お世話になっております。東京コンサルティングファームの藤井でございます。
労働裁判の判例をケーススタディの題材として使用し、どういった思考軸を持って自社の従業員と接すればいいのかについて考えていきたいと思います。また、この判例が皆様のビジネスの一助となれば幸いでございます。
<判例>
1977年2月に従業員Xは、Admin ManagerとしてY社に入社した。1979年10月1日に、Finance Administratorに昇進し、給与も1,300RMに上がった。1988年3月25日に会社から、コタキナバルに異動命令が出されたが従業員Xはこれを拒否し、1988年4月8日にコタキナバル異動を拒否したとして、Y社から解雇された。
<従業員側の主張>
1977年1月25日行われた入社面接で生活拠点がクアラルンプールにあるということを伝え、雇用契約書内に“異動”に関する条項の記載がなかったため署名した。もし、“異動”に関する条項があれば署名はしなかった。これは不当解雇である。
<会社側の主張>
“異動”の拒否は、業務拒否と同じ行為である。すなわち、雇用契約の履行違反である。よって、本件は正当な解雇事由であると認識しているため、解雇は正当である。
<判決の要旨>
本件では、雇用契約書内に“異動”に関する条項が入っていないため、今回の異動を拒否したことは、雇用契約の違反に該当せず、不当解雇に当たる。よって、会社は24ヶ月分の給与、勤続年数×月給及び今後も勤続が予想された場合の見積もり賞与額を判決後1ヶ月以内に支払わなければならない。
<判決のポイント>
雇用契約に異動について書かれていなかったことが、不当解雇とみなされた大きな理由のひとつとなりました。雇用契約書は、会社と従業員の間で結ばれる契約書であり、ここから外れた行為を要求することは、雇用主側の契約違反でとして訴えられるリスクが高くなります。
対応策としては、異動などの勤務状態の変更が新たに想定される場合にはあらかじめ、新しく雇用契約を結びなおしておくなどの被雇用者の同意を取り付けておくことが考えられます。
何かご不明点等があれば、気兼ねなくお問い合わせくださいませ。
Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.
Managing Director
藤井 大輔 (ふじい だいすけ)
TEL: +603-2092-9547 / E-MAIL: fujii.daisuke@tokyoconsultinggroup.com
Mob: +60-11-3568-4629