インド「所得税法案2025」の全体像と日系企業への影響:2026年4月施行予定


皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の北岡 光里です!

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さて、今回は「インド「所得税法案2025」の全体像と日系企業への影響:2026年4月施行予定」についてお話していこうと思います。

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インド「所得税法案2025」の全体像と日系企業への影響:2026年4月施行予定

 インド政府は、1961年施行の現行所得税法を全面的に見直し、「所得税法案2025(Income Tax Bill 2025)」を制定しようとしています。この法案は、複雑化・老朽化した税制の簡素化・透明化を目的とした抜本的な改革であり、2026年4月1日からの施行が予定されています。


1. 改正の背景と目的

 現行の所得税法(1961年法)は60年以上にわたり運用され、65回の改正と4,000件以上の条文修正が加えられてきました。その結果、条文が煩雑かつ断片的になり、企業や納税者にとって理解しにくい制度となっていました。

新法は、これらの課題を解決すべく、次のような方針で再構成されています:

  • 不要・時代遅れの規定を削除
  • 法文を平易に統一
  • 構成を52章823ページ→23章622ページに整理
  • 納税者・税務当局双方の事務負担軽減と訴訟減少を目指す

2. 統一課税年度「タックスイヤー」の導入

 現行制度では、財務年度(4月〜翌3月)と課税年度が分かれていますが、新法では**“Tax Year”という統一概念**が導入されます。これにより:

  • 事業開始日や新たな所得発生日を起点に課税年度を定義
  • 新規進出企業やスタートアップにとって、納税管理がシンプルに

これは、特に初年度に収益が不規則になりやすい進出企業にとって有利な変更です。


3. 税率・控除制度は現状維持(2025年度予算に準拠)

 現段階では、所得税の税率・税区分に新たな変更はなしとされています。新制度では以下の税率が適用されます(新税制):

課税所得(INR) 税率
~400,000 免税
400,001~800,000 5%
800,001~1,200,000 10%
1,200,001~1,600,000 15%
1,600,001~2,000,000 20%
2,000,001~2,400,000 25%
2,400,001以上 30%
  • 給与所得者にはINR 75,000の標準控除があるため、年収127.5万ルピー以下は実質非課税になります。
  • 新税制がデフォルトですが、旧制度との選択も可能。

4. 申告制度・誤記修正期間の拡大

  • 所得税申告の期限は現行通りだが、修正申告可能期間が2年→4年に延長
  • 所得区分(給与、家賃収入、事業利益、資産譲渡、その他)は現行と同様
  • 給与控除(標準控除・退職金・有給買取など)は一元的に整理

5. 源泉徴収(TDS)・徴収税(TCS)の統一整理

 新法では、従来複数セクションに分かれていたTDS・TCS規定をSection 393に集約し、以下のような取引に課税対象を明示:

  • 給与、利息、家賃、専門報酬、契約料など:TDS
  • 高額車両(INR 100万超)、スクラップ、海外送金(INR 70万超):TCS

違反時は、1%の月次利息+デフォルト扱いとなる可能性があります。


6. 小規模企業向け「推定課税制度(Presumptive Taxation)」の改正

小規模事業者や専門職(医師、弁護士等)向けの簡易課税制度も強化されます:

  • 売上最大2,000万~3,000万INR(条件付き)まで適用可
  • 専門職は最大750万INRの収入まで利用可
  • 所得率:キャッシュレス売上6%、現金8%
  • 5年間の継続適用義務あり(途中離脱時は帳簿作成+監査義務)

中小企業にとっては、簡素化と納税負担の低減が可能になります。


7. 暗号資産・NFTへの課税明確化

 仮想通貨、NFTなどのデジタル資産が、正式に「資産」として分類され、以下のように扱われます:

  • 株式や不動産と同様に譲渡益課税(キャピタルゲイン)の対象
  • デジタル資産保有企業への規制強化と監査リスクが高まる可能性
  • 法的分類が明確化され、会計・税務処理が整理される効果

8. 今後の承認プロセスと注意点

 現在は国会下院(ローク・サバー)にて審議中で、7月21日より本格的な審議が開始されます。今後の流れは:

  • 議会委員会による再審査 → 内閣承認 → 国会再提出 → 法制化
  • 法案成立後、2026年4月1日より施行予定

■ まとめ:日系企業への示唆と対応策

 新しい所得税法は、会計処理の簡素化・納税者の利便性向上を主眼にした改革です。インドに進出している、または今後進出予定の企業にとっては:

  • 新タックスイヤー対応のシステム見直し
  • TDS/TCSに関する会計・ERP設定の再確認
  • 仮想通貨・NFT取引を含む場合のリスク評価
  • 中小規模法人は推定課税制度の活用検討

を行うことが推奨されます。

 本法案が成立すれば、インド税制はより整然かつ透明性のあるものへ進化します。税務ガバナンスの強化と現地税務体制の見直しを早期に進めることが、今後の安定的な事業運営に繋がるでしょう。

本日は以上になります。

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