【ベトナム】子会社の決算早期化~3つの会計思考~

会計

ベトナム拠点の花嶋です。

ベトナム子会社の決算早期化をテーマにお送りします。

 

ベトナムの国外に親会社がある場合、親会社の利害関係者の意向に沿って、四半期や年次決算を適時、適切な情報の開示が要求されています。

 また、近年の新型コロナウイルス等の影響があったように、経営環境が目まぐるしく変化する近年においては、適切な経営判断をするべく、スピード感をもって財務報告をする経営管理も必要になってきています。

 さらに、ベトナムでは、特定の企業に対して2021年~2025年までにIFRSの任意適用期間が開始し、2026年までには強制適用するような流れも出てきています。今後は、グループ経営管理を強化していくために、グループ内の決算期統一をしていく企業も増えてくるかもしれません。また、IFRSを導入する場合、ベトナム子会社や関連会社の決算期を統一することも必要になってくるでしょう。今後、なるべく早いタイミングでのベトナム子会社の決算早期化への取り組みが、IFRS導入のために開始が必要です。

 IFRS導入に限らず、自社の決算を早め、自社の財務状況を見ることは、経営状況を素早く把握して次の一手を考えるという意味で、ベトナム企業の経営者にとっても重要なものですので、自社の経営の改革、会計の仕組化などを検討されている方にも何かヒントになるものがあれば幸いです。

 

今回は、3つの会計思考についてご紹介します。それでは見ていきましょう。

 

 下記の図のように会計を3つに分けてみました。この中でも、制度会計と管理会計の2つに種類を絞れます。制度会計は、ルールに従うのが義務で、利害関係者に説明する時にも使います。このルールは他社と統一されます。なぜなら、ベトナムの法律(ルール)にしたがって税務申告処理や財務諸表の作成をするからです。つまり、制度会計に当てはまるのは、税務会計や財務会計となります。一方で、管理会計は社内向けにアレンジが可能です。難しい印象があるのは制度会計で、どちらかと言うと取り組みやすいのは管理会計の方です。ただし、自由にカスタマイズできるので、目的を持って分析することが必要です。

 経営の命運を分けるのは、社長やベトナム人マネージャーが策定した戦略を実行するベトナム人スタッフ(従業員)の会社の利益に関するリテラシーを高める教育だといえます。従業員教育には、どの会計の考え方を使えばいいのかを下記で見ていきます。

 

目次

1.税務会計

 ベトナム拠点の設立をするとまず一番初めに気になるのが税金(税務)です。税務調整によって、支払い税額を下げるのは問題ないでしょう。ただし、納税額を下げる目的で利益を下げることは、経営上、得策とは言えません。投資家側(ベトナム子会社でいうと親会社等)からの目線で考えると、例えばベトナム海外子会社で利益を出せば、日本の親会社の方に利益還元をした際、ベトナム国内で税金が一切取られずに、還流できるメリットがありますので、利益を出す方が得だからです。

 税務会計で行うことといえば、月次、四半期、年度の税務申告や監査です。税務会計を重視する会社は、いかにして利益を抑え納税額を減らすのかを考える傾向にあります。そうすると、当然ながら、利益率はゼロに近くなります。税金の支払い額を減らすことに注力しているので、月次決算は関係ありません。また、税務なので、会計を通じて、利益責任を負わせるなどして従業員の育成ができません。

 

2.財務会計

 ベトナム法人が成長期や成熟期にあり、段々会社が大きくなってきたとき、投資活動や金融会社関係からお金を借る財務活動をする際、資金繰りを見るようになることがあります。ここで初めて、ベトナム法人の財務会計に着目してきます。残念なことに、借入をし、返済が完了するとまた財務諸表に関心が薄れるケースもあります。ただし、続けて投資をしていく段階になったときには、資金繰りを毎月、月次でお金の動きを見ることが多いでしょう。

