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東京コンサルティンググループインド拠点の北岡 光里です!
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さて、今回は「インド最高裁 Hyatt 判決:固定場所PE認定の基準拡大と多国籍企業への税務影響」についてお話していこうと思います。
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インド最高裁 Hyatt 判決:固定場所PE認定の基準拡大と多国籍企業への税務影響
2025年7月24日、インド最高裁判所が Hyatt International Southwest Asia Ltd. を相手取った判決(Hyatt 判決)において、UAE所在の非居住者企業がインド国内のホテル運営関連契約(Strategic Oversight Services Agreement: SOSA)を通じて実質的な管理・統制を行っていたことが、恒久的施設 (Fixed Place PE) の認定に十分であると判断されました。以下、この判決の内容・意義・日系企業を含めた多国籍企業への影響について整理します。
判決の概要
- 判決対象となった企業(非居住者)は、UAEに所在し、インド国内のホテル会社とSOSAs契約を結び、ホテルの運営戦略・監督業務を負っていた。また、その契約期間は20年と長期であったこと、かつその外国企業の従業員がインド国内のホテル施設を定期的に訪れ、実地監督・品質管理・ブランド統一性の維持等、ホテルの核心部分(core functions)に関与していた点が重視された。
- 被告側は、固定のオフィスを所有・賃貸していないこと、専任のスタッフが常駐していないこと、契約上は「助言・監理(advisory/oversight)」に過ぎないとの主張をしたが、これらを最高裁は否定。専用のスペースや常駐スタッフがなくとも、業務実態における支配・コントロールがあれば PE の要件を満たすと判断した。
- また、PEとして認定された場合、インド国内で PE を通じて生じた収益(ホテルのサービス提供に関連する報酬等)はインドで課税対象となること。国際租税条約(この場合は India-UAE DTAA)の条項解釈において、「固定場所 (fixed place) PE」の定義が実務的な支配(control), 使用(disposal/use of premises),日常的関与・訪問の頻度・契約期間等の要因を総合的に勘案するとの基準が確立された。
意義と法理的ポイント
- 実質主義 (Substance over Form) の確認:形式上の契約内容だけでなく、実務上どのように支配・企業統治が行われているかに基づいて税務上の施設(PE)が認定されるという原則が改めて強調された。 contract が “supervisory/advisory” とされていても、その中身がstrategy + implementation + monitoring であれば PE とされる可能性がある。
- 「使う権利(right of disposal/use)」の要素:施設を専有するか否か、所有するか否かというより、施設または場所を業務のために使用できるか・その設備・スタッフ等をコントロールできるかが重要。共用施設・定期的な訪問があれば、それが固定場所 PE の要件を満たすこともあり得る。
- 継続性・定期的業務の関与:契約期間が長期であること、役員・従業員の定期的訪問や監督があることなど、断続的であっても継続性が認められる業務関与が PE の判定において重要な要素とされた。
- 契約上の助言業務だけでなく実務・実行を伴う役割が重視される:単なる助言(advice)にとどまらず、実際の運営、ブランド統制・品質管理など、業務の実行 (execution / implementation) が一定程度含まれていれば PE 認定の要因となる。
日系企業・多国籍企業への影響
Hyatt 判決が示したような PE 認定基準の拡大は、日系企業を含む外国企業にとって複数の重大なリスクと対応課題を生じさせます。
- まず、ホテル業やブランド展開、フランチャイズ、コンサルティング/管理契約など、形式的には「監督・アドバイス」の範じている契約でも、実態として「実務的統制」を伴っていたり従業員が定期的にインド施設で作業・監督をしていたりする場合、PE の認定対象になる可能性が高まる。
- PE が認定されると、その PE に帰属する所得(Revenue/報酬等)についてインドで所得税課税義務が発生し、双方向に税務報告義務・源泉徴収義務・契約書の内容見直し・利益配分や移転価格政策の対応などが必要になる。
- また、契約書や業務遂行の実態が過去に助言契約として処理されていても、将来実務監査や税務当局による調査で PE の有無が争われる可能性があるため、現行の契約・実行状態を精査しておくことが重要。
- 日系企業が持つブランド管理・品質監督・技術支援等の機能を提供する部門や子会社を通じて、従業員派遣・頻繁な出張・施設訪問がある場合など、これまでリスクが低いと思われていたモデルでも PE 認定のリスクが出てくる。
- 会計上も、PE に帰属する収益や費用を分離して認識する必要があり、移転価格ポリシーの精査・レビューが重要。PE 認定後の報告義務・申告義務が増え、過年度取引に遡って調査される可能性もある。
対策・推奨される対応
- 現在または過去の契約(SOSA/類似形態契約含む)を見直し、業務内容・実務上の作業/従業員の配置・施設の使用状況などを記録・証拠化しておく。
- 契約書において業務内容を明示し、「助言/監督のみ」「実務実行は含まない」と明確に規定する。ただし、実務実態が契約に反する役割を伴っていると、判決により形式を超えて実態が重視されるので注意。
- 日系企業の現地子会社、ブランド管理部門、品質保証チーム等がどの程度業務を行っているかを monitor し、PE の認定リスクがどこにあるかを把握する。
- 税務アドバイザーや会計士と連携し、India-UAE や他国との租税条約/DTAA の解釈・判例を踏まえて、適切な税務ポジションを検討する。
本日は以上になります。
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