インド会社設立の完全ガイド【2026年最新版】


皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の加部 新です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「インド会社設立」についてお話していこうと思います。

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 インドへの進出を検討している日本企業にとって、会社設立の手続き・費用・期間を正確に把握することは、プロジェクト成否を左右する最重要事項の一つです。本ガイドでは、2013年インド会社法(Companies Act, 2013)および外国為替管理法(FEMA)に基づく最新情報をもとに、インド会社設立の全プロセスを実務経験の視点から解説します。手続きの複雑さや現地特有のリスクを理解し、失敗のない進出計画を立てるための情報を網羅的にお届けします。

インド法人設立が注目される理由

世界第3位の経済規模と持続的成長

 インドは2023年時点でGDPが3.7兆ドルを超え、英国・フランスを抜いて世界第5位の経済大国となりました。IMFの予測では、2027年には日本・ドイツを抜いて世界第3位に浮上する見込みです。経済成長率は年率6〜7%台を維持しており、中国経済の減速が続く中、インドはアジアの成長エンジンとして世界中の投資家から注目を集めています。
 特に注目すべきは人口構成です。インドは2023年に中国を抜いて世界最大の人口大国となり、約14億4,000万人を擁します。そのうち中間所得層は3億〜4億人規模に達しており、消費市場としての潜在力は計り知れません。製造業・IT・消費財・インフラのいずれの分野においても、今後10〜20年にわたる中長期的な市場拡大が期待されます。

FDI政策の自由化とMake in India

 インド政府は2014年以降「Make in India」政策を積極的に推進し、製造業への外国直接投資(FDI)誘致に力を入れています。自動車、電子機器、医療機器、防衛産業など複数のセクターで外資規制が緩和または撤廃され、自動承認ルート(Automatic Route)で100%外資出資が認められる業種は年々拡大しています。
 2017年には外国投資促進委員会(FIPB)が廃止され、規制業種への投資承認権限は各所管省庁に移管されました。これにより手続きは窓口が分散した一方で、自動承認対象業種については余計な審査プロセスが不要となり、実質的にスピーディな進出が可能となっています。
加えて、生産連動型インセンティブ(PLI)スキームが半導体・スマートフォン・製薬・食品加工など14のセクターで導入され、一定の現地生産額を達成した企業に対して補助金が支給されます。日系製造業にとっても、こうしたインセンティブは工場立地の検討において重要な要素となっています。

サプライチェーン多元化の戦略的拠点

 中国依存リスクの分散という観点から、「チャイナ・プラスワン」戦略を採用する日本企業が増えています。インドはその最有力候補として位置づけられており、英語が公用語として機能していること、IT人材の豊富さ、そして民主主義体制に基づく法制度の安定性が評価されています。すでに自動車・二輪車・電子部品・化学品の分野で複数の大手日系企業がインドを重要製造拠点として確立しており、裾野産業のサプライヤーにとっても追随投資の好機が続いています。 

 

インド会社設立の形態比較

 インドに事業拠点を設立する場合、2013年インド会社法(Companies Act, 2013)および外国為替管理法(FEMA)に準拠して、主に以下の4つの形態から選択することになります。各形態によって活動内容に制限があるため、自社の目的・事業規模・撤退リスクを考慮したうえで慎重に検討する必要があります。

各事業形態の比較表

形態 活動範囲 資金調達 法人税率 適用法令 向いている企業
現地法人(Private Limited Company) 定款の範囲内で自由 借入・増資可 約22〜26% インド会社法 製造業・販売・サービス全般
支店(Branch Office) 限定列挙 本社送金のみ 約40% FEMA 技術サービス・輸出入販売
駐在員事務所(Liaison Office) 連絡・情報収集のみ 本社送金のみ 非課税(原則) FEMA 市場調査・顧客対応窓口
プロジェクトオフィス 特定プロジェクトのみ 本社送金のみ プロジェクト収益課税 FEMA 建設・インフラ案件
LLP(有限責任事業組合) 定款の範囲内 出資金のみ 約30% LLP法 コンサル・専門職サービス

現地法人(Private Limited Company)

