<判例>
1986年8月26日に従業員Xは、Y社にSales Managerとして入社した。1991年1月1日にGeneral Managerに昇進し、1996年1月24日にY社の代表から、新しく国際的な部門を立ち上げたので、その部門のArea Managerとして働いて欲しいという依頼を受けた。しかし、Xは、これを誰もいない部署へ追いやることでの嫌がらせであると捉え、みなし解雇であるとし訴えを起こした。
<従業員側の主張>
新しい部署で部下もいない状態は、Yが嫌がらせをしている理由として捉えることができる。また、仮に降格ではない場合、昇給などの処置が必要であると考えられるが、そういったものもないため、これは降格処分であると主張する。
<会社側の主張>
1996年1月29日に、この人事異動が決して降格処分ではないことをXに対して説明をしているが、その場では不同意であったため、その後も業務範囲が拡大するが、給与が上がらない理由等も説明し、両者が納得した形で合意をしようとする機会は何回も設けている。しかし、その都度Xは、みなし解雇であると主張するのみである。しっかりと説明をした上で異動を行いたいと考えており、今回の件は決してみなし解雇には該当しないと主張する。
<判決の要旨>
本件では、Yは何度も本件の異動について説明をしており、Xの同意を取ろうとの姿勢が見られる。また、業務範囲が拡大するにもかかわらず給与が上がらない理由もXに対して十分に説明されている。また、万が一、降格であれば減給処分や業務範囲の縮小なども考えられるが、今回は拡大しているのでそれにも該当しないと考えられる。Yが異動を行う理由や説明を何度もしている態度は、Xに対して、誠実な異動を行なおうとしている証明となる。よって、本件はみなし解雇事由には該当しない。
<判決のポイント>
このケースでは、会社側が異動及び給与が上がらない理由について従業員にしっかりと説明した上、同意が得られなかったため、同意に向けたさらなる面会の機会を設ける等したことが、異動に誠実な理由があるものと裁判所に認定される根拠になっています。
異動を一方的にやってしまうことは、みなし解雇とみなされるリスクが高いため、相互に合意を取ろうとしっかりとした対応をとることがポイントとなります。
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