インドにおける「労働者」“Work Man”と「非労働者」“Non-Work Man

労務

インドの労働法の適用対象者とされているのは、“Work Man”「労働者」であり、それ以外の者は“Non-Work Man”「非労働者」として労働法の保護を受けず、“Indian Contract Act, 1872”『一般契約法』上での問題として取り扱われることになります。
「労働者」の定義は、最も基本的な労働法の一つである1947年労働紛争法(Industrial Disputes Acts,1947)2(s)条に規定されており、「非労働者」についてもそこから解釈することになります。
この規定からすると、「労働者」(Work Man)とは、原則的に事業主に雇用されている者になり、「非労働者」(Non-Work Man)とは、以下のとおりの例外規定4項目に該当する者になります。
(ⅰ)空軍、陸軍、海軍に所属する者
(ⅱ)警察または刑務所で雇用されている者
(ⅲ)経営者的・経営管理的な立場にある者
(ⅳ)賃金が10,000ルピー/月以上の監督的な立場にある者
上記(ⅲ)、(ⅳ)の「経営者的・経営管理的」や「監督的」な立場に関して、客観的に明確な基準はなく、判例に基づいて個別具体的に判断する必要が出てきます。
商品の検査を行う薬剤師、事務職のオフィサー、その他管理監督的な立場にないもので、前述の(ⅰ)~(ⅳ)に当てはまらない労働者については、ワークマンとして扱われます。
日本でも、「管理監督者」は、労働基準法が定める労働時間、休憩および休日は適用外となり、保護の対象から外れます(労働基準法第41条2項)。
しかしながら、ファーストフード店店長の「名ばかり管理職」等の問題をきっかけに、2008年4月1日付で厚生労働省労働基準局から「管理監督者の範囲の適正化について」の通達が出されました。
現在、日本では「管理監督者」とは、名称にとらわれることなく、①労働条件の決定、労務管理について経営者と一体的立場にある、②労働時間等の規則の枠を超えて活動する、③賃金も優遇されているといった点が実態に即しているか総合的に判断することとされています。
インドと日本の違いは、日本の場合には原則として、「管理監督者」も労働者の範疇に含まれるものであり、基本的には保護の対象という扱いです。日本の労働基準法上適用除外となるのは、労働時間、休憩、休日の規定に限定されています。
しかし、インドでは、「非労働者」になると多くのインド労働法の保護の対象から外れてしまいますす。特に解雇にかかる点においては、労働者と別の扱いとなるために、労使紛争となった場合の管轄が異なります。
「労働者」の場合は、まず労働裁判所(Labour Court)で審議することになり、そこでの判断に不服があれば高等裁判所に上告します。
一方「非労働者」の場合は、民事裁判で争うことになります。
このように、「労働者」「非労働者」の範囲や紛争の際の管轄機関が異なることに留意する必要があります。
従って、日本での「管理監督者」の概念がインドでの「非労働者」にそのまま通用するとは考えない方が無難といえます。
つまり、インドにおける労務管理にあたっては、日本との違いを考慮し、特に下記の4点に留意する必要があるといえます。
a.連邦法、州法、産業別に労働法があるので事業所の管轄州と自社の産業に関わる労働法に留意する。
b.インドでの雇用は、「労働者」(Work Man)として雇用するのか、「非労働者」(Non-Work Man)として雇用するのかを明確にする。
c.スタンディング・オーダーズ(Standing Orders)または従業員手帳(Employee Hand Book)を作成し、会社のルールを明確にする。
d.法律によって、同じ英語(ヒンディ語)であっても意味合いが異なることがあるので留意する。

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