 日系企業がインド進出において最も一般的に選択する形態です。株式有限責任会社のうち「非公開会社(Private Company)」として設立され、商号の末尾に「Private Limited」が付きます。定款(MOA・AOA)の範囲内であれば活動制限がなく、利益の本国送金・増資・借入れも可能です。インドにおける法人税率は、2019年の税制改正により新設製造業法人で約15%(税込実効税率は約17.01%)、その他の一般法人で約22%(実効税率約25.17%)となっています(サーチャージ・健康教育税含む)。
 デメリットは、コンプライアンス義務が多岐にわたること(法定監査・株主総会・ROC申告等)と、設立手続きに一定の期間と費用がかかることです。それでも長期的な事業展開を見据えた場合、現地法人の設立が最も合理的な選択です。

支店(Branch Office)

 本社の延長として活動する形態で、製造業や加工業への参入はRBIの特別許可が必要です。認められている活動は限定的であり、「輸出入取引」「外国企業の代理」「研究開発」「テクニカルサービス」などに限られます。借入は不可で、活動資金は本社からの送金か自ら得た収益で賄わなければなりません。
 重大なデメリットとして、支店の法人税率は現地法人より高く、インドで利益が出始めると税負担が大幅に増加します。また、設立・閉鎖ともにRBIの審査が必要で、本社の財務状況(過去数期の損益)が審査対象となります。進出初期に赤字が続いている場合、設立許可が下りないケースもあります。

駐在員事務所(Liaison Office)

「本社とインド国内顧客との連絡拠点」として定義される形態で、営業活動・収益獲得は一切禁止されています。主な用途は市場調査、顧客との連絡調整、輸出促進活動の支援です。認可期間は3年で、以降は3年ごとの更新が必要です。
 注意すべき点として、近年インド当局による駐在員事務所への税務調査が厳しくなっており、実質的に営業活動を行っているとみなされた場合は「みなし課税」が適用されるリスクがあります。所得がゼロであっても毎期の法人税申告書提出と法定監査受審が義務付けられているため、「申告不要」と誤解しないことが重要です。

 

インド会社設立の手続き完全ロードマップ

 インドに現地法人(Private Limited Company)を設立する際の標準的なプロセスを以下に解説します。現在はSPICe+(Simple Proforma for Incorporating Company electronically Plus)フォームを使ったオンライン手続きが主流であり、多くのステップを一括処理できるようになっています。

ステップ1:取締役識別番号(DIN)の取得

 DIN(Director Identification Number)は、会社の各取締役に割り当てられる固有番号です。現在はSPICe+フォームの提出と同時に最大3名のDINを一括取得することが可能です。なお、一人の取締役が兼任できる公開会社の取締役数は10社まで、非公開会社含む場合は最大15社と会社法165条で定められており、DINを通じてこの制限が管理されています。
 

 DINを取得したすべての取締役は、毎会計年度末(3月31日)時点でDINが有効な場合、翌年9月30日までに「Form DIR-3 KYC」を提出して身元情報を申告する義務があります。
所要期間:SPICe+と同時取得のため実質0日

ステップ2:商号申請(RUN / SPICe+)

 希望する社名が既存の登録会社と類似している場合、先行会社から「No Objection Certificate(NOC レター)」を取得する必要があります。日本の親会社と類似した社名をインド子会社に使用する場合も、親会社からのNOCレターと公証・インド大使館認証が必要となります。
商号申請は、MCAウェブサイト上のRUN(Reserve Unique Name)サービスまたはSPICe+フォームを通じて行います。希望商号が審査を通過し承認されれば、以降のステップに進めます。
承認期間:申請から1〜2週間

ステップ3:SPICe+フォームの提出

 SPICe+(INC-32)フォームは、会社設立のための中核となるオンライン申請フォームです。2016年に導入されたSPICeフォームがさらに進化したもので、以下の手続きを一括で処理できます。

・会社の登記申請(設立証明書取得) ・PAN(納税番号)の取得 ・TAN(源泉徴収番号)の取得 ・DINの取得(最大3名) ・EPFOおよびESIへの登録 ・銀行口座開設申請(AGILE-PROフォームと連携)

 SPICe+フォームには基本定款(MOA:Memorandum of Association)と附属定款(AOA:Articles of Association)を電子的に作成・添付する必要があります。eMOA(INC-33)およびeAOA(INC-34)として電子署名を付して提出します。
所要期間:書類準備含めて2〜4週間

