こんにちは。TCFインド・バンガロール駐在員の岩城です。
今回は、インドの教育市場について触れてみたいと思います。
インドの家庭における、子供の教育費用の負担上昇が昨今話題になっています。インド合同商工会議所(ASSOCHAM)が、デリー・ムンバイ・バンガロール等の主要都市部において約1,600組の世帯に対し調査を行ったところ、70%以上が可処分所得の30-40%以上を子供の教育費に使っていると回答しました。インドの家庭では元々教育に関する関心は高いのですが、経済成長と共に最近はより顕著になっているようです。
この10年で子供1人にかける教育費は上昇を続けており、私立学校の教育費は1.5倍に増加し、更に最近ではインド工科大学の学生を対象に、授業料を8割値上げする方針が決定される等、国立の学校に通う子供を持つ親も、同様に負担が増える傾向にあります。
インドの教育制度は一般的に、初等教育・前期中等教育・後期中等教育(日本における小学校・中学校・高校に該当)の5年+ 3年+ 4年であり、教育は州単位の管轄になっています。インド人といえば「英語が流暢で、2桁×2桁の計算が出来る」というイメージが以前はありましたが、実際にはそう単純ではありません。
富裕層の子供達は前期中等教育が終わった後、海外へ留学するのが一般的です。そのまま海外で活躍する人材はとても優秀で、前述した「英語が流暢で、2桁×2桁の計算が出来る」といったインド人のイメージを作り上げました。
一方中間層では、インド国内において子供に出来る限りの高い教育機会を提供しようと、私立学校に通わせる事を望む傾向があります。私立学校の年間平均教育費は、同様の調査において6万5千ルピーから12万5千ルピーへ増加、初等教育でも3万5千ルピーから7万5千ルピーへと上昇しています。中間所得層の年収が20万~50万ルピーの中で、教材・制服・鞄・スポーツ用品等、教育に関わる諸費用も併せると、子供を持つ親の大きな負担になっていますが、それでも年々教育にかける金額は増加しています。
更に低所得者層では、通常は無料の公立や政府系の学校に通いますが、各州の教育水準には差があり、英語教育のレベルもあまり高くはないようです。街でよく見かけるオートリキシャ―のドライバーや、マンションの警備員達でも英語を話せない、読めない事が殆どです。よって低所得者層の家庭でも、6歳から10歳の子供の約15%が私立学校へ通っているという統計もあります。この場合かなりの家計負担にはなりますが、子供により良い教育を、という関心は所得の違いに関わらず高い様です。
(※2015年5月13日付:http://www.assocham.org/newsdetail.php?id=4960)
教育の基礎となる識字率は実際に上昇しており、2011年度のインド国勢調査によると前回の2001年度の調査と比べ9.2%増の74.04%増加し、特に女性の識字率の上昇は11.8%増の65.46%と、男性の6.9%増の82.14%と比べて顕著な伸びを示しました。インド政府は識字率100%に向けた初等教育推進を行っており、基礎教育基盤の底上げにより今後益々の教育市場の拡大が期待されます。
一方、こういった教育費の高騰も要因となり、都市部では1家庭において2名以上の子供を持つ事が大変困難な状況になっているようです。25歳以下の若者が半数という、経済市場として魅力的なインドの人口ピラミッドですが、2030年には釣鐘型に変わっていく事が予想されています。
それでも尚、結婚・出産年齢である20代~30代の人口が最も多く、中長期的にインドの教育分野は魅力的なマーケットであることは変わりありません。
【インド人口ピラミッド:2010年(左)2030年(右)】※South Asia Institute参照
バンガロールの日系進出企業数の内、「教育及び学習支援分野」で進出している企業数は全体のわずか3%以下です。(2015年在インド日本大使館・JETROインド進出日系企業リスト参照)今後益々高まるであろうインドの教育ニーズを取り込むのはまさに今がチャンスかもしれません。
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東京コンサルティングファーム
インド・バンガロール支店
マネージャー
岩城 有香
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