インド・グルガオン駐在員の豊田です。
今回は、日印国交樹立60周年についてお話ししたいと思います。
2012年は、日印国交樹立60周年に当たる年です。日本とインドが「日印間の平和条約」に調印したのは1952年(昭和27年)6月でした。以降、60年間に渡る交流を経て、2011年末日現在では、約1,200社の日系企業がインド進出を果たしています。
2012年はまさに、日印間の経済連携が加速する年といっても過言ではありません。日本・米国・中国・ASEAN・EUなどの他地域の経済状況、インド国内の経済状況など、外的・内的ともに、インドへの投資を優れているとみなす指標が多数見受けられています。
そのような状況の中、去る2011年12月27日及び28日、野田佳彦首相がインド・ニューデリーを訪問しました。日本経団連の米倉弘昌会長、同副会長の西田厚聰・東芝会長、川村隆・日立製作所会長、小島順彦・三菱商事会長、奥正之・三井住友フィナンシャルグループ会長、宮原耕治・日本郵船会長、大宮英明・三菱重工業社長、南アジア委員会委員長の庄田隆・第一三共会長等の錚々たる財界人が同行しました。
日印首脳会談の後、「国交樹立60周年を迎える日印戦略的パートナーシップ強化に向けたビジョン」という共同声明が発表されました。(※共同声明本文については、日本国外務省ホームページをご覧ください。)
この共同声明の中で、日印両国は、2011年2月に署名された日インド包括的経済連携協定(CEPA)の発効を歓迎するとともに,経済関係の一層の深化や社会保障協定の交渉開始を歓迎しました。この協定により、両国間の貿易及び投資の自由化及び円滑化が推進されるとともに、幅広い分野において互恵的な経済連携が深化し、両国経済が一段と活性化することが期待されています。
加えて、日本からインドへのインフラ整備協力について、一層の発展が期待されています。デリー・ムンバイ貨物専用鉄道建設計画(DFC)や、デリー・ムンバイ産業大動脈構想(DMIC)など主要なプロジェクトの推進を確認しました。
インドへの直接投資の懸念事項の一つとして、インフラ整備の遅延があげられます。電気・水道・道路・鉄道など、主要インフラ整備が改善することで、投資が活性化されることが期待されます。
また、二国間通貨スワップの取り決めを30億米ドルから150億米ドルへと拡充することを決定しました。これには、欧州でのソブリン・リスクによる通貨引き揚げに対する懸念がその背景にあります。欧州主要国での国債デフォルトに備えて、日印間でリスクヘッジが出来る仕組み作りを行うことは、世界経済からみても望ましいことと言えます。
また、原子力・レアアース及びレアメタル・高等教育機関への投資促進も確認されました。2011年に発生した東日本大震災による、福島第一原子力発電所の事故により、日本が将来重点投資分野と設定している原子力発電事業の輸出減退が懸念されましたが、インドにおいて、日本の原子力技術が生かされることになれば、世界に対して「日本の原子力事業は死んでいない」とのメッセージを送ることにもつながります。また、中国による希少金属保護に対しても、インドでの生産能力向上により、リスク分散が働き日印両国にとってプラスに働くことになるでしょう。
最後に、今回の日印首脳会談では言及されていませんが、2011年11月末に一度承認された後見送りとなった外資小売業規制緩和へ向けた動きも注目に値します。インドの2010年時点での小売市場は、約4,350億米ドルの巨大市場ですが、そのほとんどが個人経営であり、インド政府はこうした国内産業保護を目的に外資の小売業参入を規制してきました。
インドに住む日本人駐在員にとっては、日本のコンビニが住居・オフィスの近くにあるか否かで生活環境が激変することでしょう。
インド政府が小売規制緩和は、特定の個人経営者だけではなくインド国民全体の生活向上に寄与することを認識してもらいたいです。
Tokyo Consulting Firm (India)
グルガオン駐在員
豊田 英孝