
お世話になっております。
TCFタイの高橋です。
今週もタイの付加価値税(VAT)に関して、見ていきましょう。
■税額の計算方法
VATを算定する方法は、日本の消費税や他国のVATと同様に、以下の計算式で求めます。
納付するVAT=(売上に係るVAT)-(仕入に係るVAT)
下図では、B社はC社に対する売上に係るVATとして80を受け取り、A社からの仕入に係るVATを支払っています。この場合、歳入局へ納税するVATは差額の30となります。
ただし、仕入の際に支払ったVATの中に、売上VATから控除できない仕入VATがある点には注意が必要です。代表的なものは、以下の通りです(内国歳入法82条5項)。
タックスインボイスがない、もしくはその取引を証明できない仕入VAT
タックスインボイスの記載に誤りあるいは不備がある場合
交際費に関する仕入VAT
10人乗り以下のバス、乗用車の購入に係る仕入VAT、またはその自動車に関連
して購入する物品やサービスに対する仕入VAT
■非課税取引及び0%課税取引
また、VATについては、原則として、物品の売買、サービスの提供に対して課税されますが、例外として非課税取引が定められています(内国歳入法81条1項)。
[非課税となる物品]
・農産物、動物、食肉、飼料、畜産物、畜産用の薬品及び化学製品の販売
・新聞、雑誌、教科書の販売
[非課税となるサービス]
・教育機関のサービスの提供
・法定監査、法定弁護に関するサービスの提供
・医療機関のサービスの提供
・国内運輸業務
・不動産賃貸業
・宝くじ、切手、印紙の販売
[非課税となる輸入取引]
・EPZへ搬入された物品であって、関税法により輸入関税が免税されている物品
・関税率法により輸入税が免除されている物品
・再輸出のために税関で保管された輸入品で、再輸出時に輸入税が還付される
物品
[0%課税取引]
VATが0%課税となる取引は以下の通りです。
・物品の輸出
・航空機または船舶による国際輸送
・国外において利用されるサービスの提供
・保税倉庫間及び輸出加工区間の物品・サービスの提供(関税法に基づくもの)
Q:タイにおいてVATはサービスの提供が行われた場所で課税されるという原則がありますが、サービスの提供が行われた場所というのはどのように判断されるのでしょうか。
A:VATは原則として、物品の売買、サービスの提供が行われた場所で課税されます。
例えば、日本の居住者であるA社がタイの居住者であるB社にサービスの提供をし、この場合にサービスの提供地が日本である場合には、タイにおいてVATの納税は不要となります。
一方、日本の居住者であるA社がタイの居住者であるB社にサービスの提供をし、この場合にサービスの提供地がタイである場合には、タイにおいてVATの納税が必要となります(サービスの輸入にかかるVAT)。
実務上サービスの役務の提供が日本でされたのかタイでされたのか、争点のポイントとなるのは契約内容や出張の有無等です。しかし、税務調査の際には、タイにおける役務提供であるとして、VATの追徴を受けるケースがみられます。
VATの月次申告はPP30という書式でされますが、上記のサービスの輸入にかかる申告はPP30となります。
実務上は、特に親会社からの役務提供が行われた場合に、この申告をしておらず、税務調査の際に指摘を受けるケースが見受けられます。税務調査で指摘を受けた場合には、VATの納税と併せて、月利1.5%の利息が発生します。
サービスにかかるVATも通常のVAT(仕入VAT)同様に仕入税額控除として売上にかかるVAT(売上VAT)と相殺することが通常出来ます。従って、売上にかかるVATの相殺が出来る場合には、上記のPP36の申告をしてVATを支払っても、相殺が出来るため、この場合には実質コストにはなりません。
納税すべき売上VATがある場合には、取引実態、税務調査での指摘、利息の支払いリスクを考慮して申告をすることをお勧め致します。
弊社では、セミナー2か月に一度無料で行っておりますので、気になった方は是非一度お声がけ頂ければと思います。
以上、来週も引き続き、VATに関してみていきましょう。
高橋 周平