【インド駐在員必見】一時帰国長期化と帰任時の留意点

皆様、こんにちは、Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)です。

 

インドではコロナ感染者数の増加に歯止めがかからず、感染者数は世界第3位となってしましました。一方、デリーでは人口の4分の1は既にコロナの抗体を有していたというにわかに信じがたいニュースも発表されており、Withコロナ時代を生き抜くインド人のレジリエンスを感じる一方、私も既にコロナに感染していたのでは?(笑)という疑問を持ちつつある今日この頃です。

 

さて、本日は今回のコロナの影響によって一時帰国をされている駐在員の方に対して、「インドには戻る予定だが、一時帰国が長期化」と「駐在員がそのまま帰任扱いとなる」の2つパターンにおいて、考えられる必要な手続きとその留意点についてお話します。

 

※本ブログに記載の情報についてはブログ執筆時点(2020年8月10日)での情報であり、将来的に当局の緩和措置等が発表される可能性がございます。最新情報については弊社までお問い合わせ頂くようお願い致します。

 

まずは一時帰国が長期化しているケースの留意点と必要手続きについて記載します。

 

  1. 居住取締役のコンプライアンス

2020年8月10日現在において、F.Y.20-21における居住取締役のコンプライアンス要件に対する緩和措置は発表されておりません。従って、インドに居住性を有する方を取締役として任命しない限り、会計年度に182日以上の滞在が必要と言うコンプライアンス要件を満たすことができません(会社法上の居住性と所得税法上の居住性の要件は異なるため、留意が必要です) 。

 

また、9月末に会社法上の年次申告があるため、実質的な期限は9月末で実務上の手続きなどを考慮すると、遅くとも8月末までには決断をする必要があると言えます。

 

  1. 個人所得税の取り扱い

日本への一時帰国が長期化する場合、インドにおける個人所得税の取り扱いについては居住性の判断と居住性によってインド・日本で受け取る所得の範囲が異なる点に留意いただく必要があります。インドにおける居住性の判定と居住性による所得税の範囲に関する基本原則は下記の通りです。

 

さらに、日本にて一時帰国が長期化するにより、「日本側給与の源泉徴収義務」、「日本での滞在日数」、「日本でのPE認定リスク」等の日本での税務リスクについても留意する必要があります。しかしながら、これらの税務論点に関しては全て日本の税務の話ですので、リスクがあるということを認識して頂き、詳細については日本本社と顧問税理士様に相談する事を推奨します。

 

(2)居住性による所得税の課税範囲

 

条件 居住ステータス
通常居住者 非通常居住者 非居住者
インド国内で受け取る又は受け取ったとみなされる所得

例:インド法人から支給される給与

課税(注)
インド国内で発生又は発生したとみなされる所得

例:日本法人から支給される給与

インド国外で発生かつ受け取っているが、インド国内からコントロールするビジネスから発生する所得 課税 非課税
インド国外で発生かつ受け取る所得

例:日本での家賃収入等の副収入

課税 非課税
上記に該当しない所得

例:インドに関連しない所得

  • 日印租税条約の特別措置
  • 日印租税条約上の日本の居住者
  • インド滞在期間が183日を超えない(会計年度において)
  • 報酬が非居住者(インド国外の居住者)から支給されている (例:給与支給は日本法人のみ)
  • 報酬の最終的な負担は日本本社に帰属する

(例:駐在員の給与・手当等の日本本社負担額を日本本社からインド子会社に対して立替経費として請求していない)

 

  1. 銀行口座の維持

一時帰国が長期化し、銀行口座を使用した取引を行わない場合、銀行口座が凍結されるという可能性が少なからず考えられます。インドローカル銀行によって対応は異なる可能性がありますので、リスクの詳細については銀行に確認する事を推奨します。

 

  1. 就労ビザ

FRRO/ビザ延長の申請自体はコロナの緩和措置として申請自体はオンラインで行う事ができていますが、申請の条件としてインド国内にいる必要があるようです。従って、日本に一時帰国中の立場では延長申請を行う事が困難な状況となっており、就労ビザの有効期限が切れてしまった場合は、新たに日本国内でインド大使館・総領事館に申請を行う必要があります。

 

  1. FRRO

一般的に、FRROの取消は駐在員が帰任する際に行うものですが、今回のように短期的な一時帰国を想定していたにも関わらず、日本の滞在期間が長期化し、FRROの期限が切れてしまうケースが考えられます。