ステップ4:定款(MOA/AOA)の作成

 基本定款(MOA)には、会社の目的(Object Clause)・授権資本金額・発行予定株式数・額面金額などを記載します。事業目的は将来の事業展開を見据えて広く設定することが推奨されます。後からの定款変更は株主総会決議と会社登記局(ROC)への届出が必要となり、コストと時間がかかります。
 附属定款(AOA)には、株主総会・取締役会の運営方法、株式譲渡制限、配当の決定手続きなど会社の内部規則を定めます。日系企業の場合、合弁相手がいる場合は株式譲渡制限や取締役の指名権、重要事項の拒否権(Veto Rights)を詳細に規定しておくことが、後のトラブル防止に極めて重要です。

ステップ5:設立証明書(Certificate of Incorporation)の取得

 MCAがSPICe+フォームおよび添付書類の審査を完了すると、会社登記局(ROC)から設立証明書(Certificate of Incorporation)が発行されます。この証明書が発行された時点で、法的に会社が成立します。証明書にはCIN(Corporate Identification Number)が付与されます。
所要期間:書類受理後5〜10営業日

 

ステップ6:デジタル署名証明書(DSC)の取得

 すべての申請書類はインド企業省(MCA:Ministry of Corporate Affairs)のウェブサイトを通じたオンライン申請で行われるため、申請者は電子署名(DSC:Digital Signature Certificate)を取得する必要があります。
 DSCは、ROCから委託を受けた認定民間機関(TATA Consultancy Servicesなど)に申請します。申請に必要な書類は、パスポートのコピー・住所証明・公証人認証・アポスティーユ(外務省認証)です。日本とインドはハーグ条約(認証不要条約)締結国のため、インド大使館での認証は原則不要ですが、リスク回避のために大使館認証を取得する企業もあります。
 公証役場への手数料は、私署証書の認証(5,500円)と外国文認証(6,000円)の合計で約11,500円が目安です。
所要期間:1〜2週間

ステップ7:資本金の送金

 会社設立後、日本の親会社からインドの子会社銀行口座に外国直接投資(FDI)として資本金を送金します。送金にはFCGPR(FC-GPR:Foreign Currency – Gross Provisional Return)の報告義務があります。

ステップ8:RBIへの事後報告

 資本金の払込が完了した後、30日以内にインド準備銀行(RBI)に対して会社設立の事後報告(FC-GPR)を行う必要があります。この報告を怠ると、FEMA違反として罰則が課される可能性があります。報告はオンラインシステム(FIRMS)を通じて行われます。

設立完了までのタイムライン

フェーズ 主な作業 目安期間
準備段階 DSC取得・定款設計・商号確認 3〜4週間
申請段階 SPICe+提出・審査 2〜3週間
設立後手続き 銀行口座開設・資本金送金・RBI報告 2〜4週間
合計 約2〜3ヶ月

実務上は、書類の準備不備や当局の審査遅延により3〜4ヶ月を要するケースも少なくありません。特に大型の合弁プロジェクトや規制業種への投資では、事前承認取得も含めると6ヶ月以上かかることもあります。

 

インド現地法人設立にかかる費用と期間

設立費用の目安

 インドでの現地法人設立にかかる費用は、資本金規模・使用する専門家・設立地州によって異なります。以下はあくまで目安です。

費用項目 目安金額(円換算) 備考
DSC取得費用 5,000〜15,000円 取締役人数×費用
公証・アポスティーユ費用 50,000〜100,000円 書類数による
インドの弁護士・CA費用 300,000〜800,000円 規模・複雑性による
登記費用(政府手数料) 20,000〜80,000円 資本金規模による
銀行口座開設費用 実費のみ 銀行による
合計(専門家費用含む) 約40万〜150万円

 なお、日本側で日印ビジネスに精通した会計士・弁護士・コンサルタントを活用する場合、別途コーディネート費用が発生します。現地の手続きを日本から完全リモートで行うのは難しく、インド側に信頼できるパートナー(CA:Chartered Accountant)を確保することが実務上不可欠です。

最低資本金

 インド会社法上、非公開会社の設立に最低資本金の法定要件はありません。理論上は1ルピー(約1.7円)から設立可能です。ただし実務的には、最初の2〜3年の事業運転資金として十分な資本金を設定する必要があります。一般的な日系企業の場合、製造業であれば1億〜5億円規模、販売・サービス業でも2,000万〜1億円程度を資本金として拠出するケースが多く見られます。
 資本金が少なすぎると、インド税務当局から「過少資本金(Thin Capitalization)」と認定されるリスクがあり、移転価格税制の観点からも問題が生じる可能性があります。

