保護はある程度手厚く法令で定められています。
一方、情勢不安や業績不振から、事業の撤退を余儀なくされるような場合、
また従業員のパフォーマンスが期待値に遠く及ばない場合など、従業員を解雇する必要のあるタイミングも出てきます

さて、今回は「ミャンマービジネスでの従業員解雇」についてお話していこうと思います。

 

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目次

【従業員の解雇状況】

2022年8月現在、政治不安に外貨規制が強化され、ますますカントリーリスクが高まるミャンマーでは、外資の事業撤退が相次いでいます。
撤退しない場合であっても、多くの企業が対応業務を減らしており、
それに従事する従業員もまた、いわゆる整理解雇に等しい対応で人員を削減する状況が発生しています。

一方、事業が継続している企業の中では、マネージャー職についているスタッフをはじめ、パフォーマンスが至らないという理由で解雇を検討する企業があります。
採用の時点ではわからなかった業務や会社風土とのミスマッチが判明しても、
本人が自分から退職するということがない場合、企業側が雇用契約の解除に踏み切ることになります。
従来、日系企業は海外事業でもそこまで簡単に人員削減を行わない傾向にありましたが、
最近では企業の財務体質を重視して、徐々に解雇事例が増加していると言えます。

 

【雇用契約の性質】

ミャンマーでは、雇用は個人と企業との間で、一定期間の雇用契約を締結することで成立する場合が多いです。
雇用契約書の内容は、一般に法律に基づいた内容として、モデル契約書が作成されており、
それをテンプレートとして、個人情報などを記載して作成、締結するのが一般的です。
一定の人数の従業員を抱える企業では、所在地の労基事務所(Labour Office)に契約書を提出して受理される必要があるとされていますが、
提出の際、内容がモデル契約書と異なる場合はそれを明示して承認を得る必要があり、
明確な条件の変更は原則として受理されないため、あまり多くの変更を加えることはできないと考えられています。

 

【契約期間と解除のタイミング】

ミャンマーの一般の雇用契約では、3か月ほどの試用期間を含む、1年の契約期間としますが、

実質的には毎年更新されるものであり、いずれかが雇用契約の解除を求めて通知(Notice)を行うまでは、

無制限に延長されると理解されます。この点、例えば賃貸借契約などのように、

契約期間満了のタイミングで所定の通知期間をおいて解除すれば、

違約金なしで解約できる契約と同様のルールではない点に注意が必要です。

具体的には、賃貸借契約のように、契約した期間中の雇用を約束したり、

途中解約でも契約期間分の給与を支払う必要が出てくるような縛りがない一方で、

期間満了のタイミングで解約しようとしても、後述する解雇補償金(Severance Pay)を支払う必要が出てくるというものです。

 

解雇の補償

ミャンマーで従業員を解雇する場合、2015年7月3日の第84号通達により、

雇用者である企業側に以下の方法で計算される解雇補償金(Severance Pay)を支払う義務が発生します

勤続期間 解雇補償金額
6か月以上1年未満 基本給×0.5か月分
1年以上2年未満 基本給×1.0か月分
2年以上3年未満 基本給×1.5か月分
3年以上4年未満 基本給×3か月分
4年以上6年未満 基本給×4か月分
6年以上8年未満 基本給×5か月分
8年以上10年未満 基本給×6か月分
10年以上20年未満 基本給×8か月分
20年以上25年未満 基本給×10か月分
25年以上 基本給×13か月分

会社によってはこの解雇補償金に加えて、別途退職手当を発給するところもありますが、
法的には義務ではなく、またそれがないことで苦情を訴える従業員も少ないと考えられます。

 

 

【パフォーマンスを理由に解雇はできるか】

会社から明確なJob Descriptionを示しているにもかかわらず、個人の能力やモチベーションのために、

パフォーマンスが悪く、役不足となってしまう方も出てきますが、その場合でも、

現行の慣習では、パフォーマンスを理由に「正当な」解雇をすることは難しいです。

一つには、個人のパフォーマンスを評価制度など自社の指標で測定できたとしても、

それを理由に解雇をするという条件を雇用契約に盛り込むことができないため、解雇を正当化することが難しいということがあります。

国として産業が発展途中であることもあり、従業員は飽くまでも肉体労働者のように、

守られるべき弱い存在、という考え方があるため、企業側が解雇補償金を支払うことなく雇用契約を解除できる例は、

まれといえます。一方で、給与を一定のパフォーマンスと紐づけておくことは、

採用の時点で合意してインセンティブ式の給与体系にしておけば不可能ではないため、

特に営業職が管理職など、成果が求められるポジションの場合には、成果主義的な評価・報酬体系にしておくことで、

パフォーマンスが悪ければ退職を選ぶことになるようにもできると考えられます。

 

以上、ミャンマーの解雇事情についてお伝えします。

 

 

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