ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.4

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こんにちは
Tokyo Consulting Firmの大橋 聖也です。

 

【1分でわかるフィリピン・ベトナム進出のイロハ】

No.94< ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.4>

前回に続き、「フィリピンとベトナムの法制度の比較」についてお届けします。
今回は、個人所得税(PIT:Personal Income Tax)についてです。

フィリピン又はベトナムで就労する日本人駐在員に対する個人所得税に関して要点をまとめていきます。

 

検討事項①:課税対象範囲・居住性

フィリピンでは、国籍や居住性によって課税対象範囲や税率は異なりますが、日本人駐在員の場合、フィリピンで税金を納めるべき対象となるのは「フィリピン国内源泉所得」のみとなります。
フィリピン国内源泉所得とは、フィリピンでの労働の対価として得られる所得のことを指します。

よって、駐在員に対して日本の親会社が日本国内の駐在員個人の銀行口座に給料を振り込んだ場合でも、フィリピンでの労働の対価として支払われているものである限りフィリピン国内源泉所得となる点を留意が必要です。

税務上、居住性の判断は、フィリピンでの勤務期間や目的等により契約等でフィリピンでの勤務期間が1年以上であることが明らかな場合、その駐在員はフィリピンの居住者であるとして取り扱われることになります。

また、非居住者の場合であっても、暦年180日間を超えて滞在する場合は同様の課税対象となります。

 

ベトナムでは、以下のいずれかを満たした場合に居住性が有るとみなされ、所得の受領地に関わらず「全世界所得」に対して課税されます。

  1. 暦年(1月1日~12月31日)でベトナムに183日以上滞在している。
  2. 初めてベトナムに入国した日から12ヵ月以内でベトナムに183日以上滞在している。
  3. 課税年度内で183日以上の賃貸契約を有している(ただし、ベトナム国外の税務局発行の居住者証明書を有する場合は非居住者となる)。

 

検討事項②:税率

フィリピン・ベトナム共に、日本と同様に累進税率が適用されます。

フィリピンでは、2018年の税制改正で課税テーブルの大幅な改定がり、250,000phpまで免税、20%(250,000php超)~35%(8,000,000php)の累進課税となっています。
ベトナムでは、5%(60,000,000VDN以下)~35%(960,000,000VND超)の累進課税となります。

 

検討事項③:申告と納税

フィリピンでは、毎月の給与所得に課税され、翌月10日までに申告納付が必要となります。
年次確定申告では、フィリピンでの労働の対価として日本で支払われる給与・賞与を含め、暦年末から105日以内に申告納付が必要となります。

ベトナムでは、四半期又は月次での申告納付が必要であり、納付期限は四半期の場合は四半期末から30日以内、月次の場合は月末から20日以内となっています。

月次申告納税は、給与支払元のベトナム法人の前年売上高が500億VND超、かつ納税者の月次源泉徴収額が5000万VND以上の場合に適用され、そうでない場合及び外国法人からの支払分は四半期申告納税となります。
年次の確定申告では、四半期又は月次での仮納付額との差額を、暦年末から90日以内での申告納付が必要となります。

また、ベトナムでは、暦年でのベトナム滞在日数は183日未満であるが、入国した初日から12ヵ月間でベトナムに183日以上滞在している場合、赴任初年度のみ課税期間が暦年ではなく、初年度課税期間は入国した初日から12ヵ月間となるケースがある点に留意が必要です。
2年目以降の課税期間は暦年となり、2年目で初年度にすでに納税した部分を清算します。

 

検討事項④:控除項目

フィリピンでは、De Minimis(少額非課税手当)や年間90,000phpの非課税項目がある一方、2018年より基礎控除・扶養控除は廃止されています。

ベトナムでは、基礎控除は月9,000,000 VND 、扶養控除は被扶養者一人当たり月3,600,000 VND の控除が可能です。
*扶養控除については自動的に認められるわけではないことから、納税者は適格扶養親族を登録するために税務当局へ根拠となる書類を提出です。

 

フィリピンでは、現時点では税務調査の際など個人所得税が調査項目となり指摘を受けることはほとんどありませんが、今後、中国人など不法就労者の問題などを背景に税務調査の一環として取締り強化されることが想定されます。

ベトナムでは、すでに税務調査の際に駐在員の個人所得税への調査や指摘が本格化しており、多額の追徴課税を受けるケースが増えてきており、取扱いに十分検討が必要になります。

 

以上、日本人駐在員の個人所得税に関するフィリピンとベトナムの比較になります。
今週もどうぞよろしくお願いします。

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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