
■親子ローンの返済免除を受けると、税金が増えます。
タイ進出企業の多くは、進出後に親子ローン(親会社からの借入れ)を行い、資金調達をするケースが多くあります。タイでは過小資本税制(資本に対して借入金が一定の比率を超えると、借入金にかかる支払利息が一部損金不算入と制限される制度)がないということもあり、資本金を少なくし、親子ローンで資金を調達する企業が多いのです。
通常は、進出後黒字になり、資金に余裕が出てきた時期に返済をすることになりますが、親子ローンを返済せずに、親会社から免除をしてもらうケースがあります。タイの子会社としては、返済をする必要がないので、メリットのように感じますが、この時に税金が増える可能性があります。
■なぜ親子ローン返済免除で税金が増えるのか?
親子ローンの返済免除をすると、以下のような会計処理を行います。
(借)長期借入金 xxx THB/(貸)返済免除益 xxx THB
ご覧の通り、収益として計上されます。そのため、法人所得税の申告(P.N.D.50)を行う際に益金として算入され、結果として法人所得税が課税されます。具体的に、以下のような場合どれくらい法人所得税が増えるのかみていきましょう。
(例)資本金 200万THB
親子ローン 400万THB
A社は親会社からの借入金400万THBの返済免除を受けた。
⇒この場合、「長期借入金 400万THB/(貸)返済免除益 400万THB」という会計処理を行います。タイの現在の法人所得税率は20%(2015年12月時点)となりますので、80万THB(400万THB×20%)が税金として増えることになります。
■注意すべき類似の取引
上記のような取り扱いは、親子ローンだけではなく、負債の免除を受ける場合に同様になされます。例えば、役員からの借入、買掛金、未払金などの支払免除を受けた場合も同様です。
■親子ローンの返済免除は慎重に・・・。
「タイ子会社が黒字になったものの、親子ローンの元本を返済するほどの余裕はなく、また親子ローンを残しておくと、支払利息の支払いが継続してしまう」、そんな状況で親子ローンの返済免除を検討することがあるかと思います。親子ローンの返済免除は一つの選択肢ではありますが、上記のように法人所得税の増加になり、結果的にキャッシュアウトの増加につながる可能性がありますので、慎重に行う必要があります。なお、親会社で債権を放棄する場合の取り扱いについても、ご留意頂ければと思います。
以上
東京コンサルティングファーム
長澤 直毅
nagasawa.naoki@tokyoconsultinggroup.com