皆様、こんにちは、Tokyo Consulting Firm Private Limited(India) の田本です。
本日は、インドにおける監査の特徴について、期日管理やインド人監査人と監査対象企業の経理部門の担当者とのコミュニケーションに着目しながら、お話をして参ります。
また、今回の内容は監査に関する専門的な内容も含まれておりますが、監査を行う前提や監査で良く問題になりがちなテーマに振れながら、より経営的な目線でご説明をします。
まず、インドにおける監査は、大きく3つ、会社法に準拠した法定監査、所得税法に準拠した税務監査、GST法に準拠したGST監査があります。
法定監査については駐在員事務所を含む全ての企業形態が監査対象となります。税務監査とGST監査はどちらも会計年度の売上が5,000万ルピー以上の会社が対象となります。
今回はその中でもしばしば問題となる法定監査にスポットを当てて話を進めます。
インドにおける法定監査の期限は通常は9月末とされています。これは会計年度の終了から6ヶ月以内に監査済み財務諸表を年次株主総会で決議する必要があるためになります。
そのため、ほとんどの企業の法定監査は6月~8月までに終了します。しかしながら、問題のある企業については、9月にずれ込むこととなり、期限ぎりぎりになっても監査が終わらないという事案が度々発生します。
これは、監査法人の規模に関わらず、企業と監査法人との間での頻繁に起こる問題と言えます。監査人としては、対象となる会計年度における重要性の高い指摘事項を指摘せずに、来年度以降に指摘されることによるクライアントから責任を問われるリスクがあり、責任をもって監査を行う事が求められます。
一方で、監査対象企業の経理部門や監査対応の担当者としては、もちろん、指摘事項を一つでも少なくしようと監査人と交渉をします。
つまり、監査人はクライアントのためを思って指摘事項を監査報告書に記載しようと思っているにもかかわらず、クライアントとしてはその指摘事項さえも記載してほしくないと思っているためです。
恐らくインド以外のどの国でもこのような現象発生していると思いますが、インドではインド人の国民性もこのコミュニケーションに反映され、監査がなかなか終わらないというケースを見てきました。
また、インド人の監査人は経験のある勅許会計士であればテクニカルスキルの部分では優れていると言えますが、計画性や効率性の観点からみると、日本人に劣る部分があると分析しています。
このような状態に陥らないためにも、日本人駐在員としてはインド子会社の管理体制の見直しやコンプライアンス遵守の意識を高める必要性があると言えます。
つまり、監査が長期化している企業には少なからず管理体制上の問題があり、その改善を行わない限り、毎年監査が長期化してしまうというリスクを抱える事になります。
逆に、監査人としても監査を期限内に完了させることは監査人の責任でもあるため、監査法人に対して早く監査を終わらせるように主張することも一つの手段と言えます。
最後に、監査が仮に期限内に完了せず、遅れてしまった場合は、会社法上の年次コンプライアンスである年次申告等が期限内に完了させることができなくなるため、デフォルトとなります。
この場合、多額のペナルティーが発生するため、実際にこのような問題に陥った企業はNCLT(会社法法廷)に対して和議(Compounding)の申請をする形となります。
この和議の申請が非常に時間のかかるプロセスとなっており、かつ、申請を行えばペナルティーが免除されるというわけではなく、あくまで減額のための申請であるという事にも留意が必要です。
さらに、このペナルティーは通常企業に対して課されるものですが、インドにおいては取締役もその責任を問われ、取締役に対してもペナルティーが課される可能性があります。これについては、日本人の感覚からはあまり信用しにくいかと思いますが、実際に取締役に対してペナルティー金額が記載されたレターが届くことがあります。
少し脱線しましたが、このような事態に陥らないためにも、インド進出日系企業はコンプライアンス遵守に優先順位を持つ重要性が非常に高いと言えます。
今週は以上となります。法定監査が遅れているといった企業がいらっしゃいましたら、そのボトルネックの解消のためのヒアリングと解決策の立案をさせて頂きます。是非、お気軽にお問い合わせください。
Tokyo Consulting Firm Private Limited (India)ではインドビジネスについて、より詳しい情報を弊社の日本人コンサルタント、インド人勅許会計士・弁護士・会社秘書役がお答えします。
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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔
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