設立後のランニングコスト(年間)

項目 目安費用(年間)
法定監査費用(CA費用) 50万〜200万円
税務申告費用 30万〜100万円
会社秘書役(CS)費用 20万〜60万円
ROC年次申告費用 5万〜20万円
その他コンプライアンス費用 30万〜100万円
合計目安 年間約150万〜500万円

失敗事例から学ぶインド会社設立の注意点

失敗事例①:合弁相手トラブルによる事業停止

 製造業A社のケース:インド進出にあたり現地有力企業と51:49の合弁会社を設立したものの、定款のAOAに取締役指名権や重要事項への拒否権の規定が不十分であったため、事業方針の対立が発生。インド側パートナーが取締役会の多数を占め、日本側の意向が反映されない経営状況となりました。最終的には合弁解消の交渉に2年以上を費やし、解消時の株式評価交渉も難航しました。
教訓: 合弁契約(JV Agreement)と附属定款(AOA)において、重要事項(予算・資本政策・主要役員の任命・関連当事者取引)に対する日本側の拒否権を明確に規定すること。インド側パートナーのバックグラウンドチェック(Due Diligence)を徹底すること。

失敗事例②:RBI報告漏れによるFEMA違反

 IT企業B社のケース:資本金払込後のRBIへのFC-GPR報告を、担当者の異動と情報引き継ぎの不備により期限(30日)内に提出できませんでした。この報告遅延はFEMA違反となり、コンパウンディング(和解金制度)による罰則金の支払いを余儀なくされました。また、その後の増資や配当送金手続きにも影響が出ました。
教訓: 設立後のコンプライアンスカレンダーを事前に整備し、担当者を明確化すること。RBI報告・ROC年次申告・所得税申告など定期的な法定提出物のスケジュールを、インド側CAと共同で管理する体制を作ること。

失敗事例③:駐在員事務所への「みなし課税」

 商社C社のケース:インドの市場調査・顧客対応を目的に駐在員事務所を設立しましたが、担当者が顧客との価格交渉や商談成立の役割を担っていたことが税務調査で指摘されました。当局は「実質的に営業活動を行っている」と認定し、みなし課税を適用。数年分の遡及課税と加算税・延滞税が課され、多額の追徴税額が発生しました。
教訓: 駐在員事務所のスタッフの役割・活動内容を厳密に管理し、連絡・情報収集の範囲を超えない体制を維持すること。営業活動の必要性が高まった場合は、速やかに現地法人への移行を検討すること。

失敗事例④:名義取締役問題

製造業D社のケース:インドの現地法人設立にあたり、設立を支援した現地コンサルタントが「名義上の取締役」として登録されていたケース。事業が軌道に乗った後、この名義取締役が権限を主張してトラブルとなり、取締役変更の手続きにも多大なコストと時間を要しました。
教訓: 取締役会構成は設立時から慎重に設計すること。名義取締役を使わず、実質的に経営権を持つ適切な人物を取締役として登録すること。現地CA・弁護士の選定においても、信頼性の高いパートナーを選ぶことが重要です。

失敗事例⑤:撤退時の従業員解雇問題

 小売業E社のケース:業績不振によりインドからの撤退を決定した際、200名超の従業員を雇用していたため、インド労働争議法(Industrial Disputes Act, 1947)に基づく州政府への事前認可申請が必要となりました。認可取得に約1年を要し、その間も賃金・保険料の支払いが継続。個別の雇用契約解消交渉では、一部従業員が家族を巻き込んで交渉を長期化させ、法定退職金の数倍にのぼる和解金を支払う事態となりました。
教訓: インド進出の計画段階で「出口戦略(Exit Strategy)」を設計しておくこと。100名以上の従業員を抱える前に規模の管理を意識すること。雇用契約書・就業規則を適法に整備し、法定退職金(グラチュイティ)を正確に算定した予備費を確保しておくことが重要です。

 

設立後に必要な税務・労務対応

主要税務コンプライアンス

法人所得税(Corporate Income Tax)

インドの法人所得税は、新設製造業法人で実効税率約17.01%、国内一般法人で約25.17%、外資系法人(支店を含む)で約41.64%(いずれもサーチャージ・健康教育税含む)です。会計年度(4月1日〜3月31日)終了後、所定の期限内に申告書を提出する必要があります。

