移転価格スタディ上の留意点

税務

みなさん、どうもこんにちは。増田です。
今、インドの休暇を利用して、トルコに来ています。
休み中での滞在なので、2泊3日と短い期間ではありますが、明日、明後日とトルコの日系企業を訪問し、色々と情報収集してきたいと思います。

さて、今回は移転価格税制のスタディ(検証)を行う際の実務上留意点を書いてみたいと思います。
移転価格税制というのは、今や海外子会社を持つ日系企業であれば必ずといっていいほど関わってくる税制で、税理士試験などでも必ず勉強する必要がある項目となっています。
しかし、条文、解説書を見ても「実際にじゃあどうすればいいのか?」という事はあまり書かれておらず、税理士の試験などでも、ほとんど目にかかることはありませんでした。

移転価格の検証の一番のポイント(もちろん、ケースバイケースではありますが……)は、「経済分析」と言われる、一般に外部データベースなどを使用して、他社の財務情報(利益率など)と当社のものと比較するという業務であり、実務ではこれに時間がかかり、また、税務当局から最も指摘されやすい個所でもあるため、そのワークについてはどの本でも明確には解説されておらず、実務でやってみないと分からない、という部分です。

インドの場合は、海外グループ会社(資本関係が26%以上など一定の要件あり)との取引がある場合に、必ず移転価格スタディ(検証)を行う必要があります。なぜならば、インドでは毎年必ず移転価格に関する会計士の証明書(Form 3CEB)を税務当局に提出する必要があるからで、更に、年間の移転価格の対象取引の合計が1,000万Rs以上である場合、スタディ結果をまとめた「移転価格ドキュメント」を作成・保管しておかなければいけません。
税務当局より移転価格ドキュメント提出の依頼があり、30日以内に提出が出来ない場合、取引価格の2%という重いペナルティが科せられます。

弊社において、年度末になると多くの移転価格業務が発生し、その際には必ず外部のデータベースソフトを使うことになります。弊社が使用しているソフトは、インド税務当局も使用していると言われているもので、最低限、移転価格スタディを行う際にはこのような準備が必要になります。

移転価格の検証プロセスを大まかに解説すると、概ね以下のような流れになります。

①移転価格の対象範囲と対象取引の判定
企業グループの資本構成等の全体像を把握し、今回分析を行うべき対象取引をピックアップします。世界規模で活動している企業からすると、膨大な範囲の移転価格検証が税務当局より求められることになります。
よくお客様から言われるのが、「日本本社の視点からすると、インドとの取引規模が全体の海外関係会社間取引の中でまだ少ないのに、なぜコストをかけて移転価格の分析等をしなければいけないのか?」という事です。(こればかりは、インドの法律上、とご説明するしか無いのですが……)
日本とインドの移転価格を比較すると、インドの方が圧倒的に指摘件数が多く、数千万ルピー単位の取引ですぐに税務当局よりNoticeが届く、という状況であるため、他の国と同じ感覚ではインドの移転価格対応は難しいと考えられます。

②機能・リスク分析
移転価格対象取引に対して、取引当事者それぞれが有する取引機能・リスクを分析し、どのような業態が比較対象となるかを確認します。これが無いと、そもそもどの業種(業態)の企業と当社を比較すればいいのか分からないためです。

③移転価格算定方法の選定
各国の税法で定められた移転価格検証方法のうち、どの方法を採用すべきか、上記②の分析を基に決定します。移転価格算定方法は、OECDにより指針として「独立価格比準法」「再販売価格基準法」「原価基準法」「利益法(利益分割法・取引単位営業利益法)」などといった方法が定められており、各国の税法により、どの方法を優先的に採用すべきか(又はどの方法でもいい)、というようなことが決められています。

④経済分析
上記③で選定した方法に基づき、比較の対象となる会社をデータベースなどから選定し、比較(基本的には利益率の比較となる)をします。特にこのワークでは、選択した会社が本当に比較対象として成り立つかを1件1件検証していく必要があるため、場合によっては数百社を一個一個、HP等で調べていかなければいけないこともあります。

……と、なかなかこの説明でも分かりづらいと思うのですが、特に、この移転価格業務については国際税務の花形(?)と言われており、実際に行ってみないとわからない事が多々あります(ただ、税理士の中でも限られた方しか移転価格業務に携わる事が無いのが現状ですが)。
企業の海外進出が進むにあたり、この移転価格業務の需要も増えてくることかと思います。私自身も、税理士として、しっかり企業側に対してこのリスクを伝えていき、企業側が無益な更正税額を払う必要が無いようサポートしていきたいと思っています。

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