 

再度インドに入国を想定している方で、コンプライアンス面を重視する場合は、FRROオフィスに対して、既存のFRROを取り消す旨を伝える通知メール(Intimation)を送付する事が無難と言えます。

 

続いて、帰任する際の留意点と必要となる手続きについて記載します。

 

  1. 取締役離任の手続き(該当する場合)

インド法人の取締役として登録されている場合、取締役を解任する場合は、その手続きがもちろん必要となりますが、取締役としての登録以外に下記のような各種サイナーに登録している場合が考えられます。

 

現地のサイナーとして継続して登録できる可能性もありますが、利便性を考慮して他のインドに居住する取締役の方やその他インド人従業員等に変更するケースも考えられますので、下記登録について、一度確認する事を推奨いたします。

 

  1. Goods and Service Tax (物品・サービス税)
  2. Bank signatory (銀行)

(駐在員事務所で日系銀行を使用されるケースがありますが、毎月の納税額支払いの際に署名が必要となるケースがあります。)

  1. Importer-Exporter Code (輸出入業者コード)
  2. Shops & Establishment (店舗・施設法)
  3. Professional Tax if applicable (プロフェッショナルタックス)
  4. Other registration as may be applicable (その他の登録)

 

  1. ITCC (Income Tax Clearance Certificate: 所得税納付証明) の取得

インド駐在員の帰任時には、駐在員がインドにて所得税の納付と確定申告を行ったことを証明するためにITCCの取得が義務付けられております。

 

通常、ITCCはインドから帰任する前に申請を行い、取得までに数週間を要する手続きです。今回は緊急的に帰国せざるを得ない状況であったため、このITCCの取得が実務上は不可能であったことが考えられます。

 

将来的に、改めてインドに入国する際のビザ取得が必要になりますが、ビザ申請時に過去にインド滞在歴がある場合はForm 26ASやForm16を必要書類として提出する必要があります。

 

可能性として非常に低いと考えていますが、その納税証明に紐づける形でITCCを要求されるかもしれません。仮に要求される場合の実務上の対応としてはコロナの影響により納税証明が取得できなかった旨を説明したレター(Explanation letter)を準備する形になると考えられます。

 

  1. 銀行口座の解約

銀行口座は必ずしも解約する必要はなく、置いておくことも可能です。解約を行う場合は、必要書類等を準備し対応を行う必要があります。インド再入国が困難な状況のため、銀行によってはメール等を通して手続きを行っているケースもあるそうです。詳細については、銀行にお問い合わせいただくことを推奨いたします。

 

  1. アパートの解約

アパートの解約時には、賃貸契約書に記載のロックインピリオドやノーティスピリオドに留意する必要があります。

 

ロックインピリオドとは、契約の最低保証期間のようなものであり、11ヶ月と規定されているケースが多いです。仮に、ロックインピリオドの期間内にアパートを解約する場合は、残りの期間の家賃を支払う必要があるため注意が必要です。

 

基本的には契約を行う際にロックインピリオドの期間が長いか短いかという点に留意する必要がありますが、今回のように緊急時の帰国ですので、仮にロックインピリオド期間中の帰任になりますと、やむない対応として家賃を支払うことになります。場合によっては、大家が支払いを免除してくれるケースもある可能性もありますので、そこは大家との交渉になるかと存じます。

 

ノーティスピリオドは、その名の通り通知期間を意味します。大家に対して、何か月前までにはアパートの解約をする旨を伝えなければいけないという事を規定しています。一般的には1ヶ月と規定されていることが多いです。

 

  1. 日本人会の退会届

メール等にて退会の連絡をすることが可能です。

 

  1. 在留届の解除

外務省のサイトにてオンラインで申請可能です。

 

 

以上となります。今後の当局の発表次第で、必要となる対応や手続きが異なる可能性があるため、引き続き情報収集に努めて頂くようお願い致します。

 

今週は以上となります。

 

Tokyo Consulting Firm Private Limited (India)ではインドビジネスについて、より詳しい情報を弊社の日本人コンサルタント、インド人勅許会計士・弁護士・会社秘書役がお答えします。

 

是非お気軽にご連絡ください。


東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点

田本 貴稔

 

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報を基に、細心の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び弊社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Private Limited, Tokyo Consulting Firm Human Resources Private Limited)は、一切の責任を負うことはありませんので、ご了承ください。

関連記事

ページ上部へ戻る