皆様こんにちは。Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.の谷口です。
前回に引き続き、マレーシアにおけるハラルビジネスについてご紹介致します。
今回は、ハラルビジネスにおいて最も密接に関連する食品産業に焦点を当てて、
ハラル規格の内容をご紹介させて頂きます。
ハラル規格は、「ハラル食品の製造、調整、取扱い及び貯蔵に関する一般ガイドライン(MS:1500)」に記載されており、
許さない食材として、豚、アルコール等、所定の屠殺方法・処理方法をとらなかった肉類などを規定し、これらと直接・間接に接触したものも同様に扱うとしております。
また、不衛生あるいは安全でない食材や製造プロセスにより生産された食品等も許されないとしております。
こちらの概略は以下となります。
①食材
許されない食材として、所定の方法で屠殺されなかった動物、豚、犬のほかに、牙をも つ動物、肉食性鳥類、ワニ、カメ、カエル、遺伝子組み換え生物(Genetically Modified Organisms: GMO)があげられております。しかし、キノコ類、微生物(細菌、藻類、カビ)およびその産物は原則としてハラルであり、食材として用いることができます。
②屠殺方法
規定されている詳細な屠殺方法はイスラム教に密接に関連しており、非イスラム国にと
って理解が難しく、高いハードルになっております。
一定の資質を有するイスラム教徒が屠殺すること、屠殺に際して特定の宗教的な文言を唱えるべきこと、イスラム教徒の検査員が屠殺をチェックすることなどが規定されております。技術的にも、ナイフ等を当てる部位、死を早める方法によることなどが詳細に規定されております。電気ショックによる屠殺の場合には、一定の資質を有するイスラム教徒の監督下で行われることが規定されるとともに、動物の種類ごとに使用する電気の電流、電圧が数値で指定されている等の規定があります。
③加工、取扱い、流通
加工食品は、加工、包装、保管、輸送の一連のプロセスにおいて、許されない食材等とは物理的に隔離されること、加工機械等は、許されない食材等の加工と共用してはならないことなどが規定されております。
ハラルの基本思想から見て、製造、流通、そして販売までのサプライチェーン全体がハラルであってはじめてその製品がハラルとして認められます。
④保管、陳列、提供
保管、陳列、販売、提供のすべての段階で、ハラル・マークを表示し、非ハラル食品等と隔離すべきことが規定されております。
⑤衛生、公衆衛生、食品安全
衛生、公衆衛生、食品安全については土壌、飼料、肥料、殺虫剤、害虫、微生物などの汚染の防止、ガラス・金属などの異物の混入の防止などが規定されております。
⑥包装、表示
包装材料、表示ラベルの素材は「許されない素材」でないこと、包装容器の制作機械は、許されない素材で汚染されていないこと、包装容器の前処理、組立て、保管、輸送に際し て、ハラルでない食品等と隔離されることなどが規定されております。
上記が、食品産業に係るハラル規格の内容となります。
ポイントとなるのは、
③の「サプライチェーン全体がハラルであってはじめてその製品がハラルとして認められる」という点です。
例えば、レストランを営むにあたって、
仕入先はもちろんのこと、輸送業者までハラル認証されていなければハラルとしては認められないのです。
弊社では日系企業のマレーシア進出をサポートしておりますが、
食品産業(レストラン等)の日系企業がマレーシアに進出した際は、このハラル認証の取得は大きな課題となります。
非ハラルとして進出することはもちろん可能ですが、
その場合はマレーシア市場の65%に進出することができないためです。
日本の食文化をマレーシアに伝えるためには、
上記のハラル規格をすべて満たし、認証を取得することが必要不可欠となってきます。
以上、今回はハラル規格の内容についてご紹介させて頂きました。
次回は、ハラル制度の国際性についてご紹介致します。
どうぞよろしくお願い致します。