ASEAN成長率トップクラス!ベトナムとフィリピンの法制度の違いとは?!

税務

こんにちは、
Tokyo Consulting Firmの大橋 聖也です。

 

【1分でわかるベトナム・フィリピン進出のイロハ】

No.103<ASEAN成長率トップクラス!ベトナム・フィリピンの法制度の違いとは?!>

 

海外子会社では、設立後から利益が出るまでに年数を要することが多く、その間の運転資金や設備投資における資金調達や、将来の利益還流時の手段として、日本親会社から借入をする場合があります。

当該親子ローンに係る利息費用に対しては、以下のような税務マターが発生し、将来キャッシュフローにも大きな影響を与えるため、タックスプランニングの一貫として事前に検討すべき事項となります。

  1. 法人税の損金算入
  2. 最終源泉税/外国契約者税
  3. 移転価格税制

今回は、法人税の損金算入について、要点をまとめていきます。

ベトナム・フィリピン共に、親子ローンに係る利息費用について、損金算入限度額が決められています。
特に、ベトナムでは、2020年6月に最新の法令が出ていますので、ご注意下さい。

 

【ベトナム】

ベトナムでは、2017年度より関連者取引に適用される損金算入規定としてEBITDAの20%を超える利息費用については、法人税の損金不算入とされていました。
*EBITDA=利払前・減価償却前・税金控除前の利益

しかし、今回2020年6月24日に改正規定(Decree 68/2020/ND-CP)が発行され、上述の規定に対して、EBITDAに対する料率等について、以下のように改正されました。

 

<料率の変更>

利息費用の損金算入限度額は、EBITDAの30%まで可能(20%→30%)

 

<繰越規定>

損金算入できなかった利息費用は、発生年度から最大5年間繰越し、将来の追加損金算入が可能。(EBITDAの30%以下の利息費用が発生する年度のみ対象)

 

<過年度修正>

2017年~2019年度について損金算入制限が発生した場合は、改正後の料率で再計算の上、2021年1月1日までに修正申告が可能。

その結果、過年度に法人税過払となった場合には、2020年度の確定申告時に控除可能。
(調整後、損金算入が出来ない残高が発生する場合は、2020年度から最大5年間繰延可能。)

 

以下、計算例となります。

 

EX)支払利息100、EBITDA 200の場合

支払利息100のうち、EBITDAの30%(200×30% = 60)を超えた40 (= 100–60)に対して損金算入が認められません
ただし、最大5年間繰越してEBITDAの30%以下の利息費用が発生する年度に、追加損金算入が可能となります。

 

EX)EBITDAがマイナスの場合

EBITDAがマイナスにより損金算入限度額がゼロの場合、支払利息の全額に対して損金算入が認められません。
翌年度から5年間、EBITDAがプラスの場合は、過年度の支払利息の追加損金限度枠まで損金算入が可能です。

 

<フィリピン>

フィリピンでは、損金算入限度額は以下の通りです。

損金算入限度額=利息費用ー{(利子収入÷80%)×33%}

利子収入は、親子ローン以外でも銀行からの預金利子等を含み、“利子収入÷80%”の根拠は、利子収入に対する源泉税20%からきています。
親子ローンの利息費用は原則損金算入可能ですが、運転資金や設備投資以外での事業関連性がなく、又はローンの返済自体は出来ていないのに先に利子を払っている場合など、全額損金不算入となります。

 

その他、フィリピンでは税務調査時に、親会社への買掛金・未払金が1年以上の長期にわたって残っている場合は、親子ローンとみなされる可能性があります。

その結果、利息費用に対する源泉税や金銭貸借契約書の印紙税を推定課税され、追徴金支払いを余儀なくされる事例も発生してますので、ご注意下さい。

 

以上、親子ローンに係る利息費用に関する税務論点となります。


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Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。
2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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