こんにちは
Tokyo Consulting Firmの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン・ベトナム進出のイロハ】
No.98< ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.8>
今回は、フィリピン・ベトナムにおける資本金について、要点をまとめていきます。
検討事項①:資本金の種類
<フィリピン>
フィリピンの資本金には、「授権資本金」、「引受資本金」及び「払込資本金」の3つの種類があります。
- 授権資本(AC: Authorized Capital)
授権資本とは、取締役会の権限で発行することができる限度額のことを言います。
日本でいう発行可能株式総数にあたるものです。 - 引受資本(SC: Subscribed Capital)
引受資本とは、実際に株式の引受契約が締結された資本の金額のことを言います。 - 払込資本(PC: Paid up Capital)
払込資本とは、引受契約のうち実際に払込(現物出資を含む)が行われた金額を言います。
財務諸表上における資本金額は払込資本金額を指します。
また、2019年2月の改正会社法により、株式会社に課せられていた会社設立時の資本要件である、授権資本の最低25%相当の株式を引き受け、引受株式の最低25%を払い込むという資本要件は撤廃されました。
しかし、引き続き増資の場面においては従来の25%の資本要件は依然として課せられています。
なお、会社設立後における資本金払込の期限はありません。
<ベトナム>
ベトナムでは、会社設立する際、ライセンスに「総投資額」と「資本金額」を記載し申請します。
総投資額とは、ベトナムに投資できる金額の総額となります。資本金額は、会社設立時に払い込む最初の自己資金です。
特徴的なのが、総投資額と資本金額の差額が、長期借入金の限度額とみなされ、かつこの記載された金額を超えた金額を投資することができないということです。
また、会社設立後、ERC(企業登記証明書)が発行された日から90日以内に資本金全額を払い込まなければなりません。
検討事項②:最低資本金
<フィリピン>
現地法人を設立する場合は、外資の出資比率が40%を超えるかどうか、また海外からの収益の割合によって「国内市場向け企業」と「輸出型企業」の2つの選択肢があり、それぞれ最低資本金の金額も異なります。
資本金の比率における、最低資本金額は以下の通りです。
- 外資40%以下:最低資本金額なし
- 外資40%超:原則20万USD以上
また、外資40%超の法人の場合であっても、物やサービスの輸出又は総売上の60%以上を占める海外売上が見込める企業は、外国投資法に基づき、輸出型企業(Export Enterprises)とみなされ、20万USDの最低資本金要件は適用されず、最低資本金額の制限はありません。
一方で外国企業の100%子会社(外資40%超)のフィリピン現地法人で、「国内市場向け企業」として事業を行なう際には、以下の条件によって払込資本金が異なります。
- 先端技術を使用せず、50人以上の直接雇用をしない場合、20万USD相当以上
- 先端技術を使用しているか、50人以上の直接雇用をする場合、10万USD相当以上
よって、外資40%以下の企業又は輸出型企業の最低払込資本金は、会社法では規制がありませんが、実務的にはこの金額で会社設立申請が許可されることはなく、最低でも20万ペソ程度は必要となってきます。
<ベトナム>
ベトナムでは、一部の業種を除いて最低資本金の規制はありません。
実務上は、業種にもよりますが、150万円程度は最低必要となってきます。
留意点としては、資金調達にあたって日本親会社からの一年超の長期借入の場合は、借入総額は総投資額と資本金額の差額内に限定されるため、借入額が上限に達した場合にはIRC(投資登録証明書)を変更し、総投資額を増額しなければなりません。
IRCを変更する際は、実務上資本金の割合が著しく低くなると、総投資額の増額が認められないこともあり、合理的な理由の説明が必要になります。
よって、設立時のIRC(投資登録証明書)申請する際に、資金調達を含め事業計画を立てておくことが重要です。
また、長期借入をする場合は、認可当局により承認された投資案件または生産計画・事業計画における借入期間、返済猶予期間、借入費用(利息、手数料など)が、中央銀行の発布した規定と合致していることを前提に金銭貸借契約を締結した後、中央銀行に対し、契約署名日から 30 日以内かつ借入金が送金される前に借入・返済を登録し、登録証を取得する必要があります。
中央銀行への登録には、通常1~2週間の時間を要し、その後は四半期ごとに中央銀行への報告義務も発生します。
一方で、1 年以内の短期借入は、IRCに記載された事業分野の運転資金に限定(設備投資目的は不可)されますが、金額の規制はなく、中央銀行への登録手続は不要です。
以上、フィリピンとベトナムにおける資本金の定義と最低資本金額のポイントになります。
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Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也
2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。