インドLLP(有限責任事業組合)について

法務

みなさん、どうもこんにちは。増田です。

みなさんはLLPという言葉を聞いたことがあるでしょうか? 私も、日本にいるときに設立などの相談を受けたことがありましたが、いまや世界中で広く活用されている組織形態の一つとなっています(日本では、まだまだ馴染みは薄いですが)。

LLPとはリミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(Limited Liability Partnership)の略で、日本では2005年8月より日本版LLP(国によって、LLPに対する法律上の取り扱いが異なるため)の設立が可能となりました。

通常の法人形態と異なり、特徴的な面がいくつもあるため、それらをしっかりと理解した上で設立する必要があります。

日本版LLPの大きな特徴(メリット)として、
①設立が株式会社などと比べて容易
②有限責任であるため、構成員については出資額の範囲内の責任のみを負う。
③損益の分配について、通常の組織形態では出資持分に応じての分配が一般的だが、LLPにおいては出資比率と異なる割合による分配が可能
④株式会社等と異なり取締役、監査役といった内部組織が不要であり、柔軟性のある組織運営が可能(LLPの出資者間において内部組織形態を決定することが可能)
⑤「パススルー課税」により、組織に対しては課税されず、構成員に対して課税される(=LLP自体には課税されず、利益分配がされない限り構成員も課税されない)

このような様々なメリットのある形態ですが、一方で、デメリットも存在します。
①あくまでLLPは組合(パートナーシップ)であり法人格を持たないため、事業認可の必要な事業を行う場合には、構成員自体が認可を取得して行う必要がある
②一般法人に比べて認知度が低く、有限責任であるため、信頼性が低い
③構成員自身が事業に参加する必要がある(出資のみは認められない)
④将来的な組織変更が不可能

このようなメリット・デメリットが存在する日本版LLPですが、インドでも2009年の予算案において、LLPの設立が可能となりました。

インドでのLLPの大きな特徴は、メリットの一つである「パススルー課税」が適用できず、通常の法人課税が行われるという点です。

これにより、日本のようなパススルーを用いた節税策等を適用することはできませんが、LLPに対する法人所得税率は30.9%(基本税率30%と基本税率に対する教育目的税3%)となり、一般法人に対する税率32.445%よりも低く、かつ、配当分配税が非課税となります。

その他、会社設立の簡易さ、組織運営の柔軟性、一般法人に比べてコンプライアンス上の要求が少ない(インドでは、会社運営に際し会社法に沿った厳格なコンプライアンス遵守が求められます)などのメリットがあるため、インドにおいては専門的な士業(会計士、会社秘書役等)や企業同士の共同での研究開発等のリスクの高い投資などの際にLLPが設立されるケースがあります。

また、2011年4月より外国直接投資(FDI:Foreign direct investment)によるLLPの設立も一部規制事業以外については可能となったことも、インドでのLLP設立を後押ししています。これにより、既存のFDIを受けた会社についても、政府の事前承認を受けることによりLLPへの変更が可能となりました。

しかし、海外からインドのLLPへ投資を行う際には、

・対外商業借入(ECB:External Commercial Borrowing)を行うことができない
・海外の機関投資家、VC(ベンチャーキャピタル)はインドLLPへ投資をすることができない
・諸外国のLLPはほぼパススルー課税となっているため、インドLLPより分配を受けた際の国際的二重課税問題(その他、租税条約の適用可否など)

といった諸問題もあるため、投資の際には事前に専門家を交えて十分検討をしておく必要があります。

インドLLPについては歴史も比較的浅いため、今後の法整備によって、より柔軟な活用が可能となることが期待されています。

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