一時休業、従業員の休業補償の取り扱い

こんにちは、タイ駐在の小林平悟です。

引き続き、タイの洪水の状況は悪化の一途を辿っており、ここ数日はバンコク中心地でも浸水する地域が散見されました。また、氾濫した水域の水質は、ガソリン等の油、生活排水、さらには糞尿等により汚染されている可能性があり、感染症等を発するおそれがあり、先日日本大使館からも注意突起がありました。また、大使館は、首都バンコクの危険情報を「渡航の延期をお勧めします。」に引き上げ、緊急の目的・業務の必要などやむをえない事情以外では、渡航を見合わせるよう促しています。

そんな中、やむなく休業せざるを得ない企業が増えており、休業に関する質問が増えていますので、以下に簡単に記載しておきます。

<一時休業実施の要件>
タイ労働者保護法第 75 条では以下のように規定されています。

1 通常の業務運営が困難になるほどの事業活動に支障を生じる重大な理由によること
2 不可抗力に基づくものでないこと
3 事業の一部もしくは全部の休止であること
4 臨時的な休業であること
5 労働者および労働監督官への 3 労働日前の事前通知

<一時休業期間中の給与支給>
労働者保護法第 75 条 1 項では、上記の一時休業実施の要件を満たして、会社(使用者)が一時休業を行う場合には、休業開始時の給与の 75%を支給しなければならないと規定しています。
ここで言う「休業開始時の給与」とは、残業手当の計算基礎となる月々定額で支給される金員全てになります。なので、基本給の 75%の支給ではなく、基本給の他、役職手当、食費手当、生活補助手当等の定額支給額を全て含めて計算しなければならないことに注意してください。
また、いつまで払い続けるのか。という質問が聞こえてきそうですが、休業開始から業務開始までの間ずっとです。

上記要件②を逆説的に捉えれば、「不可抗力に基づくもの」であれば、会社は労働者に就労を提供できないことにつき責任を負うべき状況にはないため、給与の支払義務を負いません。
この不可抗力については、民商法の8条に以下のように規定されています。
「「不可抗力の事由」とは、その事由に遭遇した者、または遭遇しなければならない者が、その立場及
び状況にいる者としてしかるべき注意を払ったとしても、その発生または罪過を防止できない事由を意
味する。」

しかし、今回の洪水のケースについては、一部大規模な被害にあった工業団地を除いては、上記75条に基づき、休業する企業は従業員に休業開始時の給与の 75%を支給しなければならない可能性が高いです。というのも、タイで洪水は毎年起きていて、「洪水を予見すること」は出来たとみなされる可能性が高く、また、津波のように突発的に起こったものでないので、堤防や塀を作るなどして事前に「防止」できたのではないかと指摘される可能性があるからです。(*ロジャナ工業団地のように、何メートルもの浸水を予測することは難しく、不可抗力として認められる可能性がある地域もあります。)

今回の災害で業務開始の目途が立っていない場合、人員の整理も考えざるを得ない企業もあるかと思います。次回のコラムでは、従業員の解雇にフォーカスして書こうと思います。

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2019-10-23

東京コンサルティンググループ

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