ミャンマーからの事業撤退

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループミャンマー拠点の近藤 貴政です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「ミャンマーからの事業撤退」についてお話していこうと思います。

進出よりもずっと工数のかかることが多い海外事業の撤退ですが、ミャンマーでは法的に整っていて進めやすい部分もあります。

 

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目次

【事業形態と撤退の方法】

まず、2017年ミャンマー会社法(Myanmar Companies Law)に基づく最も基本的な分類からお伝えします。
外国人ないし外国企業が進出して始めるビジネスを考えれば、ミャンマーで取りうる事業形態は大きく二つ、現地法人(Local Company)と海外法人(Overseas Company)に分けられます。
前者の現地法人は最低1名の取締役と登記住所を持ち、資本金を投入されてできる独立した法人格ですが、
後者の海外法人は一般に支店(Branch Office)や駐在員事務所(Representative Office / Liaison Office)として、本社の活動の一部を担う事業体となります。
撤退を考える場合、現地法人では2020年倒産法(Insolvency Law)に準拠した法人清算(Liquidation)が、
海外法人では2017年ミャンマー会社法に準拠した登記抹消(De-registration)が、それぞれ撤退の方法となります。

以下、それぞれ特徴を見ていきます。

 

【現地法人の清算】

ミャンマーでの現地法人の清算は現状、株主による任意清算(Members’ Voluntary Winding Up)と呼ばれる形式で実行されることがほとんどです。
これは、現地法人の有する債権債務、特に負債について、自社の保有する資産ですべて返済することができる場合に採られる方式です。
法的には、取締役が法人の貸借対照表を添えて、一定期間内にすべての債務履行が可能であると宣言(Declaration of Solvency)を発し、取締役決議でもって清算人(Liquidator)を指名して残存資産・負債の処分を依頼する形式をとります。

その後、登記局であるDICAに書類(Form 3)が提出され、ミャンマー国内の日刊紙に公告が掲載されると、清算人が取締役に代わって法人の処理を受け持ち、最終的に清算後の財務諸表を作成したうえで、残存する資本(=通常は預金残高)を株主に返還する形で、法人の清算を完了させます。
現実的に債務の履行が不可能となる場合には、親会社など債権者から債務免除を受けたり、Debt-Equity Swapを行って債務をなくす必要がある点、また一旦清算人が指名されれば、取締役がすべての権限を失う点が、現地法人清算の特徴といえます。

 

【海外法人の登記抹消】

ミャンマーでの海外法人の支店・事務所の閉鎖は、登記局であるDICAにForm E-9という書類を提出し、登記を抹消することで完了します。
現状、オンラインのポータルサイトMyCO上で手続きすることができ、スキャン画像で済む点、スムーズな手続きとなっています。
ポータルサイトMyCO上でこそ60日の待機期間が生じますが、現地法人と比べ、日刊紙への公告や清算人の指名もいらず、
比較的簡単に閉鎖することができるのが特徴です。

 

【論点:所要期間】

ミャンマーからの事業撤退にかかる期間は、現地法人であれば12か月~24か月、海外法人であれば9か月~18か月ほどかかります。
それぞれ以下の様な論点で、期間に幅ができます。
まず、事業撤退を決める時点で、どの程度各方面との契約が締結されているか、事業が継続しているかが問題になります。
雇用契約、賃貸借契約、売買契約など、それぞれ解約条件も確認して解除していきます。
通常、2~4か月程度かけることが多い部分です。
次に、決算処理と税務対応の観点で、現地法人、支店・駐在員事務所共に、それ以上収益も費用も発生しないという確信を持ったうえで、
清算・登記抹消を開始する必要があります。
税務当局の対応は特に時間がかかる傾向にあり、過去のコンプライアンスが満点であったようなところでも、
税務上の義務が満了し、完了証明(Tax Clearance Certificate)が発行されるまでには、早くて6か月が必要となります。
その後、残存する資本があれば、通常はミャンマーから国外へと、銀行送金の手配が行われます。
その後、銀行口座を閉鎖するまで、通常1か月程度要することになります。

 

【論点:難点】

ミャンマーからの事業撤退における難点は、上記所要期間の論点とも重複しますが、大きく税務および国外送金の2点があります。

まず、税務上の義務を満了したという証明(Tax Clearance Certificate)が取れなければ、ミャンマーから国外へ、
株主や本社に資金の返還を行うことができないルールとなっています。

一方、この税務上の義務満了のためには、過去の年度すべてにおいて、求められるすべての税務申告を完了し、未払いの税額がゼロとなっている必要があります。
また、通常は事業撤退を決めた時点でも、収益や費用が発生していることが多いため、区切りをつけてこれを一切発生しないようにするためには、注意が必要です。
一定の費用は関係会社や本社が立て替えて済ませることもできますが、ミャンマー国内を源泉とする収益・費用があると、事業が停止していない扱いになってしまい、最悪決算や税務申告のやり直しが求められ、何か月も追加で時間がかかってしまうことになりかねません。

次に、国外送金については、2022年4月以降、外貨規制の厳格化が進み、著しく難しい状況が続いています。
上記現地法人清算・海外法人登記抹消の手続きを一定程度まで進めたうえで、外国為替監督委員会(FESC)に送金許可を申請し、認可を得る必要があるとされていますが、輸入代金支払い、株式配当、ローン返済など、過去には問題のなかった正当な支払いすらも、なかなか許可が下りない状況になっています。
他のすべての手続きを完了させても、最後に本国送金の点で数か月完全に停止してしまうケースがあり、ミャンマーからの事業撤退の最大の障害となっています。

 

【事業撤退の検討】

ミャンマーの政治不安、治安の悪化、外貨規制、現地通貨の暴落など、ビジネス環境は厳しくなる一方ですが、そんな中でも現地企業との関係を維持したり、市場調査を継続してビジネスチャンスを広げる動きは継続しています。
仮に会社の決定で事業撤退することになったとしても、現地での雇用の残し方、市場調査の続け方、販売経路の維持の仕方など、様々な検討を経たうえで撤退を実行できれば、ミャンマー事業を将来につなげることができるはずです。

弊社では、ミャンマーに根を張って最後まで撤退しない体制を確保しながら、他社様の事業撤退サポートだけでなく、撤退・形態変更後の事業継続方法などについても、ご相談を承っております。
実務上の詳細に関するお問い合わせと合わせて、ぜひお声かけいただければ幸いです。

以上、ミャンマーの事業撤退についてお伝えします。

 

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近藤 貴政


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