本社人事制度をインドに当てはめる⑧

 こんにちは。Gurgaon事務所の仁井いずみ(ニイ)です。今回は賃金制度について触れていきます。

 前回のテーマであるインド人社員評価と結果フィードバックの次に考えることは昇給・昇格です。インドでは少なくともインフレ率(10%程度)分の昇給が当たり前という慣習が根付いています。それ以下の昇給率を提示した場合、時には10%の昇給率であっても社員に満足されず文句を言われるケースがよくあります。一方でインド景気は下降気味にあり、日系企業でも赤字を余儀なくされることが多くなってきました。この状況下でこれまで同様に10%もの昇給を行っていけば利益を食いつぶすことになります。特にこれまでの昇給ですでに給与が高くなっているため、年を追うごとに人件費が膨らみます。

 正しい評価を行い、それが公正に給与額に反映されるような賃金制度を作る必要があります。

インドに当てはめるポイント

  1. 給与レンジを決定する
    インドの場合、同じポジションであっても給与額に格差があるケースが多くあります。経験者を採用する際、給与決定は前職の給与額を基準とするためです。採用する際や昇給決定の際に妥当な給与額かどうかを判断するためにも、ポジションごとの給与レンジを決めておくと良いです。ポジションの上限額と次のポジションの下限額を多少重ねる場合もあれば、差をつける場合もあり会社の方針によって決めていきます。次のポジションに昇格できる評価結果を得るまでは上限額以上の昇給はなし、その分昇給の際には給与を大幅に上げるという場合はポジション間に格差をつけます。インドの場合は毎年昇給する慣習となるため、給与レンジは毎年見直した方がいいでしょう。
  2. 昇給率ルールを決める
    インドの場合、昇給率で決定し、号棒で賃金額を決定する方法をとっていません。関係者内で賃金表を使うことになるためどのツールを使っても間違いではありませんがインド人社員は前年比率でみるということは理解する必要があります。

    前述の通りインド人社員間に給与格差が生じていることが多いため、同じ評価結果でも昇給率を調整することで同ポジション内での給与額を均衡させることが必要です。昇給率決定の手順は以下のとおりです。

    1. 売上高、利益率をベースにかけられるおおよその人件費を決める
    2. インフレ率を参考に平均昇給率を決める
    3. 評価結果ごとの昇給率を決める
    4. 給与レンジ内で昇給率に差をつける(上限に近い社員は昇給率を低く抑える)

    ルールで決めた昇給率を元に必要に応じて微調整を行い、昇給率を最終決定します。

 これまで人事制度の一連の流れをみてきましたが、今回の賃金制度で一巡しました。ポイントは各制度につながりを持たせることです。社員に役割を理解させ、それを全うさせるように教育を行い、評価し、給与に反映する。給与ルールを社員がモチベートされるように設計する。という一連のつながりがない状態では人事制度は形骸化します。対日本人の場合は「言わなくてもわかるだろう」という感覚が通用しますが、インド人の場合は(インド人に限らないと思いますが・・)その感覚が全く通用しません。ゆえに日本の人事制度をそのまま導入してもうまくいかないのです。インド人がすっと理解できる「わかりやすく単純で運用しやすい」人事制度を構築し、会社にコミットする社員を増やしていくことが重要です。

次回は本シリーズのおまけとして昇格について書かせていただきます。

以上

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