チャウピュー経済特区の最近の動向(2023年11月23日現在)

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループミャンマー拠点の近藤 貴政です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「チャウピュー経済特区の最近の動向」についてお話していこうと思います。

 

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【チャウピュー経済特区の最近の動向(2023年11月23日現在)】

2023年11月22日の政府系メディアの発表で、ミャンマー経済特区中央委員会通達Directive 3/2023により、チャウピュー経済特区(Kyaukphyu Special Economic Zone:Kyaukphyu SEZ)の管理委員会が再編されることが報じられました。

ヤンゴンに隣接し、日本が官民を挙げて発展させてきたティラワ経済特区(Thilawa SEZ)に比べ、開発が遅れているチャウピュー経済特区ですが、国家戦略としては非常に重要視されています。

その基本情報と将来性について、まとめて見ていきましょう。

 

位置づけ

ミャンマーで中央委員会を設けて企画された経済特区は三つ、経済の中心ヤンゴン付近のティラワ経済特区、南部タイ国境に近いダウェー経済特区、そして西部ベンガル湾に面したチャウピュー経済特区です。

うち、チャウピュー経済特区はラカイン州中部のラムリー島(Ramree Island)北端に位置するチャウピューに隣接し、マデー島(Maday Island)、およびラムリー島本島に建設されることになっています。ラムリー島は島と位置付けられてこそいますが、陸路でマグウェー(Magway)やピエ(Pyay)といった都市とつながっています。

地理的には、中国西南端の雲南省、国境の都市ムセ(Muse)から、第二の経済都市マンダレーを経由し、インドやスリランカに面するベンガル湾に向け、ミャンマーを横断する最短経路を考えた際、そのベンガル湾に面して港を建設すべき位置にチャウピュー経済特区ができることになります。

その港はヤンゴン港のように水深が浅いという問題がなく、中国から見れば、バングラデシュはチッタゴン、インドはコルカタやチェンナイ、スリランカはコロンボといった各都市と、マラッカ海峡を通ってインドシナ半島を迂回することなく、ダイレクトにつながることができます。

一帯一路政策(Belt and Road Initiative)を進める中国にとっての地理的重要性から、ミャンマーと中国の国家事業として、2013年の発表、2014年の経済特区法施行、2015年の投資誘致開始と進み、中国最大の国営投資企業、中国中信集団公司(CITIC Group:中信集団)が案件を落札、深海港の建設に当たっています。

 

計画

チャウピュー経済特区の建設によって中信集団が計画しているのは、主に中東から中国への石油の輸入経路を確保することだとされています。

軍政状態のミャンマー政府機関が実施した環境および社会的影響に関する査定調査が本年2023年に完了し、USD7,300,000,000をかけた深海海の建設開始に向けて、現地で従業員の採用が始められたと報じられています。

このプロジェクトは2015年、民政時代の政府が15%出資し、中国側が85%を投じることで合意、その後選挙に勝った民主政党NLDにより、ミャンマー側の出資は当初の70%に削減されていました。

また、現地ラカイン州の17歳~35歳のミャンマー人の若者を対象に、中国語を教える言語教育が進められており、既に中国語話者が多数を占める国境沿いの諸都市、マンダレーに続いて、中国の影響力が強化されようとしています。

現地の住民は必ずしも中国に友好的ではなく、中国が利権の多くを奪っていくこと、ミャンマー側の利益もその大部分は軍部の懐に入るであろうことが懸念されています。住民のほとんどは漁業を営む低所得者層で、経済特区が稼働に向かえば、立ち退きを余儀なくされるか、少なくとも生計が成り立たなくなると恐れられています。また、ラカイン州はバングラデシュに面し、国際的に問題視されているロヒンギャの人びとが居住している地域でもあります。2023年に発生したサイクロンMochaの影響も大きかったラカイン州、民族問題も解消されない中で、やや強引に中国の圧力の下で計画が進められていると報じられています。

 

特徴

経済特区として、経済特区法(SEZ Law)の適用を受けることにより、外資規制のある業種についても外資100%での活動が許可されたり、一定期間の免税・減税の受けられる優遇税制が享受できるといったメリットがあります。

一方で、チャウピュー経済特区は上に見た通り、ミャンマー政府の影響力が比較的小さく、企業が率先して中国とインドを繋ぐ交易をおこなう目的が全面に出されていました。軍政に戻った後、ミャンマー政府、また中国政府の関与が増加したという見解もありますが、入札等は国際水準に則ったオープンなものとなっています。

計画されている敷地の配分によれば、チャウピュー経済特区の企業は産業ごとにまとめられて産業公地(Industrial Park)が形成され、物資の輸送や管理の面で効率化が図られることになっています。

また、部品組み立て、自動車製造、化学品加工、農産物輸出、運輸、サービスの各業種について、集中的に誘致が行われ、ベンガル湾に面した深海港として、輸出に特化した産業が密集する場所となる予定です。

誘致が計画されている主な産業は以下の通りです:

・製造業全般(General manufacturing)

・自動車組み立て(Automobile assembly)

・電子機器製造(Electronics manufacturing)

・建設資材製造(Construction materials)

・化学品加工(Chemical Processing)

・石油・ガス関係(Oil & Gas)

・農産物加工(Agro-products processing)

・船舶・運輸業(Shipping & Logistics)

・輸出入貿易(Import & export trading)

資金構造

中信集団は以下の企業体とのコンソーシアムを組んでいます。

China Harbour Engineering Company Ltd.

China Merchants Holdings

TEDA Investment Holding

Yunnan Construction Engineering Group

Thailand’s Charoen Pokphand Group

このコンソーシアムの活動に中信集団が出資、さらにミャンマー政府計画財務省、チャウピュー経済特区管理委員会、中国・ミャンマーの民間企業が出資してチャウピュー経済特区開発事業が編成されており、出資比率の高い中信集団が率先して計画を実施すべき立場にあります。

中国の強引な圧力、現地住民の反対など、いくつも不安要素はありますが、将来的には実現されるであろう2番目の経済特区として、その動向には留意することが必要でしょう。

 

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近藤 貴政


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