皆様、こんにちは、東京コンサルティングファーム・ムンバイ拠点の田本です。
本日は、インド会計基準における収益認識基準ついてお話を致します。
まず、本題に入る前にインド会計基準の前提を説明します。
インドにおける企業会計はインド勅許会計士協会(ICAI)の会計基準審議会が定める会計基準、および会社法に従って運用がされています。
会計基準については、インドの大部分の会社が適用しているインド会計基準(通称AS)又はインドGAAPと、ごくわずかではありますが、グローバルに展開しているインド大手企業が適用しているIFRSに収斂した新インド会計基準(通称Ind AS)が存在します。
Ind ASについては、インドにおけるIFRS導入への取り組みであり、アドプション(全面適用)ではなく、コンバージェンス(収斂)の立場を取っている点が特徴的です。
Ind ASについては、IFRSとの違いが小さいと言えるため、今回は、ASにおける収益認識基準について説明します。収益の認識については、AS9 Revenue Recognitionに詳細が記載されております。詳細は下記AS9よりご確認いただけます。
http://mca.gov.in/Ministry/pdf/AS9_16012018.pdf
基本的には、物品の販売(Sale of Goods)と役務提供(Rendering of Service)の2つに分けて、収益認識が記載されています。
まず、物品の販売の場合は、日本のように出荷基準、引渡基準、検収基準のような形で明確な概念の違いはないものの、AS9にて売主から買主に物品の所有権の移転に関する取引が重要な基準とされております。つまり、所有権の移転に関する取引を行う上で、どのようなリスクがあるのかという部分が重要視されるため、対象となる取引に関する契約書に規定される支払条件に影響を受けるという事が理解できます。
続いて、役務提供の場合は、下記の2つの手法が規定されています。
1,Proportionate completion method
工事進行基準と類似しておりますが、役務提供が長期間に及ぶ場合は、収益の認識基準について契約書に規定することによって、特定の期間に対して定額の基準で収益を認識する方法になります。
2,Complete service contract method
日本の実現主義の概念に似ておりますが、役務提供が完了した時点で収益を認識する方法になります。
上記のような形で、インドでは収益認識に関する一定のルールや基準はあるものの、取引先との契約書に規定される支払い条件や取引の性質に依存する部分が多いと言えます。
また、本日は説明を行いませんが、建設業の収益認識については、AS9ではなく、AS7(工事契約)に詳細が記載されています。
http://mca.gov.in/Ministry/pdf/AS7_16012018.pdf
建設業の収益認識基準にやや類似しているソフトウェア開発の収益認識基準については、AS7ではなく、AS9に準拠する形となり、長期間にわたるプロジェクトの場合は「Proportionate completion method」を検討する形になると言えます。いずれにしましても、契約書の支払い条件にも影響されますので、契約締結前に収益認識に関するディスカッションを行っておく必要があると言えます。
今週は以上となります。弊社ではインドGAAPにおける会計処理の実務上の留意点も踏まえたご相談をお受けする事が可能です。是非、お気軽にお問い合わせください。
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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔
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