BEPS防止措置実施条約(「MLI」)と代理人PEリスクの高まり

税務

皆様、こんにちは、
Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)です。

本日はBEPS防止措置実施条約(「MLI」)と代理人PEリスクの高まりについてみていきます。

 

まず初めに、BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting (税源浸食と利益移転)の略称になります。
OECDでは、近年のグローバルなビジネスモデルの構造変化により生じた多国籍企業の活動実態と各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用することで、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題に対処するためにBEPSプロジェクトを立ち上げました。

このBEPSプロジェクトでは、G20要請により策定された15項目の「BEPS行動計画」が提案されています。(詳細は下記URLをご参照ください。)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/beps/index.htm

 

次にBEPS防止措置実施条約とは、英語でMultilateral Instrumentであり、正式名称は下記の通りです。

The Multilateral Convention to Implement Tax Treaty Related Measures to Prevent Base Erosion and Profit Shifting
(税源侵食および利益移転を防止するための租税協定関連措置を実施するための多数国間条約)

 

MLIとは、上記で述べたBEPS行動計画による変更を効率的に実施するために、既存の租税条約(現在3,000以上ある)を一挙に修正・改正することを目的とした概念になります。
その国において、MLIの効力があるのかについて事前に確認することも重要ですが、MLIは既存の租税条約に取って代わるものではなく、租税条約を解釈するに当たり、MLIと合わせて読み取ることが必要とされています。

国際税務の世界では、MLIという単語がいきなり出てくるため、上記のような背景を理解しておくことが必要です。

 

MLIの効果は租税条約締約国の両国がMLIに批准しているか否かが焦点となりますが、インドと日本においては、下記の流れになっています。

 

【MLIへの署名日】

  1. 2017年6月7日 両国がMLIに署名

 

【MLIの効力発生日】

批准書の寄託から3ヵ月を経過する日を含む月の翌月1日に効力を有する

  1. 2018年9月26日 日本が批准書の寄託 2019年1月1日より効力発生
  2. 2019年6月25日 インドが批准書の寄託 2019年10月1日より効力発生

 

【MLIの適用開始日】

源泉徴収される租税については、MLIの効力を生じる日以降に開始する課税期間の初日以降に発生する支払いまたは貸記額に対して適用される
その他の全ての租税については、両国においてMLIの効力が生じた後6か月以後に開始する課税年度以後

  1. 2020年1月1日・2020年4月1日 日本にて適用開始
  2. 2020年4月1日 インドにて適用開始

 

さて、本題ですが、近年インドでは、このMLIが代理人PEリスクに影響を及ぼしているという話を聞いたことはないでしょうか。

これは、上記で記載したように2020年4月1日よりインドにおけるMLIの適用開始が始まったことに影響を受けております。
具体的には、MLI第12条の「コミッショネア契約およびこれに類する取り決め」が日印租税条約に適用されるため、ビジネスモデルや契約書関連を改めて精査する必要性が出てきました。

MLI第12条と適応する租税条約第5条7項の詳細は下記のように記されています。

  • a) インドにおいて当該企業に代わって契約を締結する権限を有し、かつ、その権限を反復して使用すること;または
  • b) 当該者は、インドで、物品又は商品の在庫を反復して保有し、かつ、当該在庫により当該企業に代わって物品 又は商品を規則的に引き渡すこと;または
  • c) 当該者はインドで、専らまたは主として当該日本企業自体のためまたは 当該企業及び当該企業を支配し、当該企業により支配され若しくは同一の共通の支配下に当該企業と共に置かれている他の企業のため、反復して注文を取得すること

上記の内、a)については下記のMLI第12(1)条の影響を受けることとなります。

一方の締約国内において企業に代わって行動し、そのように行動するに当たって、反復して契約を締結し、または当該企業によって重要な修正が行われることなく日常的に締結される契約の締結のために反復して主要な役割を果すもの。また、これらの契約が次のいずれかに該当する:

  • a) 当該企業の名において締結される契約 ; または
  • b) 当該企業が所有し、又は使用の権利を有する財産につき、所有権を移転し、又は使用の権利を与えるための契約 ; または
  • c) 当該企業による役務の提供のための契約

上記の影響により、インド法人の駐在員が日本法人とインド企業間での契約の締結に当たり主要な役割を果たしている場合、4月1日以降より日本法人はインドに従属代理人の活動による代理人PEを形成することが可能となりました。

 

従って、マーケティング支援サービスやコミッショネアビジネス等においては、MLIの適用開始後(2020年4月1日以降)はインド税務当局よりPE認定という形でチャレンジされる可能性が高くなってきているため、事前の対策が必要となります。

具体的な対策としては、そもそものビジネスモデル自体を再検討することやグループ会社間またはグループ会社と駐在員間での契約書のレビューを行い、税務当局よりチャレンジされる想定し、事前の対策を講じることが必要になってきています。

 

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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔

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