ビザが取れない期間の所得税申告…どうすれば?②

税務

いつもお世話になっております。
東京コンサルティングファーム・マニラ支店の早川でございます。

前回に引き続き、さまざまな事情でビザが取れない期間でも就労をしなければならない方の税務申告についてお話してまいります。

 

前回の記事にて、①就労ビザ取得義務②所得税申告義務の2つある中で、①が満たせない状態であるならば、せめて②は満たすという選択をされることを推奨させていただきました。
ではそのような決断をする場合、一般的にビザが取れている外国人と同じ税務申告内容で良いのか、についてお話してまいりましょう。

 

前回もお話しましたが、前提としてフィリピンで就労する外国人のための基本的な所得税申告についておさらいします。

  • 毎月の給与源泉税(Withholding Compensation)の控除及び会社(雇用主)を通しての納付申告(Form 1601Cでの申告)
  • 会社による、給与の年末調整及びForm 2316という源泉徴収票の作成・申告
  • 毎年の個人所得税確定申告(毎月の給与以外の所得がある場合。例:日本本社からの給与)(Form1700での申告)

この三つが基本です。
これらの税率は、フィリピンに居住している外国人(居住外国人)として、フィリピン国内源泉所得(フィリピンでの就労に対して得た対価)に対して0~35%の累進課税が課せられます。

 

さて、一方でこのようなご質問を頂きます。

<ご質問①>

ビザを取得していない訳なので、「非居住」外国人としての扱いをするべきではないでしょうか。そうなると、税率は25%にならないでしょうか。

 

<ご質問②>

ビザを取得していない状態のため、日本本社から本人に給与が全額払われ、そのうちの一部はフィリピン法人から「出向費用」として支払っています。
そのため、「非居住」外国人への報酬の支払いとして、税率は25%になるのではないでしょうか。
よって申告する書類も、1601Cではなく1601Fではないでしょうか。

 

<回答>

確かに、非居住者外国人に対しては25%という税率も定められているのですが、そちらが適用されるか、一般的な累進課税を使うか、というのを判断するのは、「ビザを取得しているか否か」でも、「給与か出向費用か」でもありません。

1年(1~12月)のうち180日以上滞在しているか否か(厳密にいえば180日以上滞在する意思があるか否か)」です。

※累進課税0~35%の根拠法:NIRC Sec. 25 (A)(1)1

こちらにははっきりと、「非居住外国人個人で、(カレンダーイヤーの)年のうち合計で180日上滞在している者は、『フィリピンにてビジネスをしている非居住外国人』としてみなす」
つまりこちらの累進課税が適用される旨が記載されており、『ビザの有無』『出向費用か給与か』という事は一切議論されておりません。

※25%の根拠法:NIRC Sec. 25 (A)(B)

 

ただ、出向費用として支払っている体ではあっても、その額は実際の給与額をベースにされているのではないでしょうか。

万が一会社に税務調査が入って、25%で申告し続けている状態を不審に思われたとしましょう。
その申告額のベースとなる額が給与であると分かれば、税務局としては給与としてみなし、さらにその方が180日以上いらっしゃれば、累進課税を利用するように指摘してくるでしょう。
そこに差額があれば、ペナルティも支払うことになります。

また、出向費用として払うことで、日本法人に対する所得だと思われる可能性もございます。
その場合、個人所得税ではなくファイナル源泉税がかかることになります。

最悪、ファイナル源泉税と個人所得税の二重での指摘となってしまう可能性もありますので、素直に給与として累進課税を適用して計算されるのが利口と言えるでしょう。

 

まとめますと、180日以上滞在の意思があるのであれば、ビザがとれていようといまいと、それが出向費用という名目であろうとなかろうと、累進課税を利用して申告されることを推奨いたします。

ご参考になれば幸いです。

 

東京コンサルティングファーム・マニラ拠点
早川 桃代

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