インドの自動車保険

インドの交通状況はまさにカオスである。左折優先、歩行者優先といったルールは全くなく、「我先に」「前へ前へ」がインドでのルールである。何度となく、乗る車が事故に合いそうになったことはあるが、インド人のあうんの呼吸があるのか、絶妙なタイミングでそれぞれの車がミリ単位で隙間をすり抜けていく。

 

そんなインド、自動車事故も絶えないだろうが、気になるのは自動車保険事情である。

路上では、事故を起こした車同士、運転手が口げんかをし、警察は呼ばずお互い散々怒鳴り合った後、それぞれ気がすんだのかそのまま現場を去っていく光景は何度となく見ている。

そんなインドで自動車保険は存在するのか。

 

もちろんインドにも自動車保険は存在する。

 

ただ日本と違うところは「100%被害事故であっても、相手からは事故に対する金銭は一切受け取ることはできず、すべて自己で負担しなければならない」ということ。そのための自動車保険ということだ。(もちろん、事故を起こした相手を訴えることは可能だが、インドの裁判は何年もかかるので、大した事故でなければ訴えることもほぼない。)

 

先日、保険会社の方にお会いしたので、その辺の事情をお聞きする機会があったのだが、インドでは

「自動車事故を起こしたら、相手の介抱はせず、真っ先に逃げろ」

と言われているらしい。

なぜ、逃げるか。

それは事故を起こした張本人は道を歩いていた観衆達に袋叩きにされるからだという。

事故を起こした後の自分の身を守るために、「まず逃げろ」ということだ。その場から逃げた後、24時間以内に警察に事故の説明に行けば事は収まるという。

 

日本であれば、まず相手の介抱、警察・救急車の手配を行わなければならないところを全て放棄するところには非常に驚いた。確かにインド人は知らない人に対しても非常に協力的な民族性があるので、周りの観衆がけがをした人に対しては動いてくれるのかもしれないが、自分が事故を起こし、怪我をしている相手に対して一切責任を取らないというのは、理解しづらい。

が、自分の非を認めることが苦手な人が多いインドでは、ある意味あり得るのかもしれないと少し納得いく話でもあった。

 

たしかにインドは「完璧でない自分も受け入れてもらうのは当たり前。ただ完璧でない相手のことも寛容に受け入れる」文化がある。(例えば大遅刻をしても謝らないが、逆に自分が遅刻をされた時も全く気にしない…など。)事故を起こしても責任はとらないが、逆に事故を起こされたら自分で対処する、と言うのはそれもインドの文化の一部であるのかもしれない。

 

文化によって、保険のあり方も変わる。非常に興味深い話である。

 

ムンバイ事務所駐在員 鈴木理恵

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