お世話になっております。東京コンサルティングファームの藤井でございます。
労働裁判の判例をケーススタディの題材として使用し、どういった思考軸を持って自社の従業員と接すればいいのかについて考えていきたいと思います。また、この判例が皆様のビジネスの一助となれば幸いでございます。
<判例>
1994年4月30日、従業員Xは、Y社に試用期間を設けて入社した。試用期間終了後XY間で雇用契約は結ばれず、Y社からも試用期間終了の通達が発行されなかったためXはY社で勤務を続けた。当事者間では、XとY社の間で雇用契約が結ばれた場合には、100RM昇給させるという取り決めがなされていた。なお、当該取決では、試用期間終了後に自動で契約が締結されたとみなすことを示す文章等は入っていなかった。Xは1996年5月までY社で働いた後、自主退職した。その後、Xは、Y社に対してこの100RMの昇給が試用期間終了後になされなかったことを理由に、Y雇用契約に基づく不履行を理由として差額分賃金の支払いを求め訴えを提起した。
<従業員側の主張>
Xは、100RMの昇給がなされていないことが、A社の雇用契約に基づく債務不履行に該当すると主張。
<会社側の主張>
Y社は、本件昇給条件が適用されるのは雇用契約が締結された場合とお互いが理解しており、また、試用期間終了後に自動的に採用となるといった文言は規定されていないため、従業員とは一切の雇用契約は締結されておらず、原告の主張には理由がないと主張。
<判決の要旨>
地方裁判所では、A社側の訴えが認められた。しかし、最高裁では従業員側の主張が支持され、A社に13,000RMの支払いを命じた。最高裁が従業員側を支持した理由は、下記の通りである。
“従業員には、どこからが試用期間であり、どこからが雇用契約になるのかを知る権利がある。また、それを知ることにより、従業員は満足、安心して働くことができる。また、試用期間が無期限の間なされるということがあってはならない。よって、試用期間が終了したとしても、会社側から契約を終了するという通知が発行されるなどの行動がない限り、従業員は雇用契約が結ばれたとみなされる。
<判決のポイント>
試用期間が終了した場合、会社はそのまま契約を続けるかそれとも契約を終了するかの2つの選択肢を有しています。本判例でもある通り、何も会社側からアクションを起こさなかった場合は、自動的に雇用契約が結ばれたと解釈されます。仮に、試用期間を終了し、契約を結ばない場合、正当な理由がない場合、解雇事由に該当する可能性もありますので慎重に事を進めることを勧めます。
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