こんにちは
Tokyo Consulting Firmの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン・ベトナム進出のイロハ】
No.96< ASEAN成長率トップクラス!フィリピンとベトナムの法制度の違いとは?!Part.6>
今回は、海外子会社における税務調査についてです。
近年、フィリピン・ベトナム両国で、外資誘致を目的に法人税などの免税や軽減税率といった優遇措置を与えている一方で、現地では税収確保を目的とした日系企業に対する税務調査が頻繫に実施されています。
また、税務調査時には指摘事項に対する根拠が不透明、かつ税務担当官により解釈が異なったり、細かい書類保管や形式不備などによって、予期せぬ多額の追徴課税や延滞税等のペナルティーを課されるケースが増えています。
税務調査における要点をまとめていきます。
検討事項①:調査対象企業
<フィリピン>
税務署は、どの納税者を税務調査対象にするか選定する権限が与えられており、現地法人・支店・駐在員事務所においても税務調査の対象となります。
優先的に税務調査の対象になる企業は以下のような場合です。
- 電子申告を義務付けられているが利用していない
- 優遇税制が適用されている
- 関係会社のみに対して売上計上している
- アルファリスト、在庫リスト等の提出が義務付けられている情報を提出していない
<ベトナム>
税務署は、どの納税者を税務調査対象にするか選定する権限が与えられており、個人事業主・有限責任会社・株式会社・駐在員事務所においても税務調査の対象となります。
優先的に税務調査の対象になる企業は以下のような場合です。
- 長年赤字が続き、法人税を支払っていない
- 優遇税制が適用されている
- 申告や支払いの遅延、税務額の滞納、税務申告の修正
- 関係会社間との取引がある
- 海外駐在員や長期出張者がいる
両国ともに、VAT還付・閉鎖などの手続きする際には同様に税務調査が強制的に入ることになります。
検討事項②:対象税目
<フィリピン>
対象税目は、全ての国税が対象となります。
一方で、地方税である事業税・固定資産税などは対象外となります。
<ベトナム>
対象税目は、全ての国税が対象となります。
ベトナムでは国税・地方税という区分がない為、すべて国税扱いとなります。
実務上、フィリピンでは駐在員の個人所得税に対する調査はほとんど実施されていない一方で、ベトナムでは駐在員への給与や経費に関して会社規定や雇用契約などと突合させたり、事業との関連性・損金算入要件の必要書類など厳しく調査がされます。
検討事項③:対象期間
<フィリピン>
税務署が税務調査を行うことのできる期間は、「実際に申告を行った日」、または「申告期日」のどちらか遅い方から3年以内と定められています。
これを超えると、税務署が発行する公式な通知書が発行できないと明記されていますが、納税者に意図的な不正・脱税行為が認められる場合には、不正・脱法行為が発見されてから遡って10年間を税務調査の対象期間とすることが可能となっています。
<ベトナム>
税務署が税務調査を行うことができる期間は、特段決まっていません。
通常は、設立時から税務調査の開始時期まで、その後は直近の税務調査以降の期間が対象となり、過去の税務調査期間まで遡ることは極めて稀になります。
検討事項④:税務調査の頻度
<フィリピン>
税務署の調査権限が原則3年という事もあり、一般的には設立から4期目以降の企業が対象となります。
その後は、3年に一度の頻度が多いですが、企業によっては毎年のように税務調査が入ったり、進出後5年以上経っても入っていないケースがあります。
<ベトナム>
一般的には、3~5年に一度の頻度で税務調査が実施されます。
フィリピン同様に、企業によっては毎年のように税務調査が入ったり、進出後5年以上経っても入っていないケースがあります。
前述した通り、ベトナムでは調査権限による年数がない為、過去に税務調査が実施されていない場合、設立時から遡って税務調査の対象となる点、留意が必要です。
以上、フィリピンとベトナムにおける税務調査の比較になります。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也
2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。