マレーシアの2017年度予算案

1.  予算案要旨

 原油販売による歳入が年々減少する中、マレーシア政府は何とかして税収を増やそうと躍起になっています。今回においては、情報管理システムを設置することで、課税強化に乗り出す姿勢を見せ始めていること、法人税でいえば、源泉税の対象範囲拡大やロイヤルティの定義を再定義し直すなどといったことが主な改革のポイントかと思います。また、個人所得税に関しては、配偶者控除の要件を厳密化するなどといったことが大きな注目点かと思います。

2.  情報管理システム(CIA)の設置

 マレーシア政府によって、財務省直下による、情報管理システム(英名: Collection Intelligence Arrangement, CIA)を設置することが決定しました。このシステムは、マレーシア税務局(IRB)、関税局(RMCD)及び会社登記局(SSM)それぞれが、情報をシェアし、税申告を行っていない会社や適切な税申告を行っているのかどうかを効率的にチェックする情報管理システムとなります。これにより、マレーシア政府がさらなる徴税強化への姿勢を示していると伺えます。

3.  税制改革

3-1.法人所得税

①  SME企業に対する法人税の引き下げ

 賦課年度2017年より、SME企業に対する法人税が、19%から18%へ引き下げられることとなります。ただし、SME企業以外については、24%のまま変更はありません。

<現行と改正案>

課税所得

賦課年度2016年

賦課年度2017年及び2018年

500,000RMまで

19%

18%

500,001以上

24%

24%

 

 

 

※1 SMEとは、自社の払込資本金が250万RM以下であるだけでなく、関連会社及びグループ間での会社においても払込資本金250万RM以下であることが必要である。

 

<施行年度>

賦課年度2017年より施行

②  課税年度2017年及び2018年に対する法人税引き下げ

 

 課税年度2017年及び2018年については、前年度と比較し、前年度より増加した部分に対して、法人税を部分的に引き下げる制度を設けます。これにより、実効税率が若干引き下がることとなります。

 

<改正案>

課税所得増加割合(対前年比)

減額控除割合

軽減税率

5%未満

なし

24%

5%〜10%未満

1%

23%

10%〜15%未満

2%

22%

15%〜20%未満

3%

21%

20%以上

4%

20%

例)賦課年度2016年の課税所得が、100万RM及び賦課年度2017年の課税所得を120万RMとします。

 

<課税年度2016年>

課税所得    100万RM

法人税率    24%

——————————–

法人税     24万RM

 

総額法人税額  24万RM

実効税率    24%

 

<課税年度2017年>

前年度課税所得 100万RM

法人税率    24%

——————————–

法人税     24万RM ①

 

(対前年度超過分) 

課税所得       120万RM 

前年度課税所得 100万RM

——————————–

対前年度超過額 20万RM(増加率:20%(20万RM ÷ 100万RM))

軽減税率    20%

法人税額    4万RM ②

 

総額法人税額  28万RM(①+②)

実効税率    23.3%

 

<施行年度>

賦課年度2017年と2018年のみ適用

 

3-2.源泉税について

 

①  所得に対する源泉税の範囲拡大

 所得税法第4A条(ⅰ)及び(ⅱ)で定められている、非居住者のマレーシアにおける所得に対しての源泉税の範囲が拡大されます。今までは、マレーシア国内でサービス提供が行われたものに対してのみ、源泉税の対象でありましたが、今回の税制改正においては、マレーシア国外のサービスにおいても源泉税の対象とすることになります。

 

<所得税法4Aで定められている所得>

(ⅰ)ブランドの使用権、機械や機械器具の設置や仕様に関連して提供されたサービスの対価

(ⅱ)商業的事業における技術的経営・管理に関連して提供されたサービスの対価

 

<現行>

国内でサービス提供が行われた場合のみ、マレーシア国内において源泉税対象となる。

 

<改正案>

マレーシア国外で行われた場合においても、マレーシア国内において源泉税対象とする。

 

<施行年度>

Finance Act 2016施行に応じて

 

