小規模企業向けフィリピン財務報告基準(PFRS for SE)の適用開始

会計

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

 

今回は、フィリピンの小規模企業向け財務報告基準についてお伝えします。

 

2018年3月26日に証券取引委員会(SEC – Securities and Exchange Commission)から小規模企業向けフィリピン財務報告基準(PFRS for SE‐Philippine Financial Reporting Standards for Small Entities)の適用について公表されました。フィリピンでは、IFRS(国際財務報告基準)と同等のPFRS(フィリピン財務報告基準)が会計基準として採用されており、フィリピンに拠点を構える企業は、原則としてPFRSの適用が求められています。SEC通達(SEC Memorandum Circular No.5-2018)では新たに小規模企業の要件が定義され、これに該当する企業は今後、認識測定の方法や開示内容の簡素化された小規模企業向け財務報告基準(PFRS for SE)の適用が必要となります。

 

フィリピン財務報告基準(PFRS)

フィリピンでは、2005年よりPFRSが適用されており、当初はIFRSとの差異もみられたものの、2018年現在、PFRSとIFRSは同じ会計基準と捉えて差し支えないものになっています。また、2010年には、PFRSの内容を一部簡素化した会計基準であるPFRS for SMEs(中小企業向

けフィリピン財務報告基準)をSECが採用し、中小企業の要件(総資産300万ペソ以上3億5000万ペソ以下もしくは総負債300万ペソ以上2億5000万ペソ以下)を満たす場合、原則としてPFRS for SMEsの適用が義務付けられることになりました。一方で、PFRS for SMEs

はPFRSと比較して簡素化された内容になってはいるものの、小規模事業者にとっては依然として非常に複雑であり、その適用が実務的に大きな負担になっているとの声が上がっていました。

 

小規模企業向けフィリピン財務報告基準(PFRS for SE)の概要

今回、SECから公表されたMemorandum Circular No.5‐2018では、新たに小規模企業を定義付け、以下条件の全てを満たす企業を小規模企業とし、これに該当する場合は原則として小規模企業向け財務報告基準(PFRS for SE)の適用を求めています。

 

1) 総資産300万ペソ以上1億ペソ未満、もしくは総負債300万ペソ以上1億ペソ未満(会社が親会社である場合、連結ベースでの計算とする)

2) 証券規制法第68条(SRC Rule 68)に基づき、財務諸表を提出する必要のない企業

3)公開市場において、金融商品(種類は問わない)を発行する目的で財務諸表を提出する過程にない企業

4)政府機関によって発行されたセカンダリーライセンスの保有者でない企業

 

ただし、他国で事業もしくは投資を行っている企業や、親会社がPFRSもしくはPFRS for SMEsの適用対象となっている企業等は、PFRS for SEの適用対象にはならず、引き続きPFRSもしくはPFRS for SMEsの適用対象になるとの規定があるため、小規模企業はSEC通達に基づき、自社がPFRS for SEの対象になるかどうかの確認が必要と考えられます。

 

SECは2018年4月4日付けのプレスリリースで、小規模企業向け財務報告基準について、「会計方針の選択肢を減らし、小規模企業に通常関連しないトピックを除外し、更に認識及び測定の方法を簡素化し開示内容を削減することで、小規模企業に過度な負担をかけずに財務報告基準を順守することが可能になる」と言及しています。

 

なお、PFRS for SEの簡素化の例として、以下が挙げられます。

•ファイナンスリースの概念はなく、すべてのリース受取(支払)は発生時に、収益(費用)として認識する。

•確定給付制度について、企業は共和国法第7641号(法定退職金制度)、または会社方針(共和国法第7641号が定める最低退職金制度を上回る場合)に従って、退職給付債務を算定する必要がある。退職給付債務を算定するにあたり、将来の給与及び勤務年数の変動を考慮せずに、従業員の現在の給与、勤務年数を使用して報告日時点の負債を計算する。

•企業は繰延税金資産(負債)を認識しないという選択肢が与えられている。

•重要な会計上の判断と見積り(Significant accounting judgments and estimates)のディスクロージャーは不要

 

上記のうち、特に従業員の退職給付債務の計算は見積要素を多く含み複雑であるため、小規模企業の場合も外部の年金数理会社に委託しているケースが現在は多いかと思いますが、PFRS for SEの下では、簡便な計算方法が認められることになるため、今後は自社で計算することも可能になると考えられます。

 

PFRS for SEの適用時期

小規模企業向け財務報告基準の適用時期は、2019年1月1日以降開始会計年度からになりますが、早期適用も可能と規定されています。

また、SEC通達では、PFRS for SEを採用している企業の会社規模が大きくなり、仮に期末時点で小規模企業の条件を満たさなくなり、その変化が重大で継続的である(significant and continuing)と判断された場合、翌会計年度から会社規模に応じた会計基準(e.g. PFRS for SMEs)を適用することとされています。

 

なお、今後、フィリピン進出日系企業においては、立ち上げ直後の現地法人や、駐在員事務所などの場合、PFRS for SE適用の要否について検討が必要になってくると考えられます。

 

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Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch

大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

 

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