物品・サービス税(GST:Goods and Services Tax)

 2017年7月に導入されたGSTは、日本の消費税に相当するインド統一間接税制度です。標準税率は18%(物品・サービスにより0%・5%・12%・18%・28%の5段階)。年間売上高が一定閾値(現行2,000万ルピー、特定業種は100万ルピー)を超える事業者はGST登録が義務付けられ、月次または四半期の申告・納付が必要です。

源泉徴収税(TDS:Tax Deducted at Source)

 インドでは、給与・配当・利子・ロイヤルティ・委託費など多様な支払いに対して、支払者が源泉徴収し税務当局に納付する義務があります。源泉徴収率は取引種別によって異なり(例:居住者への委託費10%、非居住者へのロイヤルティ10〜20%等)、毎月15日までに前月分を納付する必要があります。源泉徴収漏れは、支払者側が未納税額と同額の罰則を負う可能性があるため、厳格な管理が求められます。

移転価格税制(Transfer Pricing)

 インドの移転価格税制は世界的にも厳格な部類に属します。日本の親会社との取引(製品売買・技術供与・ロイヤルティ・管理費配賦等)はすべて移転価格税制の適用対象となり、独立企業間価格(Arm’s Length Price)に基づく価格設定の文書化が義務付けられます。文書化不備や価格の恣意性が認定された場合、重加算税(150〜200%)が課せられます。移転価格の事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)の活用も有効な手段です。

労務コンプライアンス

従業員積立基金(EPF:Employees’ Provident Fund)

 20名以上の従業員を雇用する事業者は原則EPFへの登録が義務付けられます。拠出率は基本給(月額15,000ルピー上限)の12%を事業者・従業員が各々拠出します。
従業員国家保険(ESI:Employees’ State Insurance) 10名以上の従業員を雇用し、月収21,000ルピー以下の従業員を抱える事業者はESIへの登録が必要です。拠出率は事業者3.25%、従業員0.75%です。

グラチュイティ(Gratuity)

 5年以上勤続した従業員が退職・死亡・障害を理由に退職した場合に支払われる法定退職金です。計算式は「最終月基本給 × 勤続年数 × 15/26」です。グラチュイティ支払義務の引当金を適切に計上していない企業が多く、撤退時に想定外の費用となるケースがあります。

労働法コンプライアンス(新労働法)

 インドは2019〜2020年に複数の旧労働法を統合・改編した「新4大労働法典」(賃金、労使関係、社会保障、職業安全に関する各法典)を制定しています。施行タイミングは州ごとに異なるため、操業する州の最新動向を継続的に確認する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q1:インドでの会社設立に最低資本金はいくら必要ですか?

 インド会社法上、非公開会社(Private Limited Company)の設立に最低資本金の法定要件はなく、理論上1ルピーから設立可能です。ただし実務上は、事業計画に見合った十分な運転資金を確保するため、事業規模に応じた資本金設定が必要です。製造業であれば1億〜数億円、サービス業でも数千万円程度が一般的です。資本金が著しく少ない場合は移転価格課税リスクも高まります。

Q2:インド会社設立にかかる期間はどのくらいですか?

 書類準備から設立証明書取得、資本金送金、RBI報告完了までを含めると、標準的なケースで2〜3ヶ月が目安です。書類不備や規制業種への投資承認が必要な場合は4〜6ヶ月以上かかることもあります。SPICe+フォームの普及により手続きは効率化されましたが、日本からの公証・アポスティーユ手続きに時間がかかることが多いため、早期着手が重要です。

Q3:インド現地法人の取締役にはインド人が必要ですか?

 インド会社法上、非公開会社は最低2名の取締役を置く必要があり、そのうち少なくとも1名は「インド常住者(Resident Director)」でなければなりません。インド常住者とは、直前会計年度に通算182日以上インドに居住した者を指します。日本人駐在員が取締役を務める場合は、実際に182日以上インドに居住している必要があります。

Q4:外国からインドへの100%子会社設立は可能ですか?

 ほとんどの業種では、自動承認ルート(Automatic Route)により100%外資出資の現地法人を設立できます。ただし、防衛・メディア・銀行・保険・小売(マルチブランド)など一部業種では出資比率の上限や政府承認ルートへの移行が求められます。投資予定業種のFDI規制はDPIIT(旧DIPP)が公表するFDIポリシーで確認し、最新情報を把握することが必要です。

Q5:駐在員事務所と現地法人の違いは何ですか?

