フィリピン労働法(基礎編):フィリピンの労働時間と割増賃金は?

税務

 

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

 

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.83<フィリピン労働法(基礎編):フィリピンの労働時間と割増賃金は?>

今回はフィリピン労働法における労働時間と割増賃金についてです。

 

フィリピンでは、1日の労働時間は8時間を超えることはできず、企業は60分以上の食事休憩を与えなければなりません。(就労時間中の短い休憩時間は労働時間に含まれます。)
また、全ての企業は利益目的であるかどうかに関わらず、従業員が6日間連続で勤務した場合は、必ず連続で24時間以上の休息時間(Rest Period)を与えなければならなりません。

労働法第86条には、午後10時から午前6時までの間に勤務した従業員は、夜間勤務手当として10%以上の割増賃金を受けることができます。

 

次に、それぞれの時間外労働については、労働法第87条に下記のような規定があります。
「8時間を超える労働には、通常の賃金に加えて少なくとも25%の割増を支給する」とあり、
所定休日や祝祭日の労働については、「最初の8時間は“割増した賃金”を払い、8時間を超える労働には少なくとも30%の割増を支給する」と決められています。

 

また、労働法第93条では、所定休日の最初の8時間に対する割増した賃金について以下の規定があります。
①所定休日に労働した場合、30%割増支給
②所定休日と特別祝祭日が重なった日に労働した場合、50%割増支給
(*祝祭日が一般祝祭日(Regular Holiday)の場合は、倍額(200%)支給の規定があり、200%×30%=260%となります。)
祝祭日についてフィリピンでは、政府が定めた一般祝祭日(Regular Holiday)と特別祝祭日(Special No-working day:SNWD)というものがあります。
一般祝祭日とは、独立記念日やクリスマス等、毎年訪れる祝祭日のことで、従業員は出勤せずとも1日分の賃金に相当する金額が支給されます。

 

一方で、特別祝祭日とは、フィリピン国にとって歴史的あるいは宗教的に重要な事柄にちなんだ日として制定された祝祭日のことで、従業員は出勤する必要はなく、また企業内の就業規則等に特別の規定が無ければ支給する必要もありません。
祝祭日においては、Regular Holidayに出勤した場合は賃金の倍額(200%)、SNWDに出勤した場合は賃金の30%割増(130%)の金額が支給されます。
割増賃金をまとめると下記の通りです。
・通常の出勤日に時間外勤務した場合:125%
・SNDWで出勤し勤務した場合:130%(8時間超は、130%×30%=169%)
・所定休日、かつSNWDで出勤した場合:150%(8時間超は、150%×30%=195%)
・Regular Holidayに出勤した場合:200%(8時間超は、200%×30%=260%)
・所定休日、かつRegular Holidayで出勤した場合:260%(8時間超は、260%×30%=338%)

 

なお、早退などによって他の日の超過勤務と相殺することは出来ず、他の日に休暇を与えることで割増賃金の支払いを免除されるはありません。

企業は従業員の休息日を定めることが出来ますが、従業員の宗教的な習慣を考慮・尊重し、週間の休息日を定めることを推奨されています。

 

仮に、従業員の仕事の性質によって勤務日・休息日を予め定めることができないときは、日曜日と祝日勤務の際には通常の勤務日の賃金の30%以上の割増賃金を支払うことになります。

 

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今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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