フィリピンにおけるGISフォーマット改訂:ベネフィシャルオーナー情報の追加?!

法務

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

 

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】

No.88<GISフォーマット改訂:ベネフィシャルオーナー情報の追加?!>

 

今回は「GISの新フォーマット」についてです。

2019年7月26日にSEC(証券取引委員会)より新しいGIS(日本で言う登記簿謄本)フォーマットに関する通達(SEC Memorandum Circular No. 15-2019)が公表されました。

 

GISは、会社名・住所・株主・役員・取締役・資本構成等の会社に関する基本情報が含まれており、

従前よりフィリピンにおける全ての内国法人は、毎年、年次株主総会から30日以内にGISをSECに提出することが、AFS(監査済み財務諸表)と併せて年次コンプライアンスの一つとなっています。

 

また、SECに提出された各企業の基本情報はSEC I-viewというシステムを通じて第三者でも閲覧可能です。

 

本通達において、マネーローンダリングやテロ資金供与への対策として、会社が実質的に誰によって所有/支配されているのかを明らかにすべきとし、各企業にベネフィシャルオーナー情報を追加的にGISに記載するよう求めた点が、変更事項になります。

 

よって、2019年7月31日以降に提出されるGISに関して、{Beneficial Ownership Disclosure}というページが新たに追加された新フォーマットの適用が義務化されているのでご留意下さい。

 

 

本通達では、ベネフィシャルオーナーについて、企業を最終的に所有または支配する自然人、または企業を実質的に支配する自然人を指すと定義しています。

 

EX)報告企業の議決権、または資本の少なくとも25%を直接的または間接的に所有している自然人※所有率の計算についてはGrandfather Ruleを用いる。

 

仮に、個人株主Aが企業Bに50%出資しており、企業Bが企業Cに50%出資している場合、個人株主Aは企業Cを25%所有していると計算(50%×50%)され、個人株主Aが企業Cのベネフィシャルオーナーに該当します。

 

各企業はベネフィシャルオーナーを特定し、ベネフィシャルオーナーに係る以下の情報をGISフォーマットに記載する必要があります。

 

a.ベネフィシャルオーナーのフルネーム

(苗字、名前、ミドルネーム)

b.居住地の住所

c.生年月日

d.国籍

e.納税者識別番号(TIN)

f.企業の所有率(%)

 

なお、本通達ではベネフィシャルオーナーに係る上記の情報については外部の第三者には開示されず(SEC I-Viewでは閲覧不可)、法の執行等のために必要になる場合に所轄官庁のみ閲覧ができると記載されています。

 

加えて、ベネフィシャルオーナーに変更があった場合、変更から7日以内にSECに報告(GISの更新)する必要があり、ベネフィシャルオーナー情報開示に関して違反が見つかった場合、以下の罰金が科すという規定が記載されています。

 

Ⅰ.利益剰余金が50万ペソ未満の会社

a.1回目の違反    10,000ペソ

b.2回目の違反    20,000ペソ

c.3回目の違反    50,000ペソ

d.4回目以降の違反 100,000ペソ

Ⅱ.利益剰余金が50万ペソ以上500万ペソ未満の会社

‐上記の2倍の罰金

Ⅲ.利益剰余金が500万ペソ以上1000万ペソ未満の会社

‐上記の3倍の罰金

Ⅳ.利益剰余金が1000万ペソ以上の会社

‐上記の4倍の罰金

 

最後に、新GISフォーマットの遵守状況について、SECは各報告企業での実地調査や他の政府機関やAMLC(マネーロンダリング防止当局)等から情報を入手する可能性についても言及しているので、今後の動向に注視していく必要があります。

 

 

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今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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