 そして、その後に貸借対照表(B/S)を見るようになります。同時に、損益計算書(P/L)に関しては、B/Sの資金繰り中心に見る場合には、売上中心でP/Lを見るようになる傾向があります。一般的に、月末で債権を締めている企業が多いので、月末で売上が上がり(数字が確定し)ます。このような状況の中では、月次の決算書の作成スピードが遅くても気にならないことがあります。また、利益も売上に比べれると気にならず、利益率も低くなる傾向があります。財務会計を通じて、利益責任は負わせるということもないので、従業員の育成はできません。

 

3.管理会計

 管理会計では、事業やプロジェクト別、製品カテゴリー別等で利益を見ていくことができます。日本でいう部署単位、または課の単位まで落とし込んで利益を見ていく場合は、稲森和夫さんの経営実体験から生まれた経営管理手法でもある「アメーバ経営」とも言ったりします。当社の場合、豊臣秀吉の五人組制度を導入し、これを「ドリームチーム」と称し、チームごとの業績管理を行っています。

 各事業部門や製品カテゴリーの利益責任をベトナム人マネージャーやチームリーダーに落とし込めば、ベトナム法人の幹部層には、会社の経営層側の視点で事業運営を学び、体感していけるはずです。この結果、無駄な給与交渉の減少や経費削減、利益率向上の思考を身に着けることができます。

 つまり、マネジメント層のベトナム人スタッフの育成には、管理会計や五人組制度(部門別やチーム別単位での業績管理)を導入していくことが不可欠です。ベトナム人幹部層の育成のために管理会計を導入し、部門やチーム別等で財務状況を伝え、業績管理のローカライゼーションを進めていく必要もあるでしょう。

 このように、利益を中心に経営を管理したい場合、月次決算を早める必要があります。ただし、その前に月次の「決算早期化」をするためには、会計業務のプロセスの改善が必要となります。この毎月の会計業務のプロセス改善により、会社の管理コストは下がります。こうして、月次の決算早期化を図ることができ、月末の空いた時間で利益の検証を素早く行うことが可能になり、利益率の上昇にもつながっていきます。

 

◆管理会計による従業員教育の流れ

1)管理会計により利益責任を負わせる

2)ベトナム人幹部層が会社の利益を見るようになる

3)業務改善、決算早期化により管理コストの削減ができる

4)月末の空いた時間で会社をよりよくする為業務の検証の時間を早めに取ることができる

5)社員育成(利益に対するリテラシー強化)が行うことができる

 

次回は、「会計の見える化」についてご紹介いたします。

 

これまでのやり方をちょっと変えてみたいと思ったらぜひ決算早期化、管理会計の導入、クラウド型会計システムの導入などを検討してみてください。

 また、我々人間が定期的に健康診断を行うように、会社にも定期的な健康診断は必要です。財務といった健康診断結果をもとに、会社の健康(業績)を改善していくには、さらに良くしていくには何が必要なのかを見ていくことも必要です。さらに、定期的な進捗管理により、会社のメンテナンスをすることで、会社の健康状態(経営状況)に合わせて処置(戦略の見直しや改定等)も必要になってきます。

 会計の見える化をすると、そこから見えてくる人事の見直し、もしくは税務の見直し、キャッシュ管理の見直し、営業方法の見直し、社内の業務の見直し等の課題感も見えてきます。当社では、管理会計ツールの提供やそれを使った財務諸表の作成サポートだけでなく、人事評価の見直し、税務調査対応のための税務レビュー、キャッシュフロー計算書の作成、KPI管理の提案などの様々な角度からお客様の経営サポートをさせていただいています。

 貴社ベトナム法人に関する正しい情報、有用な情報を提供し、本業に集中できるようにご支援させていただきます。何か自社内に課題感があれば、お問い合わせください。まだ何が課題であるかが不明である場合は、会社の無料検診(財務のチェック)によって会社の課題を把握するためのサポートもさせていただいています。

 

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東京コンサルティングファーム
ベトナム ハノイ
花嶋 拓哉


Mail: hanashima.takuya@tokyoconsultinggroup.com

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