インド法人から親会社に支払われる駐在員給与の返済について

 

皆さん、こんにちは。
チェンナイ駐在員の中村です。

 

本日は、昨年10月頃にチェンナイで話題になった駐在員の方の給与にまつわる税務署からの指摘についてご紹介します。

 

近年、外国にある親会社がインド法人に出向している駐在員給与を一時負担し、その後インド法人が親会社に対して弁済する際、駐在員によるインド法人への「役務提供に対する料金(以下、FTS: Fees for Technical Services)」とみなされ、インド法人による源泉徴収・納税を行うべきかどうかがインド税務当局と外資系企業の間で争点となっていました。
2018年2月、チェンナイの某日系家電メーカーのインド法人は、所得税控訴裁判所(以下、ITAT: Income Tax Appellate Tribunal)での判決により、上記のスキームによる駐在員給与の弁済に対し、FTSによる源泉徴収を支払うよう命じられています。

 

<背景>
・親会社より日本人駐在員がインド法人に出向中
・駐在員給与は親会社から当人に支払われ、インド法人に対して経費として請求されている

 

<争点>
今回のケースにて紛争解決パネル(DRP: Dispute Resolution Panel ※ITATの前にまず申し立てを行う機関)は、以下のような見解を表明しています。

1. 駐在者が技術職又は管理職に従事しており、最終的なレポーティングラインが日本の親会社であったため、最終的な責任は親会社にあった

2. 出向した駐在員はインド法人独自の判断で異動ができず、将来的には親会社に帰任する

3. 出向した駐在員は親会社グループ会社の企業方針やルールをインド法人にレクチャーする目的があり、継続してインド法人に在籍する必要がない
4.駐在員によって提供された技術的ノウハウ・経験・サービスが実質的にインド法人が“獲得した”ものとみなされる

 

これらのポイントにより、インド法人が親会社へ支払った給与返済額は、親会社が「役務提供に対する料金(FTS)」の受け取りに相当すると判断しました。
これを受けてITATは上記の見解を支持し、また被告側よりインド法人から親会社に支払われた金額が会社経費(給与)か、技術提供に対する料金(FTS)に相当するかを示す証拠が挙げられなかったため、インド法人に源泉徴収義務がある判決を下しました。

 

しかし一方で、デリーやムンバイにある他の外資系企業では、ITATより効力のある高等裁判所の判決により、同様のスキーム下において源泉徴収の義務はないと判断したケースもあります。インド法人から親会社に支払われる経費(給与)には何ら経済的活動が発生していないことがその理由として挙げられています。

 

税務局より上記のような指摘が入った場合、弊社会計士の見解としましてもデリー・ムンバイ高等裁判所が出した、源泉徴収義務は無いとの判決を支持しますが、地域によっては引き続き税務局より指摘を受ける可能性は否めない為、駐在員に対する給与負担については十分リスク検討された上で派遣される事をお勧めいたします。

 

本日は以上です。

 

 

 

 

 

Tokyo Consulting Firm Private Limited
チェンナイマネージャー
中村 匠吾(なかむら しょうご)

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