実務上の増資手続きについて

法務

こんにちは、フィリピン駐在員の大橋です。

 

今週のブログはフィリピンにおける実務上の増資手続きについて書かせて頂きます。

 

増資を考える際には、2つのパターンが考えられます。

 

①授権資本金内の増資の場合

②授権資本金を超える増資の場合

 

【授権資本金内の増資の場合】

 

授権資本金額内であれば、手間・費用はほとんどかかりません。簡単な書類の作成があり、費用としては増資額の0.5%の印紙税(Document Stamp Tax:通称DST)がかかります。

 

手続きフローは以下のようになります。

 

・追加資本金の送金

・修正版GISの作成

・会社秘書役のサイン

・SECへの提出

 

期間としては1~2週間程度となります。

 

【授権資本金を超える増資の場合】

 

授権資本金の増額を伴う場合は、SEC(証券取引委員会)への書類提出が必要になり、書類の提出後手続きに2週間ほどかかります。こちらの書類の作成は上記の書類よりかなり複雑になるため、弁護士の書類作成費用が追加で発生します。

また、実費としてFiling Fee(増資額の0.2%)+Legal Research Fee(Filing Feeの1%)+DST(増資額の0.5%)が必要になる。

 

手続のフローは以下のようになります。

 

・必要書類の作成(2週間程度)

・書類へのサイン(1~2週間)

・追加資本金の払い込み(1~2週間)

・SECでの手続き(2~3週間)

 

こちらは以下の通り煩雑な手続きと期間を要します。

 

①取締役会決議

増資に関して、取締役会の過半数による決議をしなければなりません。

 

②株主総会招集通知の送付

増資額、株主総会の日時、場所を記載した通知を株主名簿に記載された各株主の住所へ送付(料金前払郵便又は手渡)しなければなりません。

 

③株主総会決議

株主総会で発行済株式の3分の2以上を有する株主の承認を得なければなりません。なお、出席した株式の3分の2以上ではありませんのでご注意ください。増資は、重要な意思決定であるため、決議要件が重く規定されています。

 

④新株の引受・払込

決議された増資について、新株の引受及び払込を行います。増資額の4分の1以上の引受、さらに引受額の4分の1以上が現金で払込まれるか現物出資がされなければ、証券取引委員会に証明書が受理されず、増資が有効となりません。ただし、外資が引受けた場合には、外資引受分の全額について、払込もしくは現物出資が完了している必要があります。

この要件を満たしたことを証明するために、財務役の宣誓供述書(sworn statement)を証券取引委員会に提出する増資証明書(certificate of increase of capital stock)に添付しなければなりません。

 

⑤証明書の作成

以下の事項が記載された、増資証明書を作成しなければなりません。

 

・取締役会決議及び株主総会決議がなされた旨

・資本金の増加額

・実際に引受けられた金額あるいは無額面株式の株式数

・引受人の氏名、国籍、住所、並びに各人が引き受けた金額あるいは株式数

・引受株式のうち、現金の払込額又は現物資産の出資額

・株主総会日時点における会社の債務額

・株主総会に出席した株式数

・増資の承認をした投票数

 

増資証明書は取締役の過半数が署名し、株主総会の議長及び秘書役が連署しなければなりません。

増資証明書は2通作成し、1通は会社の本店に保管しなければなりません。もう1通は証券取引委員会に提出し、必ず事前承認が必要です。

 

⑥増資証明書の提出

作成した増資証明書に財務役の宣誓供述書を添付して、証券取引委員会に申請しなければなりません。

 

⑦登録証明書の交付

証券取引委員会に増資の申請を行い、承認が得られると証券取引委員会より登録証明書が発行されます。この登録証明書の発行をもって、増資が有効となります。

 

以上が増資における続きとなります。

 

増資をご検討の企業様は、まずは自社の資本金額の構成を最新のGISにてご確認頂ければと存じます。

 

今週も、どうぞよろしくお願い致します。

以上

 

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