 駐在員事務所は市場調査・顧客連絡など「連絡拠点」としての活動のみが認められ、営業活動・収益獲得は禁止されています。一方、現地法人は定款の範囲内で製造・販売・サービス提供など事業活動全般を行うことができます。駐在員事務所は進出の第一歩として使われることもありますが、実質的な営業活動の必要性が生じた場合は速やかに現地法人へ移行する必要があります。

Q6:インド撤退(清算)にはどのくらいの時間がかかりますか?

 インドからの撤退は、現地法人の場合でも最低1〜2年、従業員の解雇交渉が長期化した場合は3〜5年以上かかるケースがあります。清算手続きには通常清算(任意清算)と裁判所による清算があり、いずれも税務当局・ROC・RBIへの申請・報告が必要です。清算手続き中も法定監査・申告は継続して行う義務があり、コンプライアンス不遵守の場合は罰則が課されます。撤退コストを見越した事前の財務計画が不可欠です。

Q7:インドでGST登録は必須ですか?

 物品・サービスの売買を行う事業者は、年間売上高が一定閾値(標準業種は2,000万ルピー、一部業種や州では100万ルピー)を超えた場合にGST登録が義務付けられます。州をまたいで取引を行う場合や、電子商取引を行う場合は閾値に関わらず登録が必要です。GSTコードは税務番号(PAN)に紐づいた登録番号であり、仕入税額控除(Input Tax Credit)の管理においても重要な役割を果たします。

 

インド会社設立を成功させるために

戦略設計を最優先に

 インドへの進出を決定する前に、「何のために・どの市場セグメントで・どのビジネスモデルで」インドに進出するのかという戦略設計が不可欠です。会社設立の手続きは専門家に任せることができますが、事業戦略の設計は経営陣が自ら考え抜かなければなりません。市場環境・競合・規制・パートナーシップの可能性を事前に調査し、進出形態の選択(現地法人・支店・駐在員事務所)や投資規模、現地化の方針を固めてから、設立手続きに着手することが重要です。

専門家チームの構成と役割分担

 インド会社設立を成功させるためには、以下の専門家との連携が実務上必要不可欠です。
インド側専門家: インドの勅許会計士(CA)・弁護士・会社秘書役(CS)による現地法人設立支援・税務申告・労務管理のサポート。現地の実務事情に精通した信頼できるCAの選定が、コンプライアンスリスク管理の要となります。
日本側専門家: 日印ビジネスに精通した日本の公認会計士・税理士・弁護士によるクロスボーダー税務(移転価格・日印租税条約・外国税額控除)の設計支援。JETRO(日本貿易振興機構)のインド事務所も、進出前の情報収集・専門家紹介において無料で活用できる重要なリソースです。

進出後のPDCAサイクルを設計する

 インドの事業環境は変化が速く、税制・労働法・FDI規制が頻繁に改定されます。設立後も定期的に現地の法令改正情報をキャッチアップし、必要に応じて事業形態・税務戦略・組織構造を見直すPDCAサイクルを設計することが長期的な成功につながります。
 特に、設立から3〜5年後には移転価格の文書化見直し・グラチュイティ引当の適正化・GSTの仕入控除管理の棚卸しなど、コンプライアンスの総点検を行うことを推奨します。

 インド会社設立の手続きは複雑であり、実務上のリスクも多岐にわたります。制度の理解だけでなく、現地の商慣行や人事・労務・税務に精通した専門家チームを構築することが、インドでの事業成功への最短路です。
 当事務所では、インド進出を検討している日本企業の経営者・海外事業責任者の方々を対象に、進出形態の選定から会社設立・設立後コンプライアンスまでを一貫してサポートしております。まずはお気軽に無料相談をご活用ください。貴社の状況に合わせた具体的なアドバイスを提供いたします。

本記事は2026年2月時点の情報に基づいており、インド会社法・税法・外為法の改正により内容が変更される場合があります。具体的な手続きや判断に際しては、必ず専門家にご相談ください。参照:JETRO(日本貿易振興機構)インドビジネス情報・MCA(インド企業省)・RBI(インド準備銀行)各公式サイト。

 

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