ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.3

税務

こんにちは
Tokyo Consulting Firmの大橋 聖也です。

【1分でわかるフィリピン・ベトナム進出のイロハ】

No.93< ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.3>

前回に続き、「フィリピンとベトナムの法制度の比較」についてお届けします。
今回は、海外子会社の配当に伴う税務についてです。

 

海外子会社から日本親会社への資金還流として、利益を出して配当をするケースがありますが、両国における子会社が利益を出すことによる税務メリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

 

検討事項①:法人税率

法人税率でみると、フィリピンは日本と比べ同程度の税率(30%)である為、大差はないものの、製造・IT業など優遇税制を受ける場合は4~6年間は免税、その後は5%特別税の恩恵があります。
また、今後は段階的に法人税率を最大20%まで下げる方向で審議されている為、将来的に法人税による節税メリットは拡がっていくと想定されます。

一方で、ベトナムは日本と比べて税率20%と明らかに低い為、日本で利益を出すよりもベトナム子会社で利益を出す方が、節税になります。
また、製造業やIT業など優遇税率が与えられるため、さらに法人税は低くなります。

  • 日本:約30%
  • フィリピン:30%
  • ベトナム:20%

 

検討事項②:最終源泉税率

多くの海外拠点では、現地子会社の留保利益から日本親会社に配当を出す際には、現地にて源泉税が課税されます。

フィリピンでは、配当に対する源泉税は30%となっており、日比租税条約(TTRA)を申請することにより、10%(or15%)の軽減税率を受けることができます。
ベトナムでは、現地子会社からの配当に伴う源泉税は無税となっています。

  • フィリピン:30%*租税条約適用により10%(or15%)
  • ベトナム:0%

*タイや中国は、10%

 

日本親会社が配当を受けるにあたって、フィリピンでは日比租税条約を適用した場合、法人税30%+源泉税10%となり、親会社で回収する際には合計40%の税金が課税されることになります。
一方のベトナムでは、法人税率20%(+源泉税0%)となるため、周辺国に比べて税務メリットは大きくなっています。

ちなみに、近隣のタイでは法人税率20%、源泉税10%となり、合計30%の税金が課税されます。

 

検討事項③:外国子会社配当益金不算入制度

日本の税務上、日本の親会社が25%以上を出資する海外子会社から配当を受け取った場合、95%は益金不算入となる制度があります。
つまり、配当に対する95%は課税対象外となり、残りの5%分のみ利益と扱われ、その利益に法人税が課税されることになります。

 

検討事項④:移転価格課税のリスク回避

フィリピンでは、2019年8月に移転価格調査に関するガイドラインが公表され、今後税務調査の一環として取締り強化されることが想定されます。
ベトナムでも2018年以降、移転価格に関する税務調査が本格化しており、赤字企業であっても多額の追徴課税を受けるケースが増えてきています。

 

よって、海外での税務リスクを考慮の上、親会社の利益を優先した価格設定やビジネススキームを見直し、海外子会社でも積極的に利益を出すことを検討する必要があります。

 

以上、日本親会社への配当に関するフィリピンとベトナムの比較になります。

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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