インド・グルガオン駐在員の豊田です。
今回は、BSC(Balanced Score Card)についてお話ししたいと思います。
読者の皆様がグローバル事業を推進しようとする際に最も重要となってくるのは、将来の正しい戦略を設定しそれを達成する為の戦術について、組織全体の日次業務レベルにまで浸透させ、それらをPDCサイクルに従って改善し続けることです。
これを実現するためのツールとして、バランス・スコアカード(BSC:Balanced Score Card)を前回に引き続きご紹介します。今回は、2、BSC運用編をご紹介します。
BSCの運用において、最も重要な事は「絵に描いた餅」にしないということです。こういった戦略ツールは、経営上とても便利なツールではありますが、あくまでもツールであって、それを使いこなしてこそ意義のあるものとなります。あくまでも、BSCの最終目標は、社員一人一人の意識・行動を変えることです。意識が変わると行動が変わる、行動が変わると結果が変わる、是非とも、このことを意識してBSCを運用してください。
さて、前回1、基礎編において、BSCとは何か?ということについてはご説明しました。BSCによって企業戦略を可視化し、企業戦術を組織の末端まで浸透させることが出来ます。また、下記の様に構築ステップについても簡単にご説明しました。
(再掲載)
1、ビジョンと戦略の策定
2、戦略を通してビジョンを実現するための視点の洗い出し
3、戦略を通してビジョンを実現するために戦略マップを描き、各視点に戦略目標を設定する
4、それぞれの戦略目標を実現するために何がKey Factorとなっているのかを分析し、重要成功要因を洗い出す
5、これらの重要成功要因を「絵に描いた餅」にしないために業績評価指標を設定し、各業績評価指標に対し責任者を任命する
6、それぞれの業績評価指標に対し具体的数値目標を設定する
7、具体的数値目標を達成するための具体的なアクションプランを設定し、実行責任者を任命する
BSCの運用上もっとも重要な事は「絵に描いた餅」にしないことであることは、前述の通りですが、その為には具体性・現実性というキーワードが重要となってきます。ここで、サウスウエスト航空のBSCをサンプルとしてご紹介します。
戦略:効率的経営 |
戦略目標 |
重要成功 要因 |
業績評価指標 |
ターゲット (数値目標) |
財務の 視点 |
・利益性 ・低コスト ・売上拡大 |
・市場の評価 ・少ない機種 ・顧客の拡大 |
・株価 ・飛行機のリース、コスト ・1座席当り売上高 |
・30%アップ ・20%ダウン ・10%アップ |
顧客の 視点
|
・定刻離着陸 ・低価格 |
・スケジュール遵守 |
・定刻離着陸 ・顧客定着率 |
・30分以内 ・90%以上 |
業務 プロセスの 視点
|
・実稼働時間アップ |
・時間厳守 |
・定刻離着率 |
・90%以上 ・90%以上 |
人材の 視点 |
・地上クルーのチームワーク |
・従業員のモチベーション ・教育 |
・地上クルーの持ち株比率 ・地上クルーの教育訓練度 |
・第1年度70% ・第3年度90% ・第5年度100% ・年4回 |
(出所)Krieger,J.A.and Gregory,B.(2001)の資料に基づき作成
この例では、「効率経営」という戦略に基づいて、各業務指標にまで落とし込むことが出来ています。この業務指標を日次的に検証し続けることで、戦略達成に一歩近づくことができます。以上で、BSC運用編は終わりです。
Tokyo Consulting Firm
グルガオン駐在員
豊田 英孝