平素よりご愛読いただき、誠にありがとうございます。
Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの早川 桃代と申します。
今回のトピックは「新型コロナウィルスによる現地企業への影響」です。
2020年3月12日(木)に発表された、マニラ首都圏への出入りに関する制限、フィリピンへの入国制限により、各企業様は困惑されていらっしゃる状況かと存じます。
本措置に関しては、各報道機関や在フィリピン大使館情報をご参照ください。私共からは、企業への影響を3つにしぼりご案内し、少しでも皆様のお力になれればと存じます。
~3つの影響~
①マニラ首都圏内外の出勤
②自宅待機とした場合の給与
③各種政府機関の運営状況
※下部にて、3月14日(土)発表による速報もございます。
<①マニラ首都圏外から首都圏内、或いはその逆の出勤に関して>
3月13日15時時点では、「首都圏に出入りする陸路、内航船舶、国内便航空機は3月15日に停止※」という情報が発表されているのみで、具体的にどのようにそれらの規制を行っていくのかというのは未だ発表されておりません。
想定できるのは、首都圏内外を移動する公共交通機関の停止、高速道路の封鎖です。
これにより多くの日系企業様が影響を受ける事として、首都圏外から首都圏内へ通勤している社員や、或いはその逆の社員の方々の出勤が危ぶまれることでございます。
これに関して、アニョ内務地方自治大臣は、「首都圏外から首都圏への通勤は、首都圏で雇用されていることの証明を提示すれば可能と発言※」しております。ただしこれは会見時に口頭で通告した内容のみであり、書面での通達はございません。
さて、何を持って「首都圏で雇用されていることの証明」となるのでしょうか。もちろんそのような発表はございませんでした。
想定の範囲ではありますが、社員証がその役割を果たすと考えられます。フィリピンでは多くの企業様で、社員証(Company ID)を発行されていらっしゃいます。そこに、顔写真、社員の方の氏名、勤務地の住所(首都圏)が記載されていれば、首都圏で雇用されていることの証明となるでしょう。
もし持っていない方の場合、企業側から雇用証明として書類を作成するという方法も考えられますが、現時点では具体的にどのような書類があれば首都圏内外移動ができるのか不明でございます。それらの書類を用意することが、今できる対策と言えるでしょう。
<②自宅待機とした場合の給与>
上記の制限により、出勤が困難と判断し、リモートワークとする企業様もいらっしゃれば、事態の深刻度次第で、営業を停止し社員の方々に自宅待機とさせることを検討されている企業様もいらっしゃるでしょう。
これらの処置を行った場合の給与等の対応について、「DOLE(労働雇用省)・DTI(貿易産業省)がガイドラインを発出※」することとなっておりますが、現時点で未だ発行されておらず、今回の感染症における処置は現状、企業にゆだねられております。
フィリピンの労働法上、従業員側の原因ではなく会社側の決断による出勤停止の場合の給与の有無に関しては記載されておりません。
フィリピンでは基本的に”No Work, No Pay” の規則が慣習としてございます。また、過去の判例を鑑みても、自然災害等により勤務できなかった・勤務しなかった社員に対する給与は払わなくてよい、というのが弊社内弁護士の見解です。
実際に今年1月にタール火山噴火に伴いDOLEから発表されたガイドライン(LABOR ADVISORY No. 01, 2020)では以下のように案内が出されました。
- 勤務しなかった場合:給与支払いなし
(ただし、社内就業規則等において別途規定がある場合を除く)。振替休日を充てる事は可能。 - 勤務した場合:特別手当などの追加支給の必要はなし。
※通常の出勤日と同様の給与を支給すること。 - 不可抗力な自然災害を理由とした、社員の出勤拒否に対して:罰則を与えない事
(ペナルティの支払いや社員評価への影響があってはならない)
今回も同様の案内となることが想定されますが、事態が深刻化し勤務できない期間が長引いた場合の処置(政府による民間企業支援等)は今後注目すべき事項となります
<③各種政府機関の運営状況>
3月13日15時時点では、以下の状況となっております。
「一部運営停止」と記載させていただいている箇所について、主要部門の最低限の運営ができるようには職員も出勤するとのことですが、会社設立、ビザ等手続き中の企業様におかれましては、手続きが大幅に遅延することが想定されております。こちらについては、運営再開情報を辛抱強く待つこと、そして日本本社様へもご理解いただくことが求められます。
Government Office
政府機関 |
Status and Remarks
運営状況 |
SEC
証券取引委員会 |
Closed – March 13, 2020 for disinfection will resume operation on march 16, 2020
現状運営停止中、3月16日再開予定 |
SSS
社会保険機構 |
|
BSP
中央銀行 |
|
Dept. Of Finance
財務省 |
|
Quezon City Hall
ケソン市役所 |
Closed March 14-14, 2020 for disinfection
3月14日~4月14日まで一部運営停止予定 |
San Juan City Hall
サン・フアン市役所 |
Closed March 13, 2020 closed
3月13日は一部運営停止中 |
DOLE
労働雇用省 |
Closed Every Friday
毎週金曜日は一部運営停止 |
All Government agencies under Executive Department
(HDMF, PhilHealth,移民局含むすべての政府機関) |
SUSPENDED Starting March 16-April 14 2020. Subject to changes daily depends on recommendation of Inter Agency Task force.