②  ロイヤルティに対する定義の拡大 

 現行では、ロイヤルティ定義の中に、ソフトウェアの記載はなかったが、それが新たに追加されることとなりました。

 

<現行>

a) 下記、ⅰ)及びⅱ)に対する支払い

ⅰ) 特許、商標、デザイン、映像、音楽等をマレーシアで使用する権利

ⅱ)ノウハウなどの経験やスキルに対する支払い

 

<改正案>

a)  ソフトウェア使用料または使用する権利に対する支払い

b)  衛星放送、ケーブルや光ファイバーなどによって送信される映像や音声の提供の権利

c)  ロイヤルティと定義された財産・権利またはその他項目の使用の権利

 

<施行年度>

Finance Act 2016施行に応じて

 

3-3.GST

①  サービス輸入におけるGST課税時点の変更

  GSTの課税時点をより明確にする変更となります。

 

<現行>

ⅰ)請求書に対して、対価の支払いがなされた日時

ⅱ)マレーシア国外の法人から請求書が発行された日時

 

いずれか早い方を、課税時点として適用する。

 

<改正案>

ⅰ)請求書に対して、対価の支払いがなされた日時

ⅱ)マレーシア国外の法人から請求書を受領した日時 

いずれか早い方を、課税時点として適用する。

 

<施行年度>

賦課年度2017年1月1日より

 

②  GST登録要件の変更

 新たに2つの項目をGST登録要件に必要とされる、課税供給額から免除とすることとなりました。

 

<現行>

ⅰ)事業用固定資産の除去

ⅱ)サービスの輸入における供給

ⅲ)ウェアハウジングスキームに基づく供給

ⅳ)アプルーバル・トル・マニュファクチャ・スキームにおける、マレーシア国外に所属するものないしは受領者による供給

ⅴ)第155条に基づくデザインエリア(ラブアン、ランカウイ、ティアマン)内における供給。ただし、第160条1項で定められたものは除く。

 

<改正案>

下記2つの項目を新たに追加

ⅰ)上記ⅰ)を事業停止に伴う除去に修正。

ⅱ)第163条第1項で定められた供給を除く、第162条で定められたフリーゾーン内における供給

 

<施行年度>

賦課年度2017年1月1日より施行

③  GST支払い遅延に対する罰則

 遅延に対する罰則が強化され、最大で40%の罰則が与えられることとなります。

 

<現行と改正案>

遅延日数

現行

改正案

1〜30日まで

5%

10%

31日〜60日まで

追加:10%

(合計:15%)

追加:15%

(合計:25%)

61日〜90日まで

追加:10%

(合計:25%)

追加:15%

(合計:40%)

 

<施行年度>

賦課年度2017年1月1日より施行

 

3-4.個人所得税

 

①  配偶者控除に対する制限

 配偶者控除に対しての要件が追加され、控除を受けられる人を制限しましています。

 

<現行>

現行では、配偶者に所得ない場合、4,000RMの控除が受けられる。

また、配偶者が何らかの障害を持っている場合は、追加して3,500RMの控除を認める。

 

<改正案>

配偶者が、国外で所得があり、その額が4,000RM以上であった場合は、配偶者控除を受けることはできない。ただし、配偶者が何らかの障害を持っている場合は、この限りではない。

 

<施行年度>

賦課年度2017年より施行

 

②  生活スタイル控除を追加

 今まで、カテゴリー別で控除額が決められていましたが、それを統一し、新たなカテゴリー「生活スタイル」を設けることになりました。

 

<現行>

a)  本、雑誌やそれに類似する書物の購入に対しては、毎年1,000RMまで控除を認める

b)  パソコンの購入に対しては、3年毎に上限3,000RMまで控除を認める

c)  運動器具の購入に対しては、毎年300RMまで控除を認める

 

<改正案>

現行で定義している、上記3つのものに加え、新たに下記で示すものを含んだ「生活スタイル控除」というものを制定し、毎年上限2,500RMまでの控除を認める

 

a)  日刊紙の購入

b)  スマートフォン及びタブレットの購入

c)  インターネット通信費

d)  ジム会員費

 

