インドでの外国会社企業向けの株式譲渡価格は、1999 年外国為替管理法(FEMA:Foreign Exchange Management Act, 1999)で規制されており、日本企業を含む非居住者がインドの会社から株式譲渡を受けるような場合、当事者は自由に譲渡価格を決めることはできず、発行価格はインド証券取引所のガイドライン(SEBI ガイドライン)に従って算定される公正価格を下回らないことが原則とされています。
これはインド側が安く売ることに同意しても、インド準備銀行の事前承認を得ない限り、その合意は無効と判断されるリスクがあると解されています。また、未上場会社の外国会社向けの発行価格・譲渡価
格は、算定に際して一律ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法を採用することが明記されました(2010 年5 月RBI 関連通知)。
DCF 法では、会社が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に置き換えることで、株式の公正価格を算出します。将来予測という性質から主観的な判断が入りやすく、その結果、インド企業はこの規制を軸に、株式譲渡に際して将来の成長率を強気に見積った価格交渉をしたり、外国為替規制の適用がある日本側の引受分についてのみDCF 法に基づく高額な引受を要求するというケースが考えられますので、注意が必要です。