インドの移転価格税制(スクリーニング)

税務

みなさん、どうもこんにちは。増田です。
あっという間に、今年も最後の月を迎えました。今回は11月の税務申告期限(移転価格対象企業のみ)も終わりましたので、移転価格についてまとめてみました。

通常、インドの申告期限は3月末で決算を〆て、その半年後の9月末までに税務申告を行う必要があります。ただし、海外のグループ会社との取引を有するインド企業については、3CEB(移転価格証明書)という書類を毎決算期に提出する必要がります。この3CEBを作成・提出する企業については、申告期限が通常の9月末から2ヶ月後の11月末まで延長されます。ほとんどの日系インド企業は何かしらの海外グループ間取引を有しており、この3CEBを作成・提出する必要があるため、実質的な申告期限は11月末となっています。

この移転価格税制については、以前のブログでも概要を記載しましたが、今回はまとめとして、移転価格のメイン作業でもある「スクリーニング」について記載したいと思います。

移転価格の検証は非常に複雑になっており、その検証プロセスの多くに必ずといっていいほど、「データベース」が必要となってきます。移転価格の重要なポイントは、「当社の取引が第三者との取引価格と同じである」ということが証明できるかどうか?であり、当社では、「Capitaline」というデータベースソフトを使用して、この検証作業を行っています。
このデータベースソフトというのは、企業に関する基本情報、財務情報などの様々な情報を集約したデータベースであり、世界中の企業情報が入っているBurearu Van Dajk(ビューロー ヴァン ダイク)社が提供するものや、地域ごと、国ごとのデータベースなど様々なものがあります。当社が使用している「Capitaline」は、インドにおいて最も有名なデータベースソフトの一つであり、インド当局も使用しているものとなります。税務当局側は、企業から提出された税務申告書等から、我々が知りえない情報を多く有していますが、いわゆる「シークレットコンパラブル(当局しか知りえない情報を利用することは、納税者側からすると著しく不公平)」の問題から、まず初期段階の検証においては、納税者側と同じようにデータベースソフトを利用した検証を行っているものと考えられます。

そのため、移転価格の検証にはこのデータベースの使用が必須となりますが、次に問題となるのが、「データベースを利用して、どの会社のデータを使用したか(=比較対象となる企業の選定)」であり、ここが非常に税務当局より指摘を受けやすいポイントとなります。特にインドにおいては、他国に比べ移転価格に関する規制が厳格であるため、この根拠付けがしっかりと行われていない場合、すぐに当局より「更正」と言われてしまいます。

以下、スクリーニング(比較対象企業の選定プロセス)のポイントを記載していきます。
●対象年度の選定
対象企業となりうる企業があったとしても、データベースに古い情報しかない場合には、それを使用することはできません。通常は、直近又は前年度など新しいデータのみ使用する形となります。
●利益が-(マイナス)の会社、著しく取引の少ない会社
利益がマイナス(利益率がマイナス)である場合、通常はその会社を比較対象とすることが難しく、対象企業のリストから除外されます。また、ケースによっては売上や利益の額を一定額以上に限定することもあります。
●全体の売上高の中に占める特定のSTO(Sales turnover)の割合
例えば、商品売買についての他社データを取得したい場合、他社データの中に占める商品売買の売上高が大きくない場合(=他のビジネスの割合が大きい場合)、そのデータを使用して比較することが難しく、比較対象企業の収入全体に対する検証対象としたい収入額の割合が高い企業を選定することになります。
●ビジネス内容の検証
最初の段階である程度業種を絞りますが、最終的に、その会社のビジネス内容を検証(ここからは、データベースに情報が無い場合はHPなどを利用)し、データの比較可能性を高める作業を行います。最終的に選出された企業が数社であれば問題ありませんが、数十社、数百社となると、この作業だけで非常に時間がかかるものとなります。

その他、色々なスクリーニング手法がありますが、最終的なスクリーニングの結果、選出された企業の平均利益率を算出して、当社の利益率と比較する形になります。この比較が近似値であればOK、もし乖離が大きければそれは妥当でない、という結論になるため、当然、企業側は近似値に収まるように、しっかりとしたロジックを構築する必要があります。

移転価格導入初年度については、3CEB、ドキュメント作成にかなりの時間を要し、骨の折れる作業となりますが……。一度しっかりとしたロジックを固めておくと、次年度以降については、データベースでの比較対象企業情報のアップデートが主な作業となり、大分楽にはなってきます。

特にインド移転価格については厳しくなる一方で、今後の日系企業の取引拡大に伴い、リスクも増えるばかりとなります。そのため、早い段階でのしっかりとした準備、いざというときに備えてのドキュメント(文書化)がリスク低減のためには有効です。

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