控除項目

現在

改正後

控除項目

1年間

3年間

1年間

3年間

読み物に関する控除

1,000RM

3,000RM

2,500RM

7,500RM

パソコン購入に対する控除

3,000RM(3年おき)

3,000RM

運動器具に対する控除

300RM

900RM

合計

 

6,900RM

 

7,500RM

 

年間で200RM(3年間で600RM)は控除できる額が増えます。

 

<施行年度>

賦課年度2017年より施行

 

③  託児所や幼稚園費用に関する控除

 賦課年度2017年より、新たに制定された控除項目となります。

 

<改正案>

6歳以下の子供で、託児所(Child Care Center Act1984で定められた)や幼稚園(Education Act 1996で定められた)に通う児童を持つ個人に対して、1,000RMの控除が認められる。

 

<施行年度>

2017年度1月1日より施行

④  授乳器具購入に対しての控除

 賦課年度2017年より、新たに制定された控除項目となります。

 

<改正案>

授乳器具の購入に関して、1,000RMの控除額を認める。ただし、2歳以下の児童を持つ女性のみの申請及び2年に1回のみの申請となる。

<施行年度>

賦課年度2017年より施行

 

3-5.不動産に関わる印紙税

 賦課年度2018年より、マレーシアの不動産における印紙税が変わることとなります。

 

<現行と改正案>

番号

市場価格

現行

改正案

最初の100,000RM

1%

1%

100,001RM〜500,000RM

2%

2%

500,001RM以上

3%

3%

1,000,000RM以上

3%

4%

 

例)

購入金額 200万RM

印紙税計算

金額

印紙税割合

対象金額

印紙税額

最初の100,000RM

1%

100,000RM

1,000RM

100,001RM 〜 500,000RM

2%

400,000RM

8,000RM

500,001RM 〜 1,000,000RM

3%

500,000RM

20,000RM

1,000,001RM 〜

4%

1,000,000RM

40,000RM

 

 

総額 2,000,000RM

総額 69,000RM

(従来は、54,000RM)

 

<施行年度>

賦課年度2018年度1月1日より施行

 

3-6.優遇税制

 

①  インターンシッププログラムの二重控除の期間延長

 インターンシッププログラムに対する控除の期間が延長されています。マレーシア人卒業生に対する雇用の促進を図ることが大きな目的です。

 

<現行>

Talent Corporation Malaysia Berhadによって認められた会社が参加する、インターンシッププログラムにおいてかかった費用については、二重控除をすることができる。学位に応じて、控除できる賦課年数が変わってくる。 

ⅰ) 学位 — 賦課年度2012年から2016年まで

ⅱ) 専門士 — 賦課年度2015年から2016年まで

 

<改正案>

このそれぞれの賦課年度を3年伸ばし、2019年まで適用可能とする。

 

<施行年度>

賦課年度2017年〜2019年のみ

 

②  ハラルパーク内で取り扱うハラル食品に対するインセンティブの緩和

 新たに機能性食品とプロバイオティック食品に対してインセンティブを緩和いたしました。

 

<現法>

HDC(Halal Development Corporation)が促進しているハラルパークで活動しているハラルビジネス関係会社に対しては、以下のようなインセンティブを与える。

 

ⅰ) 適格資本支出に対する税金は、10年間免除。もしくは、5年間の輸出に対する売上を免除とする。

ⅱ)ハラル製品を開発、生産するにために必要な原材料の輸入に対しては、関税を免除とする

ⅲ)GMO コード(WHOやFAOが定めている食品の基準を満たした食材)やHACCPコードが取得されている食品の購入費については、二重控除が適用できる。

 

本インセンティブを用できる食品は以下の通りである。

ⅰ)加工食品

ⅱ)化粧品、医薬品など

ⅲ)肉製品

ⅳ)ハラル認定の材料

 

<改正案>

新しく追加以下の二つを追加することとする。

 

ⅰ)機能性食品

ⅱ)プロバイオティック食品

 

<施行年度>

賦課年度2016年10月22日より施行

 

 

何か御不明点等がございましたら、気兼ねなくお問い合わせください。

 

 

 

 

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