フィリピン移転価格調査、本格化?!

税務

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

 

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】

No.87<フィリピン移転価格調査、本格化?!>

 

今回は「移転価格調査ガイドライン」について

 

2019 年8月にBIRより移転価格調査ガイドライン(RAMO No.1-2019)が公表されました。

 

近年、ベトナム・タイなどASEAN諸国で移転価格税制の規制が厳しくなる中、まずはフィリピンでの移転価格に関する現状を振返ってみます。

 

・2013年1月に出された移転価格ガイドライン(Revenue Regulation No.2-2013)で文書化義務が規定。

・当該ガイドライン上では、国外関連者だけでなく、国内関連者も対象と記載されるが、関連者の定義は、支配関係の有無(出資割合、経営の管理・支配)であり、明確な数値基準は規定されていない。

・事前確認制度(APA)など具体的なガイドライン不透明な状況が続いている。

・毎年、法定監査の期限(年度末から3か月と15日)以内に移転価格の書類を更新するという同時文書化の規定があるが、これをしなくても罰金はない。

・BIRの調査が入った場合には、関連者間取引について合理的な説明ができず、罰金を払うことになるリスクはあるが、その調査もこれまで実施されていない。

 

結果として、移転価格調査など具体的なガイドラインはその後長らく公表されず、現在に至るまで調査が本格的に行われていない状況が続いていました訳ですが、今回、ようやく移転価格調査ガイドラインが公表されたという流れになります。

 

当該ガイドラインの目的としては、BIR担当官に対して納税者と関連者との間の取引について標準的な手続きと手法を定め、BIR内での移転価格に係る調査の質を担保すべく、調査ガイドラインのプロセスが明記した形になります。

 

当該移転価格調査のプロセスは、3段階あると記載されています。

 

  • 準備段階フェーズ

BIR担当官が納税者に対して関連者間取引に関する情報や書類を要求するほか、必要に応じ て納税者とのミーティングを行うことを規定。

 

  • 調査実施フェーズ

BIR担当官が納税者の事業の状況に応じた最適な移転価格算定方法を選択し、独立企業間価格の算定することを規定。

 

  • レポート作成フェーズ

分析結果を踏まえ、BIR担当官は移転価格調査レポートの作成を行う。また、レポート最終化の前に全ての指摘事項について、納税者とディスカッションを行うべきことが規定。

 

なお、準備段階フェーズにおいては、BIRは納税者に対して、書面により以下の情報を要求できることも規定されており、納税者はBIRからの要求に従い、下記 a-f のデータを提出する必要があります。

提出期限については調査ガイドラインに記載がなく、通常の税務調査を念頭に置くとレター受領日から5~15営業日以内が想定されます。

  1. 関連者間の取引(Annex 3)
  2. 財務諸表のセグメント情報(Annex 4)
  3. サプライチェーン管理分析(Annex 5)
  4. 機能・資産・リスク分析(”FAR Analysis” Annex 6)
  5. 事業の特性(Annex 7)
  6. 比較可能性分析のデータ(Annex 8)

 

*a-e についてはテンプレートがAnnexとして公開されており、納税者はテンプレートに必要情報を記載する形式

 

企業側では今後、移転価格調査が本格化することを見込んで、以下の対応が必要になると想定されます。

 

・調査ガイドラインを念頭に移転価格ポリシーやドキュメンテーションなどの資料準備

・一般の税務調査の枠内で移転価格調査が実施されることが想定され、不合理な指摘と長期化リスクに対する税務調査プロセス全体の把握と対策

 

今後、BIRの一般的な税務調査が引き続き頻繁に実施される中で、移転価格調査がどこまで実際に行われるのか、今後のBIRの動向を注視していく必要がありそうです。

 

最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。

フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。

中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、

是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。

 

今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

今週もどうぞよろしくお願い致します。

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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