2020年3月16日~4月14日までの一部運営停止予定 |
※在フィリピン日本大使館公式ウェブサイト参照
~以下、3月14日(土)17時時点速報~
3月12日に発表された制限に付随する形で、13日、14日にも様々な制限(夜間外出制限等)が発表されております。
詳細は在フィリピン日本大使館等、信頼できる情報機関からお取り寄せいただくとして、私共からは14日にDOLEより発表されたガイドライン(LABOR ADVISORY No.11, 2020)についてお伝えいたします。
企業様にとって気になるのは、上記の①②に上げさせていただいた点かと存じますが、詳細措置が本ガイドラインにて発表されました。それも含め、概要を以下の通りまとめさせていただきます。
- DOLEとしては、勤務中止や営業中止ではなく、フレックス・ワークやリモートワークを取り入れての勤務継続を推奨する方針である。(一方で政府による強制的な出勤停止については言及がなく、DOLEでは制限することが出来ないものと考えられます)
- 製造業、小売業、サービス業について、(12日に発表された首都圏内外の交通制限期間中も)安全を確保した上で、運営続行を推奨する。
- 交通制限期間中の、欠勤については、(もしあれば)現存の振り替え休日を適用できること。残存する無給休暇(Unpaid Leave)については、COVID-19 Adjustment Measures Programの条件を満たせば当プログラムの対象となる可能性がある。
※こちらのプログラムは、無給休暇となってしまった労働者への何らかの援助・救済措置とみられますが、詳細は現状発表されておりません。
※また、有給休暇にする旨の規定についても言及されていません。欠勤中社員の給与支給の有無について会社判断に任せていると受け取れます。
- 首都圏外に住み、首都圏内に勤務する従業員に対しては、以下のいずれかの提示により出勤が可能となる:
・会社住所または勤務地、及び従業員本人の住所を記載したID(社員証)
・会社住所または勤務地、(及び従業員本人の住所を記載した)雇用証明(Certificate of Employment)
※bについてのフォーマットの提示は特になく、会社が作成・発行するものと考えられます。また、上記対応は首都圏内に住み、首都圏外に会社・勤務地がある従業員に対しても同様である。
- 個人事業主についても、マニラ首都圏内外への移動の際は、事業活動を証明できる物を提示することで移動が認められている。
- 食料、原材料等の配達・運搬は、それらの運搬先会社の住所を証明できる書類の提示により首都圏への移動が可能となる。
- 医療施設は通常通り運営されているべきであり、そこに勤務する従業員は首都圏内外の移動を許可するものとする。
その他、DOLE以外にも、交通省(Department of Transportation)からの詳細な交通規制情報や、各地域政府より商業施設(ショッピングモール)における対応等、続々と政府の対応が発表されております。大使館情報や、各省庁の直接の発表、信頼できるメディアをご確認ください。
どの企業様も影響を受け、気苦労が絶えない日々が続くかと存じますが、皆さまどうか御身体にはご自愛ください。
東京コンサルティングファーム・マニラ拠点
早川 桃代
※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください