
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の北岡 光里です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「契約社員に対するGST適用と企業への影響について」についてお話していこうと思います。
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契約社員に対するGST適用と企業への影響について
インドの物品・サービス税(GST)制度において、給与や人件費に対する課税の線引きは、雇用形態によって異なります。従業員として企業に直接雇用される者に対する給与は、GST法スケジュール III によって「物品供給でもサービス供給でもない取引」と明記され、課税対象外とされています。他方、人材供給会社や派遣業者を介して企業に労働力を提供する形態は、サービス供給と見なされ、政府が定めるサービス分類(SAC)に従って課税されます。特に契約要員・派遣労働者は「99851(Contract staffing/Temporary staffing 等)」という分類に該当し、レート通知(Notification No.11/2017-Central Tax (Rate))により、標準的に 18% の GST が適用されるのが実務の基本です。
ただし、これらの課税関係は単純な判断では済まず、逆課税(Reverse Charge Mechanism, RCM)の適用範囲、入力税控除(ITC)の可否、そして請求書の適式性や分類コードの整合性など、企業の実務運用において複合的な検討を要します。
ポイント
まず、直接雇用の給与は GST 課税対象外とする制度根拠が明文化されている点が最も重要です。GST 法の制定時点から、雇用契約に起因する給与支払は「供給」ではないと明示され、税務当局・専門家の間でもこの理解は合意的です。この枠組みによって、企業は正社員等の給与部分を GST 対象取引とせずに処理できる前提が成立します。
次に、契約・派遣要員を提供する行為が「サービス供給」となる点が、公的分類制度(Scheme of Classification of Services)で裏付けられていることがポイントです。政府通知において、Heading 9985(Employment and other services)および Group 99851(Contract staffing, Temporary staffing 等)というコード体系が定められており、これを契約要員提供に適用する実務整理は法令構成上支持されます。これにより、契約要員提供は GST の対象となる「サービス」と見なされ、対応する税率が適用されます。
また、このサービスに適用される税率は、Notification No.11/2017-CT(R) 別表に基づく率で、実務上は 18% が標準税率として適用される慣例です。この税率適用の根拠は通知文書および GST の率別表で確認できます。さらに、企業がこの支出に対して入力税控除(ITC)の適用を受け得るかどうかは、CGST 法第16条(事業のための課税仕入れ)と第17条5項(ブロックド・クレジット規定)という法制度構造に依拠します。したがって、契約要員サービスが「事業遂行に必要なもの」であると認められるかどうか、請求書が GSTIN を含めて適式かどうか、分類コードと実態の整合性が取れているかどうかを、企業は慎重に判断しなければなりません。
逆課税(RCM)適用の問題も実務上の重要論点ですが、公的制度では、RCM は通知で指定された特定役務に限られ、一般の派遣・契約要員サービスが恒常的に RCM 対象になるとは規定されていません。典型例として警備サービス等が RCM 指定されており、これを契約要員提供サービスに拡張するには、通知改正や釈明が必要です。
請求書整備・分類整合・州横断対応(Place of Supply の判定)なども実務運用において見落とせない要素で、これらを適切に管理しなければ、税務リスク・控除否認リスクが顕在化する可能性があります。
まとめ
公的資料の枠組みから見れば、契約社員・派遣要員提供サービスに対する GST 課税は、制度論理上の整合性を有しています。直接雇用の給与が非課税とされること、契約要員提供が 99851 系のサービス分類に属し、通知により 18% の税率が適用されること、そして ITC や RCM の取扱いが法制度構造に基づく制約を伴うこと、これらはいずれも公文書・通知文書・法制度の中に根拠があります。
ただし実務にあたっては、単なる「契約=課税」では済まず、契約形態・実態・請求書構造・分類コード選定・州別供給地ルール等を含めた総合判断が不可欠です。特に、契約形態が「雇用に近い実態」を帯びているケースでは、誤った分類が税務争点を招きかねません。
したがって、企業は法令・通知の最新版を参照しながら、派遣業者の登録状況、請求書の正確性、サービス分類の適用妥当性、そして ITC 適用可否を含むリスク検証を行ったうえで、契約文書と内部制度を整備すべきです。こうした体制整備が、課税リスクの最小化と事業の税務的安定運営を支える基盤になるといえるでしょう。
本日は以上になります。
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