皆様、こんにちは、Tokyo Consulting Firm Private Limited(India) の田本です。
本日は、インドにおける移転価格文書化シリーズ、第4回という事で、Form 3CEAA, Form 3CEAB(マスターファイル)について説明していきます。
前回のブログでもお話ししましたが、インドでは、2016年よりBEPS行動計画13に基づく、マスターファイル、国別報告書の法整備がなされており、インドに進出する日系企業にはこれらのコンプライアンスを遵守する義務が発生しております。
特に、マスターファイルについては、対象となる金額の基準が下記のようにグローバルスタンダードと比較して、低く設定されているため、注意が必要です。
- 日本:連結収益1,000億円以上
- インド:連結収益50億ルピー以上、かつ、国際取引5億ルピー超
インドにおいては、マスターファイルの適用条件が上記の金額の基準であるため、親会社ではマスターファイルの作成義務が発生していないが、インド子会社ではマスターファイルの作成義務が発生するという状況になっている企業が存在します。
この部分は、親会社の移転価格担当者又はインド駐在員の方の盲点となっているため、特に注意が必要と言えます。マスターファイルの未提出の場合は、50万ルピーという罰則が規定されております。
また、2016年の法改正に伴って発生しているコンプライアンス事項のため、マスターファイルの申告漏れによる税務当局からの指摘といった具体的な事例も恐らくまだ発生していない可能性が高いと言えます。
さて、マスターファイルの対象企業を判断するための適用基準の話に移ります。
インドにおけるマスターファイルにはForm 3CEAA, Form 3CEABという2つのフォームがあり、Form 3CEAAについてはPart AとPart Bに分かれる部分が特徴的です。
適用条件、申告内容、期限については下記の通りです。
Form 3CEAA | Form 3CEAB | ||
Part A | Part B | ||
目的 | 構成会社の基本情報 | マスターファイル | マスターファイル申告会社情報の通告 |
適用条件 | すべてのインド居住の多国籍企業グループ構成会社等 | 以下二つの条件の両方を満たす企業
① 国際グループの連結売上高が50億INRを超える企業 ② 国際取引の総額が5億 INRを超える、または無形資産に係る国際取引が総額1億INRを超える企業 |
インドに構成企業が2社以上存在する場合 |
申告期限 | 11月30日 | 11月30日 | 10月31日 |
上記の通り、Form 3CEAA Part Aに関しては、日系企業であれば国際取引のある全てのインド子会社に申告義務が発生します。ここについては、ほとんどの企業が必要になるため、もし申告を行っていないのであれば、早急に適用条件の確認をすることを推奨します。
また、考えられる実務上の留意点としては、日本におけるマスターファイルの申告期限が事業年度末から1年以内である事に対して、インドにおけるマスターファイルの申告期限は11月末であるため、日本よりもインドの方が早いタイミングでマスターファイルを申告する必要が発生します。
さらに、日本でマスターファイルを作成していれば、その内容をそのままインド側で活用できるかと言うとそういうわけではなく、インドの申告フォーマットに基づいた微調整が必要となります。
このような点に留意して、インドにおけるマスターファイルの準備を行っていく必要があると言えます。
以上になります。次回のブログでは、移転価格の3層構造アプローチの一つである国別報告書について具体的に説明していきます。
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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔
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