インドにおけるPEリスクの傾向とその対策について

税務

皆様、こんにちは、
Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)です。

本日はインドにおけるインドにおけるPEリスクの傾向とその対策についてについてみていきます。

 

PEとはPermanent Establishmentの略称であり、恒久的施設を意味します。

PE 認定された場合、法的・制度的な形態にかかわらず、税務上はインドにおいて課税主体があるとみなされ、法人税の申告義務が生じます。
従って、PEというワードはインドにおける税務リスクを考える上で頻出する単語となっています。

 

まず最初に、PEの一般的な分類について簡単に見ていきます。

  1. 固定的PE‥非居住者が全てあるいは一部の事業を営む事業の固定的な場所(例)工場、事務所、支店等

下記のような条件を満たす場合は固定的PEが形成されます。

A. 事業の場所がある
B. 企業はその事業を自由に使える
C. その事業の場所が固定されている
D. 事業の固定的施設を通じて企業の事業活動が全てあるいは一部実施されている

固定的PEでは、収益性の有無によってPEが形成されているかの判断を行います。

1.1. 準備的・付属的なサービス‥PEを形成しない
1.2. 主たる収益活動‥PEを形成する

 

2. 代理人PE
2.1. 独立代理人‥PEを形成しない
2.2. 従属代理人‥PEを形成する

独立代理人の要件は以下の通りである。下記のような条件を満たさない場合、従属代理人となります。

A. 経済的に独立している
B. 法的に独立している
C. プリンシパルの利益のために活動する際、事業の運営の過程に即して活動する。

 

3.  据付PE
3.1. ビル、建設、据付、組立プロジェクト‥活動が6ヶ月継続する場合、PEを形成する。

 

4. 管理・監督PE
4.1. ビル、建設、据付、組立プロジェクト‥活動が6ヶ月継続する場合、PEを形成する。

 

上記の中で、2つ目の代理人PEという概念はリスクの高まりが話題になっています。

この背景には、日本がMLI(BEPS 防止措置実施条約)の対象としている租税条約の相手国のうち、インドが新たに同条約の批准書をOECDに寄託したことにより、日本とインドの間の租税条約においては、2019年10月1日からMLIが適用された事が大きな要因です。

 

これにより、日本とインドの間で、PEの範囲が拡大することとなりました。

具体的には、「代理人が契約を締結する権限を有し、これを反復して行使する場合や、契約の締結に繋がる主要な役割を反復して果たす場合、および外国企業の委託者により契約に重要な変更などが加えられない場合」においても、外国企業はPEを形成するとみなされる可能性が高くなりました。

 

また、日系企業がPEリスクに悩まれるケースは3つあります。

 

A. マーケティングサポート

日本の親会社とインドの子会社は別法人ではありますが、実務上として、インド子会社の駐在員が親会社の代わりに顧客との窓口となり電話やメール対応を行い、結果的に日本親会社の製品やサービスの販路拡大のサポートを行っていることは珍しくありません。

しかしながら、上記で述べた代理人PEリスクを踏まえると、今後は親会社と子会社間でのコミッション手数料やマーケティングサポートに基づく契約等においても、代理人PE認定につながる可能性が高くなるため、注意が必要です。

留意点としては、本社とインド企業との取引においては、親会社の代わりに注文を受け、契約書の締結や修正を行ってはいけないため、日本本社とインド企業との間で契約の締結を行うようにする。

 

B. 駐在員派遣

日本本社から子会社に出向する駐在員の活動内容が、出向元である日本本社がインド企業へのサービス提供を補助しているとみなされ、かつその内容が出向契約書に記載されているとみなされることによって、日本本社がインドにおいてPEを形成されているとみなされます。

ここでは、駐在員にとって誰が真の雇用者であるかという点が重要な判断基準となります。
そのため、インド企業が駐在員の真の雇用者であり、駐在員の活動内容は日本本社にコントロールされておらず、インド企業が責任を負っているという形にする必要があります。

 

C. グループ会社間での立替経費の支払い

インド子会社に出向している駐在員の日本側支給分の給与等については、インド子会社から日本本社に支払う費用として分かりやすい例です。
これはPEリスクに大きく関与しているわけではありませんが、グループ会社間での支払いであるため、移転価格取引対象となる点も考慮して、費用の立替払いとその払い戻しをグループ会社間で行っていることを明確にする契約書を準備する必要があります。

 

今回はインドにおけるPE認定の傾向と対策について述べさせていただきましたが、PEの範囲は曖昧であり、インド税務当局はこのPEの定義を拡大解釈する傾向にあります。そのため、納税者である企業にとって、不利な指摘がされるケースも多く、可能な限り早く下記のような対応を行い、PEリスクを少なくする努力が必要になります。

 

A. 親会社と子会社間でのコミッションまたはマーケティングサポート契約のレビュー

コミッションやマーケティングサポートという文言からコンサルティングサービス等といった文言に変更し、別法人としてそれぞれ事業を行っている事を強調する。

 

B. 親会社や子会社と駐在員間での契約書のレビュー

インド子会社の従業員が有する権限について、日本人駐在員とインド子会社の双方が独立した権利(日本本社の関与なく、契約の更新や解除を行う)を所有することを雇用契約書や出向契約書上で明記し、関連する契約書の内容を統一させる。

 

今週は以上となります。

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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点

田本 貴稔

 

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