インドにおける新労働法施行予定による影響分析 ―「賃金」の定義の統一化によるPFや退職金の拠出額の変化―

労務

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デリー拠点

 

皆さま、こんにちは。東京コンサルティングファーム、デリー拠点でございます。

 

今回は、インドにおける新労働法施行予定による影響分析ということで、
「賃金」の定義の統一化によるPFや退職金の拠出額の変化によってもたらされる、
企業及び、従業員様への影響についてお話いたします。

 

こちらは弊社Wiki Investmentの第12章の労務にリンクしており、
現在、従来の労働法と併記する形で更新中です。

[PF及び、退職金に関する会社負担額の増額/Higher contribution in PF; requirement to pay higher gratuity]

 

今回の新労働法改正予定によって、「賃金」の定義が統一されました。
これまでインドの労働法では、法律によって異なる「賃金」が用いられておりました。
そのため、複数にわたる法律を1つ1つ確認し、計算しなければならず、複雑さがございました。

 

たとえば、月額金額で、基本給(Basic Salary)が16,000 INR、特別手当(Special Allowance)が8,000 INR、
住居手当(HRA: House Rent Allowance)が4,000 INRとします。

 

1948年最低賃金法では、「賃金」(Wage)というのは、基本給(Basic Salary) + 特別手当(Special Allowance) + 住居手当(HRA)で計算されますので、INR 28,000になります。

1936年賃金支払法では、「賃金」(Wage)というのは、基本給(Basic Salary) + 特別手当(Special Allowance) + 住居手当(HRA)で計算されますので、INR 28,000になります。

また、1965年賞与支払法において、「賃金」(Wage)は、基本給(Basic Salary) + 特別手当(Special Allowance) + 物価調整額(DA: Dearness Allowance)で算出され、INR 28,000となります。

さらに1972年退職金支払法においては、「賃金」(Wage)は、最後に受け取った基本給(Last drawn basic) + 物価調整額(DA: Dearness Allowance)で算出され、 INR 16,000となります。

 

このように、「賃金」といっても法律によって異なっていたのがこれまでのインドにおける労働法の複雑さを示しておりますが、新たな労働法が施行されることによって共通の定義で進めていくことができるようになります。

 

統一された定義での「賃金」は、以下のようになります。
基本給(Basic Salary) + 特別手当(Special Allowance) = INR 24,000

 

つまり今後は統一された「賃金」が用いられていくことため、
場合によってはPF拠出額や退職金金額が増額することとなります。

 

たとえば、退職金について7年勤続した従業員様を例に説明いたします。
退職金の算出方法は、法定退職金額=最後に受け取った給与額×15÷26×勤続年数となっております。

変動費支払い/ボーナスを含むCTC (CTC including Variable Pay/ bonus): 1,600,000 INR
変動報酬を除くCTC (Cost To Company Excl Variable pay): 1,280,000 INR
基本給(CTCの40%) (Basic Pay (40% of CTC)): 640,000 INR (A)
住居手当(House Rent Allowance): 141,560 INR (B)
旅費交通費(Leave Travel Allowance): 100,000 INR (C)
燃料経費(Fuel reimbursement): 102,000 INR (D)
PF拠出額(PF Contribution): 70,000 INR (E)
NPS拠出額(NPS Contributions): 48,000 INR (F)
通信費経費(Telephone Reimbursement): 23,000 INR (G)
食事手当(Meal e vouchers): 25,000 INR (H)
退職金(Gratuity): 23,000 INR (I)
特別手当(Special Allowance): 107,440 INR (J)
法定賞与以外の賞与(Variable Pay/ Bonus): 320,000INR (K)

 

とこれまでの労働法に基づき仮定をします。

 

これまでの労働法における退職金算出で用いられる賃金は、640,000 INR (A)で、
月額給与に換算しますと、53,333 INRとなります。最後に受け取った給与額×15÷26×勤続年数にあてはめますと、
53,333×15÷26×7=215,383 INRが退職金ということになります。

 

今後は、(A+H+J+K)の合計である1,092,440 INRが賃金に含まれて行きますので、月額給与に換算しますと、91,037 INRとなります。最後に受け取った給与額×15÷26×勤続年数にあてはめますと、91,037×15÷26×7=367,649 INRが退職金ということになります。

 

このように「賃金」の定義の統一化によるPFや退職金の拠出額の変化がみられ、
企業にとっても大きな財務の影響と推測されます。

 

次回は、国としての最低賃金に基づいた賃金の支払いと、
「従業員」の定義へ管理者の追加による財務的な影響についてお話いたします。

 

弊社では、今回の新労働法施行予定に伴い、
給与構成のレビューや分析サービスも開始いたします。

 

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